2009年11月27日
ゲオポリティク5
ゲオポリティクが立ち上がる。
ドイツのゲオポリティクは主に,生存圏(レーベンスラウム 生活領土と以前翻訳したが,この方が一般的のようだ。)のためにナチスの戦略と正当化の中で、その外交政策に貢献した。ゲオポリティクは両世界大戦間の間にドイツの外交政策に5つの考えを提供した。生体組織理論、生存圏、 経済自立国家、パン・リージョン、ランド・パワー/シー・パワーの二項対立。
パン・リージョン:大国の棲み分け。地球を縦割りにして各々支配しようという理論。地球はやがて縦割りに3つか4つの経済的ブロックに分割され、各ブロックを特定の国家が統括・管理するという考え方。
政治科学としての戦略地政学では政治地理学のように,記述的でもあり分析的でもあるが,国家の政策のために、戦略的な規定の中に「社会規範」的な要素を加える。これは早い時期のアメリカやイギリスの戦略地政学から始まっているが,ドイツのゲオポリティク(地政学)は国家の利益に向けての「本質主義」の見解を採用し,課題を過度に単純化し,これ自身を万能薬としてしまった。あたらしい、本質主義のイデオロギーとして、この地政学はそれ自身を大衆のワイマール共和国を苦しめる立場の中に見出すこととなった。
社会規範:たとえば「自分は1日に30分ジョギングをすべきである」というルールと違って、個々人にとって外在的であり かつ社会性を有している。たとえば売買や投票といった行為、あるいは挨拶といった行為すらも、それらの行為がそのようなものとして成立するためには、まず それらの行為が社会的に意味づけされ、制度化されていることが必要である。そして、さらに何よりも当事者たちがそれぞれ売買や投票、挨拶を行っているのだ という意識でなされなければ全く意味がない。このような意味で、社会規範は個人を超越して社会性を有するのであり、しかも個人に内面化されることが不可欠なものなのである。
このように規範によって社会はその秩序と同一性を維持するのであるが、社会の構成員すべてが規範を内面化し、いかなる状況においても規範に同調した行動をとるわけではない。そこで、社会の構成員の行動を一定の基本的な諸価値に向かって統制(コントロール)す る必要が生じる。統制のための手段としては、習慣や道徳、民事的手段から行政的手段などさまざまな段階が考えられるが、中でも最も強烈でかつ直接的なもの が、刑法による行動の統制である。刑法は、その違反に対して死刑や懲役刑などの最も厳しい社会的制裁を予定しているからである。http://sonoda.e-jurist.net/text/kihan.html
本質主義(essentialism):本質(事物の変化しない核心部分)を自立的な実体、客体的な実在物であるとみなした上で、個別の事物は必ずその本質を有し、それによってその内実を規定されている、という考えをいう。実は本質主義は奥が深いので,以下を参照。ja.wikipedia.org/wiki/本質主義
1919年にカール・ハウスホーファー Karl Haushofer 将軍はミュンヘン大学の地理学の教授になった。このことが彼の政治地政学の考えや,雑誌論文,書籍の広がりの基盤となった。

Karl_Haushofer
1924年にドイツの地政学ので考えを同じくする人々のリーダーとして,Haushoferは政治地政学に専念した月刊誌「地政学誌」を発行した。彼の考えは1926年にHans Grimmによって、「領土なき民族(Volk ohne Raum)」の発行とともに広く大衆に普及し、生存圏の彼の概念は広まることとなった。Haushoferは影響を及ぼすにあたって,学校での授業を通して,すなわち,学生に大陸の観点からものを考えるよう促し,国際政治の中の動きを強調し,もう一方で,政治活動を通して行動した。Hitlerの演説は大衆を魅了する一方で,Haushoferの仕事はとどまっている知識人を組織の集団の中に持ち込もうとした。
この地政学は本質的には古い考え、すなわち、既知の科学的な虚飾の統合であり,その成文化であった:
ー生存圏は改訂された植民地による帝国主義であり,
ー経済自立国家は関税保護主義の新しい表現であり,
ー主要な領土の戦略的な支配はスエズやパナマ運河の早期の設計の背後にあったのと同じ考えであり、そして、
ーパン・リージョンはイギリス帝国に基づいていて,アメリカモンロー主義, 全米州連盟ならびに、半球防衛がある。
モンロー主義(Monroe Doctrine):アメリカ合衆国がヨーロッパ諸国に対して、アメリカ大陸とヨーロッパ大陸間の相互不干渉を提唱したことを指す。第5代アメリカ合衆国大統領ジェームズ・モンローが、1823年に議会への7番目の年次教書演説で発表した。
全米州連盟 Pan-American Union 米州機構 Organization of American States:米州地域の平和と安全の保障や相互理解の促進などをうたった地域協力機構。1948年、コロンビアで調印されたボゴタ憲章に基づく。加盟国は米国、カナダと中南米の計35カ国。日本、ドイツなどがオブザーバーとなっている。当初は米国主導の反共同盟の色が濃く、米国による中南米支配の道具ともいわれた。民族主義の高揚と共に、中南米諸国が結束して米国に当たる場となり、米国の思惑に反する路線を打ち出している。2002年4月には米国の意に反し、ベネズエラ政変でチャベス政権の正統性を認めた。05年5月には事務総長にチリ前内相のインスルサが就任した。米国が当初支持しなかった候補が選ばれたのは同機構の歴史で初めて。年次総会のほか、加盟国による米州特別首脳会議が定例化している。
半球防衛:ニコラス・スパイクマンのリムランドの考え方。リムランド (Rimland) は地政学の用語のひとつで、ニコラス・スパイクマンによる造語であり、北西ヨーロッパから中東、東南アジアに至るユーラシアの沿岸地帯を指す。ja.wikipedia.org/wiki/ニコラス・スパイクマン
スパイクマンは陸軍大国(ランドパワー)と海軍大国(シーパワー)の間に起きる紛争がすべてこの地帯で発生していることから、リムランドこそ最も重要な地政学的地域であると主張した。スパイクマンはアメリカがリムランドに対して、その力を投影させ、ソヴィエト連邦を中心とする他の勢力の浸透を阻止させ、グローバルな勢力均衡を図るよう提言した。また、スパイクマンは「リムランドを制するものはユーラシアを制する。ユーラシアを制するものは世界の命運を制する」と述べている。ja.wikipedia.org/wiki/リムランド
スピックマン(1893〜1943)は、アムステルダムに生まれ、ジャーナリストとしてアジアやオーストラリアを訪れたが、後にカリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得し、同大学の「政治学」・「社会学」の 講師を経て、1925年にエール大学に移り国際関係学科の主任教授を歴任した。『世界政治におけるアメリカの戦略』(1942)・『平和の地理 学』(1944)などを著したが、その戦略観はマッキンダーの “東欧は一つの国による支配を許さない”という見方に賛成はしたものの、ユーラシア=アフリカの世界島による世界支配の考えには、半球をもって東半球を包 囲するという見解を示した。http://www.tabiken.com/history/doc/L/L268L100.HTM
内容そのものが難しいが,新しい言葉と人が出てくる。これらはこれからも出てくるが,地政学の基本であり,この参照の項を熟読するか,地政学の入門の本,倉前教授の本などを読めばよくわかる。曽村教授の「地政学入門」でも良い。こうした地政学は知っておいて損はない。私注。
各二項、すなわち、陸軍大国(ランドパワー)と海軍大国(シーパワー)に於ける主要な新しい方向付けは焦点が海軍の帝国主義よりもランドをベースとした帝国であると言うことだ。
表向きはアメリカの海軍将校 Alfred Thayer Mahanの政治地政学理論 ならびに、イギリスの地理学者 Halford J. Mackinderに基づいているが,ドイツの地政学は古いドイツの考えを付け加えている。
アルフレッド・セイヤー・マハン(Alfred Thayer Mahan, 1840年9月27日 - 1914年12月1日):アメリカ海軍の軍人。最終階級は少将。
マハンは海洋戦略の古典的理論家であり、その著書は世界各国語で翻訳されている。彼の著作はヴィルヘルム2世や秋山真之も愛読した。大艦巨砲主義を助長したとして批判の矢面に立たされる事もある。彼に因んでいくつかの艦船がマハン(en:USS Mahan)と命名された。19世紀フランスの兵学者ジョミニの影響を強く受けている。ja.wikipedia.org/wiki/アルフレッド・セイヤー・マハン
サー・ハルフォード・ジョン・マッキンダー(Sir Halford John Mackinder, 1861年2月15日 - 1947年3月6日):イギリスの地理学者、政治家である。ハートランド理論を提唱し、この概念は地政学の基礎的な理論付けとなった。事実上の現代地政学の開祖ともいえる。ja.wikipedia.org/wiki/ハルフォード・マッキンダー
今日はこれで終わり。地政学には上記に示したような数人の専門家と,既に出て来ているが,幾つもの専門用語が出てくる。これはこの地政学だけの言葉であるが,覚えてほしい。最大の基本は2009年1月29日の「地政学上での周辺国」の中の10ヶ条で,これは是非、携帯して,覚えてほしい。