2010年01月30日

一つの問題以上の大きな同盟関係

今日の論文の著者はJoseph S. Nye Jr.で、かれはハーバードの政治学の教授で,リベラル派の国際学者で、“The Powers to Lead” 「不滅の大国アメリカ」の著者でもあり,1994-1995年の間,国防次官補であった。民主党のカーターやクリントン政権で外交や軍事政策に関わった。彼の詳細は http://minnie111.blog40.fc2.com/?no=1358


「一つの問題以上の大きな同盟関係」
An Alliance Larger Than One Issue  By JOSEPH S. NYE Jr.  January 6, 2010
http://www.nytimes.com/2010/01/07/opinion/07nye.html?partner=rss&emc=rss


東京から見ていると、日本とアメリカの関係は危機に直面している。目下の問題は沖縄のアメリカの軍事基地の移転計画を巡って暗礁に乗り上げた事である。単純なように見えるが、これは長い過去を引きずった問題で、我々の最も重要な同盟国の一つと深刻な亀裂を生じさせうる。

私が10年前にペンタゴン(
国防総省)にいた時、我々は沖縄に存在している基地の負担を軽減する計画を始め、沖縄には日本にいる47,000人のアメリカ軍の半数以上が駐留してい る。海兵隊飛行場普天間は特に問題であった。と言うのは 人口の密集した宜野湾市に近接しているからである。何年にもわたる交渉のあとで,日本とアメリカの政府は2006年に合意し,人口の少ないところに基地を移動し,8,0000名の海兵隊を沖縄からグアムに2014年までに移動する。

この計画は昨年の夏に民主党が勝って,危険にさらされることになった。鳩山首相は経験がなく,連合政権であり,まだ、選挙の公約にとらわれていて,沖縄の外もしくは完全に日本の外に基地を移動すると言うことである。ペンタゴンはまさしく、心外に思っていて,鳩山が10年以上も作業にかけた協定を過去にさかのぼって考えようとしているが,この協定は海兵隊の予算と軍の再配置に密接な関係を持っている。

国防長官Robert Gatesは10月に訪日した時に不満を表明し,計画の如何なる再評価も非生産的だと言った。11月にオバマ大統領が東京を訪問した時に普天間の問題を検討するためにハイレベルのワーキング・グループを作ることに合意した。しかし、その後,鳩山は少なくとも5月まで再配置の最終決定を延ばすと決めた。

驚くに値しないことだが,ワシントンでは日本の新政権に厳しい対応を迫ろうとする意見もある。しかし、それは賢くない。鳩山は板挟みになっている。アメリカが一方から押し,小さな左翼の党が他方から押すことになる。(この党によって,参議院は過半数を維持している。)彼がアメリカに重大な譲歩をしてしまう と,連立が壊れてしまう恐れがある。より複雑な問題は普天間の将来が沖縄県民の奥深い議論を引き起こしていると言うことである。

鳩山が最終的にこの基地計画に負けたとしても、我々は日本に対して,我慢強く,戦略的なアプローチが必要である。我々は日本が東アジアに対して長期的な戦略を脅かしている2次的な問題(普天間)に関わっている。普天間は特筆する価値はあるが,新政府が抱えている唯一の問題ではない。より平等な同盟関係を求めて来ていたり,中国とのよりよい関係とか、東アジア共同体の構築とかと言うこともある。こうしたことがまだはっきりしていないものではあるが。

私が1995年のペンタゴンの東アジア戦略報告書の作成を手助けしていた時に,我々はこの地域に3つの主要な大国があり,それはアメリカ,日本、中国であると言う現実からスタートした。そして、日本との同盟関係の維持は中国が新興してくる環境を形作るだろう。我々は中国をWTOに加盟させて,国際システムに統 合させたかった。しかし,我々は将来、強くなった中国が好戦的になるかもしれない危険があるので,防衛策を講じておく必要があった。

一 年半に及ぶ,広範囲な交渉の後に,アメリカと日本は冷戦の遺物を代表するよりかは我々の同盟関係がこの地域の安定と繁栄のための基礎となることに合意した。Bill Clinton大統領と橋本龍太郎総理は1996年東京宣言の中で,そのことに賛同した。「統合だが,防衛策をとれ。」というこの戦略はブッシュ政権を通 じて,アメリカの外交政策の指針となった。

今年は日米安全保障条約の50周年だ。もし基地の議論を苦々しい感情に持っていったり、日本に於けるアメリカ軍の削減になったりしたら,2国は大きな好機を逃してしまう。中国が長期的な挑発的な存在であり,原子力を持った北朝鮮が明らかな脅威をもたらしている地域に於ける安全保障の最善の保障はアメリカ軍の存在であり,日本が彼等にホスト国としての寛大な支援を維持することだ。

時々,日本の役人は静かに(アメリカからの)外圧を受け入れ,彼等自身の官僚の行き詰まりを解決する助けになって来た。しかし、ここではそうではない。もしアメリカが日本の新政府の勢力をそいだり,日本の大衆に憤りをもたらしてしまうと普天間に於ける勝利は犠牲の多すぎる勝利となってしまう。


以上で終わり。このナイの論文を読むと日本の報道はなんだか変だなと思う。確かに変だ。たまたま同じような記事があったので,ここで,参照したい。http://www.kitamaruyuji.com/dailybullshit/2010/01/post_328.html 北丸雄二氏のサイトだ。この論文を親切に解説していた。全く同感だ。日本人でもまともな人がこうしていることで,心強い。さて次だが,ここまで来ると,いよいよ本丸と言う感じだ。そうした論文を翻訳しよう。


アジア太平洋地域に関する研究機関 NBR (The National Bureau of Asian Research) が昨年11月に発行し報告書では「日米同盟が米国の国益に合致しないなら、米国は中国との友好関係構築へと戦略を大転換し、邪魔になる日米同盟は存続をあきらめる」と言う記事が日経BPに掲載されていたので,この次はこれを扱いたい。

タイトルは「日米同盟、かみ合わぬ期待への対応(MANAGING UNMET EXPECTATIONS in the U.S.-Japan Alliance)」。執筆責任者は、ジョージ・W・ブッシュ政権で国防次官補を務めたマイケル・フィネガン氏。  http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100107/212048/

この大論文の全訳なので,結構、日数がかかるが,その価値はあると思う。普天間基地の問題解決は5月までと言う,鳩山さんの言っていることが理解できるように思う。「新聞テレビからしか情報を得られない人々に届かないのが歯がゆいです。」と北丸雄二氏が言っているが,全くその通りで,我々は上っ面ではなく,きちんと考えなければ行けない。鳩山さんをけなしたり,小沢さんを降ろそうとばかりしているが,これからの日本をどうするというように、新聞テレビで,考える人がいないのは寂しい。

http://www.iwakamiyasumi.com/column/politics/item_220.htmlにこの論文の翻訳がでていたので,ここも参照してほしい。知っていれば翻訳しなかったのだが,今日翻訳してから,みつけてしまった。残念でした。このブログの岩上安身氏は「2001年9月11日のNY同時多発テロ直後、アルカイダの本拠地となっているパキスタンとアフガニスタンの国境線上にあるトライバルエリア(パシュトゥン人居住区)に潜入」したと言う強者で,私が昨年末に書いたアフガニスタンの記事を地で調べていたようだ。日本にもまだまだ凄い人がいるようだが,こうしてブログを書いているので,こうしたブログを知るようになった。日本もまだ捨てたものではないようだ。

今日はたまたま偶然,このナイの論文を翻訳してて,こうした人たちの存在を知ることが出来た。今日はこれまで。ところで、明日から翻訳する論文はまだ翻訳がでていないと思うが,もしでているようであったら教えてほしい。



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海野 恵一
1948年1月14日生

学歴:東京大学経済学部卒業

スウィングバイ株式会社
代表取締役社長

アクセンチュア株式会社代表取締役(2001-2002)
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