2010年03月23日

中国の競争力の主眼点

昨日は4日間の慌ただしい海南島の旅行から戻って来た。実質2日間だけしか行動出来なかったが、3年間行かなかった間に、三亜は大きく変貌していた。やは り躍進中国だ。どこまで変化して行くのかわからないが、それにしてもすごい。今年に入ってここの不動産は30%急騰している。バブルだが、北京オリンピッ クのときにも同様のことが北京であった。

その後の金融引き締めで、多くの不動産企業が倒産したが、上海万博に於いても同様のことが起きるのだろうか。そうした管理された資本主義でありながら、不況に対するリカバリーは驚くほど早い。今日からこうした中国の成長の背景である、グローバリゼー ションを勉強しよう。

今年から,中国企業に対して,ビジネスを開始しようと考えている。そのために,6月に北京で,講演をする予定だ。今 までは日本人の課題に集中して来たが,これからは中国人の課題も検討する必要がありそうだ。一昨年の10月から昨年の3月まで中国特集で、82項目の中国の課題をこのブログで書いたが,今改めて,整理してみたい。そのたたき台として,IMDの資料から見て行きたい。

英文の資料からこのブログを書き出して,丁度一年になるが,毎日書くと言うことは恐ろしいもので,海南島に於こうが何をしようが時間が経つと言うことを今回はしみじみと感じた。もう桜が咲き始めたようだ。一年はあっという間だ。この中国に関してはコメントを随時入れるので注意して読んでほしい。さあ始めよう。






中国の競争力の主眼点
中国の隆盛の物語とこれからの挑戦

中国の競争力は近年のIMDのランキングにも見られるように、急騰して来ていて、先行する国家を乗り越えて、現在は世界の第一級の経済国家であり、この現在の景気後退を跳ね返そうとしている。1995年に始めて扱ったときにはこの国家はインドネシア、フィリピン、コロンビアと並んでいて、41ヶ国のうち、 34番目であった。

この頃の中国は1995年に国有企業は住宅の無償提供を止めた年だ。この1990年代には5000万人以上の一時帰休者を出した頃だ。社会主義国から資本主義国への変換の時期だ。注

中国は2006年にトップ20位の中に入り、それ以来、55ヶ国の平均からでて、15-20位の間を維持して来た。最近発行された、2009年のランキングでは世界の57の競合する国家の中で、20位となった。それではこの国家の競争のプロフィールを見てみよう。

2006年から15-20位を前後していて,2009年は20位だが、このランキングは経済の成長だけではないので,そうなっている。今年は日本を抜いて,GDPが世界で2位になったが,それでもここ数年は国際競争力が、停滞したままだ。日本は逆にリカバーして来ている。2007年は24位だったのが、17位に上昇して来ている。その原因はビジネスの効率性が原因のようだ。注

中国の方はどうかと言うと2007年は15位であったが,2009年では20位に落ちて来ている。その理由は経済の実績は相変わらず,第2位を維持しているが,政府の効率性もビジネスの効率性も落ちて来ている。インフラは相変わらず低いままだ。注

今日の競争力

IMDが定義している競争力とは国民の全体の繁栄を向上させるために、彼らの能力の総量を国家がどのように管理しているかを測ることである。調査した57ヶ国の中で、今年、中国は我々が競争力の測定に使っている4つの主な要素のうち3つに於いて下落した。:経済の実績、政府の効率性、ビジネスの効率性、インフ ラ。経済の実績(第二位)は驚くべきランキングではあるが、この国のビジネス部門の効率性はたったの37位だ。これは国家のビジネス環境が企業に革新、 利益、責任をもって遂行するよう促進してきたかどうかの程度を測定する。ベンチマークとして国際的な管理方式の標準を使うと、概ね中国企業はこの定義にま だあっていない。



ビジネス環境が出来ていないと言っている。確かに,この国は資本主義国へと変革しだしてからまだ20年そこそこだから,ビジネス環境と言っても我々の歴史とは異なっている。更に中国は昔からの収賄の文化がある。そこに36計の生活の知恵がでてきた。見方を変えれば,このことがグローバリゼーションだとも言える。注

国際的な管理方式の標準は
international governance standardsのことだが、ここには企業の社会的責任を考慮すると,環境問題は後手に回っている。短期的な利益に国全体がまだ走っている状態だ。社会保障制度も同様で,1990年代にあった医療制度はもう無い。所得格差も三農問題にあるように,大きな問題になっている。学生が2800万人になり,この10年で10倍になったが,慢性的にその3分の一は就職ができない。一方で,日本の中学生の平均勉強時間が8.5時間であるのに対して,中国では14時間と驚異的だ。注

革新性について言えば,漸く、労働集約産業から脱却しようとしている過渡期だ。一昨年のリーマンショックに於いて,広州の玩具メーカーが大打撃を受けたが、中国政府はこの産業の回復を望んでいない。大学生の就職難はこうしたスキルアンマッチが原因だ。この国は先進国,発展途上国,後進国が混在し,そのバランスが大きく変化しつつある。注

中国の暴動・抗議運動は1993年時点では年8700件だったが、2005年には8万7000件と10倍に急増、06年には9万件を突破しその後も上昇傾向にあるが、その多くは農民暴動で,貧困層の不満がその大きな原因である。現在の中国では地方経済の発展モデル、または社会全体の発展モデルが一部市民の利益を無視する形で行われており、社会矛盾が激化している。注

以前もブログでも取り上げたが,2008年6月28日の貴州暴動が有名だ。地方政府官僚の息子が中学生少女を暴行殺害したが、その権力を利用して事件がもみ消されたとの風聞が広がり、数万人が参加する騒ぎが発生した。http://www.excite.co.jp/News/china/20080909/Recordchina_20080909015.html 注

国際競争力のランキングが、2007年の15位から2009年の20位に下がって来ているのは,こうした社会的な矛盾が拡大して来たためだろう。そうした意味で,この10年間の中国の驚異的な経済の発展は社会的な資産の減損との引き換えの部分が大きいようだ。環境がそうだ。また、急激な発展による,社会の成長の歪みも大きい。雇用,三農問題。さらに中国独特の収賄文化がある。これには不動産、株価の高騰も絡んでいる。中央政府の管理部分に於いても問題はある。特に情報統制がある。今グーグルで問題になっている部分だ。注

東京との電話回線は安定しているが,YouTubeを始めとした多くの情報がアクセスできない。反日デモは2005年5月からはないが、人権問題はある。台湾の武器輸出に絡んだ米中間政治摩擦によるカントリーリスクがある。そうした視点では安全保障の問題は無くなってはいない。日米同盟はまだ中国を意識している。注



中国はまたスキルギャップに苦しんでいる。有能なマネージャーの不足、そして国際経験の欠如(57ヶ国のうちの最後)が多国籍企業と現地企業にとって大きな事業運営上の問題となっている。しかし、企業はまた、財務とITスキルの不足と、チームを作り指導力を発揮する能力を持った有能なかつ均整のとれたマ ネージャーを見つけることが難しいと言うことに不満を抱いている。

中国は経営の実践で、51位だが、中国のマネージャーがよりリーダーシップの能力を取得し、ソフトウェアのスキルを開発することが本当に必要なことであることを意味する。


急成長が故に、先程述べたスキルアンマッチが国家レベルで生じている。ここでは評価されていないようだが,国際経験が欠如していると言っているが、実は中国のっコミュニケーション技術とネゴシエーション力は世界一流だ。まだ世界にでていないので,そこに脚光が浴びていないだけだ。また、欧米への留学生の推移は凄まじい。中国は2008年で18万人の留学生が出国しているのに対して,日本は2003年の114,000人をピークに下降して来ていて,2007年には105,000人まで低下して来ている。注


http://www2.mdb-net.com/chinainfo2/databank/shouhiseikatsu/007.html

財務とITスキルの不足と有能なマネージャーが足りないと言うのは事実で,経済の成長に追いつかないと言うことだ。この20年で,鉄道,道路、ビル建設などのハードウェアは進歩して来たが,ソフトウェアはこれだけの経済の発展を見て来てはいるが,まだまだのところが多い。本屋には英語の経営書の翻訳があふれているが,それを読んでいる人材がまだ追いついていない。ただ、本屋には学生があふれて,立ち読みしている数は日本の比では無い。注

ソフトウェアと言っても,システムばかりではない。会計慣行も日本のように定着してはいない。企業の脱税行為がまだまだ多く,帳簿が一本化していないところが多い。であるから、未上場の中小の企業はシステム化以前の問題がある。また、会計処理以前の業務処理基準そのものも標準化されていないところが多い。注




競争力の政策に於ける枠組み

ビジネスの能力に加えて、このランキングは国家の政府部門の効率性を反映している。国家の政策は強み弱みを認識するために、最も競争相手となる国家のベストプラクティスと比較される。国家の政策は世界の市場に於いて競争する今日の能力を支援する環境を作り出す助けとなり得るのか?より高い開発の段階に国家 を持って行くためには何が向上されるべきか?ここで、中国は15位で、チリとタイと同じである。

競争の経済は回復力があり、(中国は10位)順応力同様に、健全な政府の行動がある。政策の枠組みはオープンで、適応力がある、透明性があり、予測出来、競争の強力な要素である。このことは特に国家の中に投資を誘致する観点では正しく、その戦略では中国は成功して来ていて、対内直接投資では世界で第5位 だ。しかし、国家の長期的な繁栄は人々がどのように、増大した経済の成功から直接利益を得るのかに依存する。



政府部門の効率性は15位で、日本のそれは40位だ。中国は特に2001年のWTO加盟によって,Free Trade、Free Investmentを政策として実行して来た。政府が経済の発展に大きな役割を果たしてきている。日本とは大分違うようだ。一方で,国民がこの繁栄を享受しているかについては公平感に疑問がありそうだ。所得格差が上海と貴州省で12倍と言うのは開き過ぎだ。注

意外と政府の効率がいいのには驚きだ。今日はここまで。


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海野 恵一
1948年1月14日生

学歴:東京大学経済学部卒業

スウィングバイ株式会社
代表取締役社長

アクセンチュア株式会社代表取締役(2001-2002)
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海野塾のイベントはFacebookのTeamSwingbyを参照ください。 またスウィングバイは以下のところに引っ越しました。 スウィングバイ株式会社 〒108-0023 東京都港区芝浦4丁目2−22東京ベイビュウ803号 Tel: 080-9558-4352 Fax: 03-3452-6690 E-mail: clyde.unno@swingby.jp Facebook: https://www.facebook.com/clyde.unno 海野塾: https://www.facebook.com TeamSwingby
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