2010年02月24日

日米同盟かみ合わぬ期待25

ここ数日は黒田さんを始め,いろいろな人にあって,この日本の防衛と外交政策の話をしているが,あと2日間で,この課題は終了してしまう。今日の日経ビジネスのオンラインでも,私と同じ意見が載っていたが,トヨタの問題はトヨタだけでなく,日米同盟のこじれが問題かもしれないと言っていた。鳩山さんの発言に配慮と思慮が足りないといっていた。

さて、フィネガンの結論は出ているが,この結論に至った背景について最後のおさらいをしよう。まずはアメリカのワークショップの意見から見てみよう。まずはアメリカ人だけで2日間議論したと言うことが面白い。その議論の仕方も昨日説明したようなシナリオを参加者に提示し,それに基づいて議論し,将来の落としどころから議論をしたと言うことだ。

柳井レポートの時もそうだったようだが,日本人は政治家も含めて,憲法9条に抵触する話はどうもしたくないようだ。鳩山さんが言う,平等の関係と言うのは本当はそこのところなんだが,みんな避けているようだ。今回も外交問題をアメリカの論文を中心にアメリカ人の視点から見て来たが,日本人の視点とは違うよ うだ。さて始めよう。今までの論文を読んでいる前提で書いているので,文章が極めて抽象的なので、あとで解説することにした。フィネガンの論文自体が難解だと言うこともあるが。



追補C アメリカワークショップ総括

かみ合わぬ期待への対応 アメリカと日本の安全保障の同盟関係
アメリカのワークショップ
日時;2008年11月14-15日
場所:Airlie Conference Center, Warrenton, VA
発表者: Michael Finnegan, principal investigator
        Richard Lawless, senior project advisor
      James Thomas, senior project advisor
参加者:30+ 現役と元上級アメリカ軍将校、外交官、政策策定者、学者

総括:
ア ジア太平洋地域に関する研究機関 NBR (The National Bureau of Asian Research)はWarrenton, Virginiaで2日間のワークショップを開催し、日米安全保障同盟関係のアメリカの考え方を検討した。特にこのワークショップではこの同盟関係の一方もしくは双方のパートナーがもう一方と異なった期待を持っているかも知れないと言う領域の認識とこの同盟関係の将来にとってこのミスマッチの期待の内容について議論した。

このイベントはNBRが範囲の広い先導的な活動「かみ合わぬ期待への対応 アメリカと日本の安全保障の同盟関係」の一部として開催した最初のワークショップである。

このプロジェクトのコアグループは9人の専門家からなるが、このワークショップにアメリカの同盟関係の上級マネージャー、政策策定者、学者、オブザーバーとともに参加した。参加者の中には防衛省、国務省からの同盟関係のマネージャー、アメリアの大学とシンクタンクからの著名な学者がいた。

このワークショップではNBRの代替案の将来シナリオー計画策定方法論を採用し、それによって、参加者は総合的、多角的に、創造的に、前向きに同盟関係に関連した問題の分析を促進することが出来た。将来を予言し、予測する試みよりかはNBRのシナリオに基づいた分析モデルは成果を出す軍隊に関して異なった前 提に基づいた、複数で、同等にありそうな将来を考慮し、一連の不確実性も考慮して、設計されている。この演習の目的は共同の、相互に強化された環境の中で、 検討中の可能性の範囲を再考し、再考案し、広げる機会を提供することである。NBRは一連の4つの将来を参加者に発表し、そのそれぞれは日米の安全保障の同盟関係に対して内容が異なってたものであった。

あとに続いた議論は全く率直で、方法論とかシナリオの中の前提の幾つかに多少の抵抗はあったものの2日間の終わりまでには参加者の多くは同盟関係の中には時期を逃さずに,扱う必要性のある幾つかの挑戦するべきことがあることを認めた。多くの参加者は同盟関係の終結はアメリカ合衆国にも日本にも利益にはならないが、 平和のときに適切に取り扱ったり、解決しておかないとある幾つかの問題は危機の状況において同盟関係の破局が起こりうることを強く信じていた。

このワークショップはワシントンが地域のそしてグローバルの安全保障への貢献と同様に日本の自らの防衛のために提供する領域に於いて、東京に何を期待しているのかを調査することであった。幾つかの期待に関して、特にグローバルな活動に関したものであって、質問があったが、(1)所与の日本の制約は理にかなったものかどうか。そして、(2)国内の政治資本が最低レベルのグローバルな協定ですら実行するために使用されねばならないことを考慮すると、資本はより実行可能にするための日本の自己防衛目標の為に使った方が良いと言う期待が有用かどうかであった。

ワークショップの参加者の全員一致を達成することはなかったが、この領域は日本の政策策定者とともにその真偽をさらに立証する必要があるということとアメ リカ合衆国は日本のためにアメリカの優先度付けを明確にするためにより生産的にその課題を見いだした方が良いと言う幅広いコンセンサスをとることができ た。(ここでアメリカ合衆国自身の優先度を明確にすることを前提にしている。)

また、アメリカサイドは特に抑止の領域に於いて、日本の期待に合うことができないでいて、アメリカの役人の間では十分に理解されていないと言う主張についても幅広いコンセンサスがとれた。

参加者が感じていた主要な懸念はアメリカの拡張抑止のコミットメントに見合う能力がゆっくりと減退して来ていて、それは老化した技術と最近の核実験の欠如の ためであると言うことに日本がますます不安になって来ているということである。本質的には日本の政策策定者がアメリカ合衆国が抑止をコミットしいることを疑わないのであるが、一方で、アメリカ合衆国が危機的な状況に於いて、実際には信頼、かつ、確実な抑止をもって、やり遂げられないかもしれないと言うことである。


以下この原文の注釈をしないと,ここで何を言っているのか判じ物みたいで,読者はきっと理解できないと思うので,私なりに,今までの論文の内容から以下の通り、解釈したので,参考にしてほしい。フィネガンは極めて抽象的に表現するのが好きなようだ。それと文章がやたら長い。

「成果を出す軍隊に関して異なった前提に基づいた、複数で、同等にありそうな将来を考慮し、一連の不確実性も考慮して、」の文は昨日のシナリオのことを言っている。北朝鮮のミサイルとか,台湾海峡での米中の衝突とかであり,その前提はいかようにも於けるし,軍隊がそれぞれどのような成果を出すべきなのかも考えておかなければならないが,少なくとも今までは日本側は考えていない。

米中が撃ち合いになったら,双方とも、お互いを攻撃するより,日本の出方を見るだろう。日本に対して,おおいに、「不確定性」があるし,日米同盟という「前提」すら特定できないというのが彼の意見なのだろう。「複数で,同等にありそうな将来」といっているのはもしかしたら,日本は中国に媚を売るかもしれないと言うことだ。

もちろん、北朝鮮の出方も様々だがそのパターンを検討した上で,「この演習の目的は共同の、相互に強化された環境の中で、検討中の可能性の範囲を再考し、 再考案し、広げる機会」と言っているが,今までの経緯からすれば,日本が防衛に特化すれば,「共同の」軍事行動もし易くなるし,「相互に強化された」と言うことは,物理的な軍備もさることながら,相互のソフトウェアの充実も指している。「可能性の範囲」と言うのも曖昧だが、ここでの意味は今までの経緯からすると,日 米との集団自衛権の実施のことだ。

このワークショップでは「所与の日本の制約」と言っているが,これは集団自衛権のことで、2番目の「政治資本と言うことでは最低レベル」と言う意味は給油活動のことだ。そんなことでも、政治資本を消耗しているので、ましてや、集団安全保障の話は到底出来ないだとろうと言っている。だから、日本は自己防衛に特化した方が良いと言う結論になっている。

一方で,アメリカの拡張抑止はもう出来ないと言っている。アメリカの役人はそれを認めていないようだが,危機的な状況にあってはその実行力に疑問を持っている。彼等は日本の実行可能性を強く意識していて,こうした結論になっているが,今まで議論して来たように、日本人がそうですかと言う訳には行かないだろう。世界が許してくれない。

ここでは自衛隊が英語が話せないと言うことには言及していないが,そこが一番の大きな問題だと私は思う。言葉が話せなければ,アメリカ軍とは何も出来ない。情報交換も出来ない。共同の作戦も出来ない。勿論、軍事行動も出来ない。彼はそこには言及していないが,どうせだめだろうとあきらめてしまっていて,日本が自分のことを自分で守れば良いと思っているのかもしれない。そうなると最悪だ。ただ彼は平時に「同盟関係の中には
時期を逃さずに,扱う必要性のある幾つかの挑戦するべきこと」と言う極めて抽象的な言い方をしているが,きっと私がここで言っていることかもしれない。今日はここまでだが,明日は日本のワークショップで,とうとうこの長い論文は終了する。



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海野 恵一
1948年1月14日生

学歴:東京大学経済学部卒業

スウィングバイ株式会社
代表取締役社長

アクセンチュア株式会社代表取締役(2001-2002)
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海野塾のイベントはFacebookのTeamSwingbyを参照ください。 またスウィングバイは以下のところに引っ越しました。 スウィングバイ株式会社 〒108-0023 東京都港区芝浦4丁目2−22東京ベイビュウ803号 Tel: 080-9558-4352 Fax: 03-3452-6690 E-mail: clyde.unno@swingby.jp Facebook: https://www.facebook.com/clyde.unno 海野塾: https://www.facebook.com TeamSwingby
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