2009年11月28日
ゲオポリティク6
ここの文章は専門の学者が書いていないと言うことだが,レベルは低くないので,随所に解説の引用をしている。このブログでは地政学のある程度の知識があって,繰り返し読めばわかるようになっている。急いで読んでもこの地政学は決して理解できないので,あきらめないでほしい。2009年1月29日の「地政学上での周辺国」には絶えず戻ってほしい。できれば、「地政学入門」だけでも読んでほしい。なぜ地政学を選んだのかと言えば,地球温暖化同様,日本人に取って最も欠けている部分だからだ。ドイツの地政学を選んだのは最も難解だからだ。さて始めよう。
フリードリヒ・ラッツェルと彼のスウェーデンの学生ルドルフ・チェレンによって、最も力強く公表されたのが、国家有機体論もしくは擬人化概念と社会の全体組織を通じた自給自足の必要性であった。
フリードリヒ・ラッツェル(Friedrich Ratzel, 1844-1904):ドイツの地理学者・生物学者。当時旺盛していた社会的ダーウィニズムの影響の強い思想を特徴とする。政治地理学の祖・環境決定論の祖でもある。彼は1897年に出版した『政治地理学(Politische Geographie)』において次のように論じた。
ー国家の政治上の力は、その国家の領域の広さに依存する。領域に関する概念が低下すると、その政治体は衰滅する。
ー国境は同化作用の境界線である。国境は国家の膨張力に応じて変動すべきものである。その膨張力が、これを阻止する境界線に出合うと、それを打破しようとして、ここに戦争が起こる。
ー国家は、生命を持つ組織体である。生物の成長のためには暴力を用いても阻害要因を排除しなければならない場合がある。
ー国家は生物組織体であり国境は流動性を持つ。すなわち国家は成長する生き物であり、必要なエネルギーを与え続けなければ衰弱し、やがて死滅するに至る。そこで国家は生命力に応じ、これを維持するための生存圏 Lebensraum を確保しようとする。
ー地球上には大国を1つだけしか容れる余地がない。
この説は「国家有機体説」とも呼ばれ、チェレン、ハウスホーファーへと引き継がれる。故にこれが大陸地政学(すなわちGeopolitik)の起源となっ たと考えて良いであろう。http://daitouanavi.blog69.fc2.com/blog-entry-5.html
ルドルフ・チェレン (Rudolph Kjellén 1864-1922):大陸国家と海洋国家の領土拡張の思考において重要な示唆を与えた政治学者にルドルフ・チェレンがいる。チェレンは国家を有機体のひとつとみなし、国家有機体論を唱えた。チェレンのいわんとするところは、国家は生存のための闘争をし、誕生、成長、老化のサイクルがあるとしている。
チェ レンは国家の行動を精神と肉体の二つからなるものとし、国家の精神は国民や民族により具現化するとした。また、国家の肉体である領土については、地理的個性化の法則を論じ、国家の理想的な姿を自然の範囲、自然的境界と自然の領土にあるとした。自然的境界として最も理想的なものは海であり、大陸国家もまた大洋を目指してその領土を拡大しようとする理由は主にそこにあるとした。一方で自然的領土については河川ないし河川囲繞と海洋囲繞であるとした。
いずれの場合も人の居住において調和がとれ、域内交通を容易にし、また自給能力を高めることができるとした。その上でチェレンは理想的な国家の姿は自給能力のある有機体でなければならないと述べている。
http://keyword.auone.jp/Result/index.php?act=service_pc_more&sysid=C001&devcd=2&keyword=%8AC%97m%8D%91%89%C6&contents=4
独特のドイツ地政学の根底はカール・リッター(Karl Ritter)の著述に依る。
カール・リッター(Karl Ritter 1779-1859):ドイツの地理学者。教育家。近代科学としての地理学の方法論の確立につとめ、地理学に触れる上で欠かせない人物である。その業績は、同じドイツで博物学者として活躍したアレクサンダー・フォン・フンボルトと並び「近代地理学の父」と称えられている。ja.wikipedia.org/wiki/カール・リッター
彼は初めて、国家有機体論を展開し、後にラッツェルによって仕上げられ、ハウスホーファーによって受容された。彼は他国の存在を犠牲にしてでも、生存圏を正当化し、征服が国家の成長のために有機体組織として必要であった。
フリードリヒ・ラッツェル
Friedrich_Ratzel.jpeg
ラッツェルの著述はドイツの第二次産業革命の時期と一致し、それは普仏戦争の後であり、この戦争の後では引き続き市場を探索する競争がイギリスと起こっていた。彼の著述は帝国の拡張の正当化のために歓迎された。
第二次産業革命(Second Industrial Revolution):産業革命の第二段階を表現するために、歴史家によって用いられる言葉である。通常、年代は1865年から1900年までと定義さ れる。この期間にはイギリス以外にドイツ、フランスあるいはアメリカ合衆国の工業力が上がってきたので、イギリスとの相対的な位置付けでこれらの国の技術 革新を強調する時に、特に用いられる。
この時代には、化学、電気、石油および鉄鋼の分野で技術革新が進んだ。消費財の大量生産という仕組み面の発展もあり、食料や飲料、衣類などの製造の機械化、輸送手段の革新、さらに娯楽の面では映画、ラジオおよび蓄音機が開発され、大衆のニーズに反応しただけでなく、雇用の面でも大きく貢献した。しかし、その生産の拡大は長びく不況 (1873–1896)といわゆる新帝国主義に繋がる要素も持っていた。
普仏戦争 Franco-Prussian war:1870〜1871 年のフランスとプロイセン王国の戦争。長い対立関係にあった両国は、1868年のイサベル2世の廃位後のスペイン王位継承をめぐって対立し、1870年の エムス電報事件(the Ems Dispatch)をきっかけとして戦争となった。ドイツ諸侯もプロイセンに味方し、セダンの戦い(the Battle of Sedan)でナポレオン3世は兵士とともに捕虜となり、1871年にパリが陥落する。同年パリ・コミューン(the Paris Commune)のさなかの3月にベルサイユでドイツ帝国が成立し、5月にフランクフルト条約(the Treaty of Frankfurt)が結ばれた。アルザス・ロレーヌ地方がドイツに割譲され、また賠償金がドイツに支払われた。フランスは帝政が崩壊して共和制に移行 し、イタリアのローマ教皇領は、1870年にナポレオン3世軍が退却したことにより、イタリア王国軍によって占領された。 http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/ej/Franco-Prussian+War/m0u/Franco-Prussian+war/
マハンに影響され、ラッツェルはドイツ海軍勢力範囲についての大志を書き、シー・パワーが自立するべきだと認め、貿易による利益は海運力に投資するべきで、ランド・パワーではないとした。
アルフレッド・セイヤー・マハン(Alfred Thayer Mahan, 1840 - 1914):海洋国家の理論の先駆者としてしられるのが、アメリカ海軍大学校の校長であったアルフレッド・セイヤー・マハンである。マハンは1890年に 『The Influence of Sea Power Upon History, 1660-1783 (シーパワーが歴史に及ぼした影響)』を著し、日本では『海上権力史論』として刊行され、日本の地政学や軍事戦略にも大きな影響を与えた。
マハンは世界の強国となるための前提条件として制海権を握ることと説き、軍事展開により国力の消費を避ける傾向を持つ、海洋国家の理論の中では攻撃性を持つ 主張である。これはマハンの祖国アメリカが、南北戦争以降の西部開拓時代に海外発展に遅れをとったことが背景にあるとされ、欧州の拡大に対して挽回を図る という観点からそうした志向をとったともいわれている。
マハンは強い海洋国家となるために必要なシーパワーの条件として、
ー国家の地理的位置
ー自然的構成
ー国土の面積
ー国民人口
ー国民の性質
ー政府の性質を挙げた。
とりわけマハンの主張の中で特筆すべきは海洋国家は大陸国家を兼ねることは出来ないというものであるが、この主張には裏づけとなる証明がなされておらず、未だ仮説の域を出ないといわれている。
http://keyword.auone.jp/Result/index.php?act=service_pc_more&sysid=C001&devcd=2&keyword=%8AC%97m%8D%91%89%C6&contents=4
- シーパワー:
- 海洋権力とも訳され、海上交通路や海外の経済拠点(資源地域や交易拠点など)を維持、防衛するための海軍の能力、輸送船の輸送力、陸地の港湾施設の処理能力などを含めた海洋を支配・利用するための総合能力である。これを保有する国は海洋国家と呼ばれ、アメリカ、イギリス、日本などがこれに当たる。
- ランドパワー:
- 陸上のさまざまな権益、経済拠点、交通路などを支配、防衛するための陸軍の能力や陸上輸送力、陸地の加工力(土木技術や農業技術など)などを含めた総合的な陸地を支配・利用する能力である。これはシーパワーの影響が及びにくい内陸地域において構築されると考えられており、ゆえに、これを保有する国家を大陸国家と呼ぶ。ロシア、中国、ドイツなどがこれにあたると考えられている。
- ja.wikipedia.org/wiki/地政学