2009年11月29日
ゲオポリティク7
ハウスホーファーはラッツェルに会う機会があった。彼は経済地理学の教師であった、ハウスホーファーの父の友人であり、ハウスホーファーはラッツェルの考えを統合し、自分の理論の中にシー・パワーとランド・パワーとが分裂していたものを統合し、これらの双方を持った国だけがこの対立に打ち勝つ事ができると言った。ここで、ヒットラーはハウスホーファーの著述と異なり、ドイツをランド・パワーだけの追求にゆだねた。
カール・エルンスト・ハウスホーファー:ドイツの陸軍将校で地理学者であり、シーパワーとランドパワー論に影響を与えた一人である。ハウスホーファーの理論で主張される5つの柱は:
ーラッツェルの「リーベンラウム」(生存圏)と国家拡大理論
ーチェーレンの「アウタルキー」(経済自足論)ーマッキンダーのハートランド論による「ランドパワーとソフトパワーの対立」
ーパン・リージョン(大国の棲み分け。地球を縦割りにして各々支配しようという理論。)
ーソ連とのランドパワーによる世界支配であるとされる。
ハ ウスホーファーのいわんとするところは世界をいくつかのブロックにわけて、アメリカ、ソ 連、日本、ドイツなどがそれぞれの地域で主要な地位を占め、秩序を維持すべきであるというものである。いわば勢力均衡理論に基づいて世界視野での勢力均衡 を確立することを提唱しているものといえよう。また、それらをとりまとめる国がドイツであるとし、ドイツの帝国主義の時代ならではの理論ともいえる。
http://keyword.auone.jp/Result/index.php?act=service_pc_more&sysid=C001&devcd=2&keyword=%8AC%97m%8D%91%89%C6&contents=4
ラッツェルの主要な貢献は国境地帯の静的な概念ではなく、地理学の有機体組織概念の展開であった。国家はむしろ有機体組織であり、成長する。国境は彼らの運動の中では一時的にそこにとどまっているだけである。国家は文字通りの有機体組織であるだけでなく、そこで生計をする人たちの精神的な絆を持った土地でもある。国家の国境の拡張は国家の健康を反映したものである。ハウスホーファーは彼の著述の中で、国境はきわめてとるに足らないと言う見地を持っていて、特に国家はそれを取り巻く諸国との闘争の中に絶えずいなければならないと言っている。
ラッツェルの考えである「空間」Raumはかれの国家有機体論からでて来たものである。この早期の生存圏は政治的でも経済的でもなく、精神的、人種の民族主義の拡張であった。「空間動機」 Raum-motivは歴史的に原動力であり、自然に拡大するナチスドイツの他の民族に優越する偉大なドイツ文化 Kulturとともに人々を押し進めて行くのである。
空間(ラウム):ドイツの地理学者ラッツェル(1844−1904)は「政治地理学」の祖といわれているが、その所論は国家有機体説で あった。つまり、ダーウィン理論を導入して民族の力は空間(ラウム)との関係の上に依存していることを強調した。つまり空間は、自然地理的概念以上のもの で、“成長と拡大”を遂げるための空間であり、政治的パワーだと見た。この考えは地理的環境決定論によるものだが、民族や国民に対して生活空間の確立は理 念的条件として、また強い空想観を与えるものと評価された。ラッツェルの所論はスウェーデンのチェレンが導入した。
当時のスウェーデンは、帝政ロシアの不凍港を求めての領土拡張とヨーロッパの国際関係におけるスカンジナビア半島の政治的不安定さのなかにあった。彼は、スウェーデンの将来を空間的意識の発展のもとで、多分ドイツと結びつくであろうと論じたが、その論拠をラッツェルの国家有機体説に求めた。つまり、生命のある国家は植民地の確保・領土の併合・同盟などによって空間の拡大をしなければならないとし、国家が世界勢力に対応する要求として、
ー国家は広大であるべきで、
ー国家は勢力を保つために内部結合をすべきで、
ー大国は移動の自由をもたなければならないと考えた。
この考えは理論的なものでなく、むしろ極めて実際的なものとして、とくにドイツに受け入れられることとなった。第一次世界大戦がおこったとき、チェレンは戦争を主張せず、ドイツの勢力拡大を恐れてスウェーデン−ドイツ同盟より、スカンジナビアブロックの形成を主張したほどであった。http://www.tabiken.com/history/doc/L/L268L100.HTM
ラッ ツェルの空間は曖昧な概念で,理論的にはヒットラーのように拘束されるものではなかった。空間(Raum)はドイツ人が住んでいるところ、その他の劣等国 で,ドイツ人を経済的に支援できるところ,そしてドイツ文化が他の文化を豊かにできるところにその範囲を限定した。ハウスホーファーはこの空間の概念をド イツ地政学の中央のプログラムとして採用し,一方、ヒットラーの政策は拡大に向けての精神的かつ文化的な推進力としてこれを反映させた。
ルドルフ・チェレン Rudolph Kjellén
ルドルフ・チェレンはラッツェルのスウェーデン人の学生で,国家有機体論をさらに詳細に仕上げ,「地政学」と言う言葉を最初に作った。チェレンの「生活の形態としての国家」State as a Form of Life はドイツの地政学を形作る上での5つの主要な概念を略述した。
ー「帝国」Reichは「空間」Raum、「生存圏」Lebensraum そして戦略的な軍事形態を構成する領土の概念である。
ー「民衆」Volk は国家の人種的な概念である。
ー「家政」Haushalt は土地に基盤を於いた自給自足に取って必要なものであり、国際市場の変わり易さを受けて,考えだされた。
ー「利益社会」Gesellschaft は国家組織の社会的な側面と文化的な魅力であり,チェレンはラッツェルのお互いに関連を持った擬人化された国家の考え方を超えたものであった。
ゲゼルシャフト Gesellschaft: ドイツの社会学者、テンニエスが設定した社会類型の一。人間がある特定の目的や利害を達成するため作為的に形成した集団。都市や国家、会社や組合など。利 益社会。協会。テンニエスは、人間社会が近代化すると共に、地縁や血縁、友情で深く結びついた伝統的社会形態であるゲマインシャフトからゲゼルシャフト (Gesellschaft)へと変遷していくと考えた。ゲゼルシャフト(Gesellschaft)は、ドイツ語で「社会」を意味する語であり、テンニ エスが提唱したゲマインシャフトの対概念で、近代国家や会社、大都市のように利害関係に基づいて人為的に作られた社会(利益社会)を指し、近代社会の特徴であるとする。ゲマインシャフトとは対照的に、ゲゼルシャフトでは人間関係は疎遠になる。ja.wikipedia.org/wiki/ゲゼルシャフト
ー「政治」Regierung は政府の形態であり,その官僚制度と軍隊は人々の平穏と協調に貢献する。
チェレンは単なる法律万能主義的な国家の特徴づけに反論し,国家と社会は対極ではないと言い,むしろ2つの要素の統合であると言った。国家は法と秩序に対して責任を持っているが、また、社会の繁栄と発展、経済の繁栄と発展に対しても同様である。
チェ レンにとって,自足自給は政治問題の解決であり,文字通りの,経済政策ではない。輸入品への依存は国家が決して独立していないことを意味する。 領土は国内での生産を提供する。ドイツに取って,中央並びに南東ヨーロッパが要であり,これらは近東 (通例トルコからアラビア半島に至る地域)並びにアフリカに接している。ハウスホーファーは経済政策には関心を持たなかったが,自給自足には支持し,絶え ず国家は闘争の渦中にあるが,それは自給自足のためである。
今日は以上だ。これから会議なのでこれで終わる。相当難しいが,ここのところは熟読するしかない。明日はいよいよハウスホーファーのあとは、ナチとヒットラーが出てくる。