2010年01月28日

展開中の新しい同盟関係

もう一つTobias Harris氏の論文を翻訳しよう。今年は日米安全保障条約が50周年になる。いわゆる「安保闘争」は私にも記憶がある。その当時から時代は変わった。1959年と1960年には、大躍進政策の失敗と天災が重なり、大規模な飢饉が中国を襲い、少なくとも2000万人(『岩波現代中国事典』によれば3000万人。)が餓死した。 1960年代初頭には人民公社の縮小がおこなわれ、毛沢東自身が自己批判をおこなった。そうした時代であった。

鄧小平がでて来て,アメリカとの国交が回復するのは1979年で,まだまだ先の話だった。そうなると,日米安保は重要な仮想敵国として中国をとらえ,そのため体制が必要であった。現在はそうした脅威が全くない訳ではないが,内容は全く変わってしまった。

中国および台湾は、尖閣諸島を実効支配していないものの、1895年の下関条約(馬関条約)は侵略戦争によって強引に結ばれたものであるなどとして領有権を主張し、台湾省宜蘭県に属するとの立場をとっている。日本に軍隊がないので,外交政策で,こうした領土問題では抗議だけで、威嚇行動が出来ない。

しかしながら、こうしたことは日米同盟関係での仕事ではない。アメリカの軍隊が日本の領土を守ると言うことはしない。テポドンが日本に飛来して来ても,アメリカは日本の領土を守ることはしない。となると,日本がアメリカとの軍事同盟に期待することは一体なんであろうか。それを探ってみよう。


展開中の新しい同盟関係

外務大臣の岡田克也は国務長官のHillary Clintonとの会議のために火曜日の朝ハワイに着いた。苛烈な数週間の二国間協議に続いて、2人は50年前のこの月に署名した日米の相互安全保障条約の50周年記念の機会に2国間の連携を深めようと話し合いを行う。

アメリカは不満がないと言うわけではないが、しばらくは普天間を横においておくらしい。一方で、防衛省のチームが辺野古湾に代替施設を建設するために可能な代替案を検討している。岡田との会合の前に、ClintonはJoseph Nyeによるニューヨークタイムズの論説に賛同して、(New York Times 仔細はここ 日本語の翻訳はあとで行う。)同盟関係は普天間よりも重要だといった。そして、彼女と岡田は論争している基地問題を細かに議論するよりかは提携を改善した方が良いと言う議論をするだろう。

オバマ政権は崖の縁から退いても良い頃だ。(多分彼が言っているのは普天間の問題がこじれていることについて、もう少し距離を置いたらどうかと言ってい る。私注)彼の政権をもっと良く知るべきだ。言うべき事が一つあり、それはアメリカ政府が鳩山政権の政治的な束縛された制約を理解すると言う事だ。この認 識に基づいて行動し、冷静にしなければならないもう一つのことがあり、多分それは長くアメリカの顧客であった自民党ではない他の党の最初の日本政府に、ア メリカの政府が重くのしかかっている不適当な物があり,それは政権を取った数週間以内に選挙での公約を放棄すると言うことだ。

辛抱強くするべきだと言うNyeの助言は時宜を得ているし,適切だ。もし鳩山政権に対して,高圧的なアプローチをとれば普天間での勝利は「ピュロス王の勝利」となってしまうと言うが彼の忠告だ。また、中国に関しての2国間の関係に関しての彼のヒントも適切で,Nyeがペンタゴンで,1995年の同盟関係をレビューする陣頭にいた時であった。Nyeが書いたのは「統合するが,防衛策をとれ。」だった。

「Pyrrhic victory」「ピュロス王の勝利」は採算の取れない(犠牲の多すぎる)勝利を意味する。

しかしながら、問題は2010年は1995年の時とは違う。日本の指導者と日本の大衆は中国の隆盛に心配しているが、日本の経済は日本とアメリカが安全保障関係で再確認した1996年のとき以上に中国に遥かに依存している。どちらかと言えば,1996年には中国に脅かされるほど中国が上昇していく意図がよりはっ きりしていて,中国は台湾を威嚇していたが,今日以上に,日本は中国とともに,やって行こうと言う気持ちがあったし,その経済は先進国の経済が世界の金融危機から回復しようと、もがいていた時でさえ成長し,その国防軍の近代化を継続していた。

今日,中国は世界の会議に欠くことの出来ない参加者であり,しかしまた、多分,東アジアで,待機している覇権国でもある。同時に,安全保障関係としての日米同盟の今日の価値は1995年ほどはないかもしれない。Stephen CohenとBrad DeLongが「不滅の大国アメリカ」と呼んだように,アメリカの戦争抑止力について,日本の役人が怪しんでいることだけは賢明と言える。

「不滅の大国アメリカ」 :The End of Influence 資金、英語、文化。20世紀において、アメリカはイギリスの衰退とともに頂点に立った。今も、イギリスのような衰退の時期に入っ てはいない、と考えている。しかし、アメリカは自律した中心、資金や文化を世界に供給する役割を、次第に失っている。ネオリベラリズムの終わりとは、中国 など、主要国間の結び付きを不可欠の条件と意識する時代の始まりだ。

彼等がこのタイトルで,新刊書を書いたように,「金が力関係を変えるように,アメリカ合衆国は単純には従属する国家にはならない。しかし、もはや独立してもいない。これは大きな変化だ。そして、中国も超大国の覇権国家の顔をして,もはや、無力ではないし,恐れてはいない。中国は覇権をとらえてきた。実際 に,世界が除き見ているのは,この2国が親密に経済を相互に受け入れてきたことを理解しているが,少なくとも、極めて複雑な感情でもある。」

この同盟関係は決して,価値がないと言うことではない。しかし、条件は明らかに変わって来ている。中国の隆盛によって暴力的に向きを変えて来た際の防衛手段として、日本はもはや完全にこの同盟関係に依存するだけの余裕がない。アメリカのコミットメントは甲鉄艦ほどではないかもしれないからだ。より政治的に言えば,日本は中国とだけでなく,良い関係を望む多くの理由がある。この中国とはアメリカの現在の国務長官が世界で最も重要だとして、アメリカがこの2国間の関係を展開するのを日本は見て来ているが,しかしながら、中国がその隆盛によって,利益をとってしまうことを用心した目で見ているこの地域の中の他の国 々とも日本は関係を望んでいる。

今日はここまでだが,日本はこのように、東アジア共同体を提言して来ている。その背景にはこうした日米同盟関係の推移がある。インドはまだでて来ないが,中国は既に覇権国になったと言って良いだろう。アメリカも中国を叩きながら,手を組んで行く。日本も同様だ。そう言う中国を睨みながら,構えているアジアの諸国とも日本は政治的にも経済的にも深く関わって行く。

この構図はアメリカも同様だ。そうなるとこの東アジアはどのような軍の勢力図が描けるのであろうか。地政学上,中国、韓国、ロシアとは領土問題がある。それによる軍の衝突は考えられる。北朝鮮は直接軍部との衝突が,考えられる。台湾に於ける中国とアメリカの有事もある。この際に日本がどういう態度を取るのかは日米同盟があったにしても,今までの日本の政治行動の延長では日本は動けない。

明日もこの論文の続きだ。世の中は鳩山政権と小沢幹事長を非難する声が大きいが,こうした議論こと今必要でないだろうか。だから、しばらくはこの外交政策は止められない。



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海野 恵一
1948年1月14日生

学歴:東京大学経済学部卒業

スウィングバイ株式会社
代表取締役社長

アクセンチュア株式会社代表取締役(2001-2002)
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海野塾のイベントはFacebookのTeamSwingbyを参照ください。 またスウィングバイは以下のところに引っ越しました。 スウィングバイ株式会社 〒108-0023 東京都港区芝浦4丁目2−22東京ベイビュウ803号 Tel: 080-9558-4352 Fax: 03-3452-6690 E-mail: clyde.unno@swingby.jp Facebook: https://www.facebook.com/clyde.unno 海野塾: https://www.facebook.com TeamSwingby
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