2010年05月22日
フェアな貿易と自由貿易11
昨日このブログの件で、大学の方と話をする機会があったが、内容が難しくて、理解するのが大変だと言っていた。その通りで、ここの登場する人たちは著名な学者ばかりで、難解な人が多い。気軽に読める内容でないので、恐縮している。
この週末にはこの「フェアな貿易と自由貿易」のディベートを終わるだろうと思っていたが、終わりそうにない。次も同じディベートを扱おうと思っている。アフガ ニスタンがテーマだ。だから、このテーマは早く終わらせたい。量が以外と多く、なかなか終わらない。
さて、昨日はBhagwati教授のWoods教授に対する反論の続きだ。彼の反論か彼女が言う「自由貿易は害を及ぼす。」と言うことに対する反論から始まっていた。中国、インドの貧困ライ ンを救って来たのはこの自由貿易ではないかと言っている。
ただ彼も、この自由貿易に対して懸念はある。それはフェアかどうかである。そうした懸念に対して彼女の考えから今日は見てみることから始まる。では始めよう。
本質的に彼女は 3つの議論を提起している。第一に、(再び、Oxfamを引用するが、)「貿易システムの規定」は発展途上国に対して、「不正に操作されている。」第二に、この貿易システムの規 定は先進国が作っていて、開発途上国ではない。第三に、貿易による利益の配分は貧困国に対しては歪められている。
In essence, she produces three arguments. First, that (again quoting Oxfam) the "rules of the trading system" are "rigged" against the developing countries. Second, the rules of the trading system are made by the developed and not by the developing countries. Third, the distribution of the gains from trade is skewed against the poor countries.
最初の議論で、手短かに言えば、「第二部並びに特別かつ差別的な処置」(WTOの各協定における途上国向けの配慮条項。義務の減免、経過措置の付与等を定めている。 )がGATTにおいて開発途上国に長い間、 適用されて来た。これは互恵貿易をするための譲歩の手段として要求されて来ていなかった。これはまた、貿易障壁は発展途上国よりも先進国が平均的に高いと 言う良くある主張が製造業に於いてはなぜ正しくないのかと言うことでもある。
この製造業は農業が1955年にウェ−バー条項によって除外 されて以来、1995年までGATTの主要な焦点であった。
ウェーバー条項:GATT体制は自由貿易を原則としているが、特例として本条項に基づき自由化義務を免除している品目がある。
この条項は、GATT加盟国の3分の2以上の多数決により、特定の産品について輸入制限を認めるというもの。実際にこの恩恵を受けてきたのはアメリカだけで、具体的には酪農品、砂糖、ピーナッツ、綿など14品目が対象になっている。その特徴は、アメリカが国内価格を保護するため農業調整法で輸入制限することにした品目は、自動的にウェーバー品目となり、かつ、その期限は半永久的であるという点である。ウルグアイ・ラウンドの農業分野では、日本のコメが問題 にされることが多かったが、アメリカのウェーバーの方が「聖域」としての性格がより強かったといえる。
1992年11 月のアメリカとEC間の「ブレアハウス合意」で、双方が農業分野で歩み寄り、さらに 1993年秋になって日本がコメ問題で譲歩したことから、8年越しのウルグアイ・ラウンドも基本合意し、ウェーバー品目にも課税されることが決定した。
On the first argument, let me briefly say that "Part II and Special & Differential Treatment" have long been applied to the developing countries at the GATT. Little was demanded by way of reciprocal trade concessions. This is also why the frequent allegation that trade barriers are higher on the average in the developed than in the developing countries is incorrect for manufactures, which were the principal focus of GATT until 1995, since agriculture was excluded by the 1955 waiver.
第二の議論として、私が疑いなく同意しているのはIMFとか世界銀行のような幾つかの機関が発展途上国からの声をより必要としていることだろう。 Dominique Strauss-KahnとRobert ZoellickがEUとアメリカ合衆国からそれぞれ推薦されたも同然だと言うことは不面目なことだ。
対照的に、WTOは薔薇のような香りがする。Pascal Lamyは彼の最初の任期を得るために厳しい戦いをしなければならなかった。また、WTOは総意にもとづいて仕事をしている。殆ど財政的な貢献度合いに基づいて投票をしていない。
実際に、それはWoods教授が賞賛しそうな覇権国家との自由貿易協定である。それは発展途上国の均整のとれていない搾取に対する手段である。あらゆる種類の貿易に関連しない要求が覇権国家のロビー活動によってもたらされて来ているが、一対一の交渉で、発展途上国にさらされている。これらの要求が彼等にとって良いことであるかのような既成の価値を疑うような、嘘で。私の2009年の本を参照してほしい。「貿易の システムに於けるシロアリ:特恵協定 がどのように自由貿易の土台を崩すか。」
On the second argument, I certainly agree that several institutions, such as the IMF and the World Bank, need more voice from the developing countries. It is scandalous that Dominique Strauss-Kahn and Robert Zoellick were more or less nominated by the EU and the United States respectively. By contrast, the WTO smells like roses. Pascal Lamy had to fight hard to gain his first term. Also, the WTO works by consensus; there is almost no voting by financial contribution. In fact, it is the free trade agreements with hegemonic powers that Professor Woods seems to celebrate, which are the vehicle for the asymmetric exploitation of the developing countries. All kinds of trade-unrelated demands, driven by lobbies in the hegemonic power, are imposed on the developing countries in one-on-one negotiations, under the cynical pretence that these demands are good for them: see my 2009 book, "Termites in the Trading System: How Preferential Agreements Undermine Free Trade".
第三の議論として、Woods 教授は再び、Oxfamを参照して、貿易から得た利益は殆どすべて先進国と中位の発展途上国から生じて来たものだと主張している。しかし、中位の発展途上国はしばしば他の改革の中で貿易をよりよく開発した政策に変更して来ているので、「貧しい」国に終止符を打って来た。
Woods教授によればOxfamは「活発な動き」を造り出し、もしかすると、他のイギリスの慈善事業並びに吟遊詩人トルバドゥールの中で。彼のエレクトリック・ギターはイギリスの中で、実際上、学者達の声をかき消してしまったようだ。しかし、どこか他の場所で、Oxfamの報告書はそれが馬鹿げた内容だとランク付けされているようだ。
(彼はイギリスの慈善事業の人たちが言っているほど先進国が貿易で利益を独占していないと言うことを言おうとしているのだが、ここで言っているような吟遊詩人の背景は日本人には理解できない。)
For the third argument, Professor Woods turns to Oxfam again, citing its assertion that the gains from trade had accrued almost entirely to the developed and middle-income developing countries. But the middle-income developing countries often ceased to be "poor" countries because of changed policies that exploited trade better, among other reforms. Oxfam created a "stir", according to Professor Woods, maybe among other British charities and the singing troubadours whose electric guitars seem to drown out the voices of scholars effectively in Britain. But elsewhere, the 2002 Oxfam report is seen to be the rank nonsense that it is.
以上がBhgawati教授のWoods教授に対する反論だが、彼の方に歩がありそうだ。以前は私もアフリカの綿花産業が消滅したのはアメリカの助成金で補助を受けた綿花が悪いと思っていたが、今回の議論で、そうでもないと言う理解に変わっていた。
一昨日も示したように、非農産品の譲許税率は先進国は低い。また、確かに、IMFとか世界銀行は欧米人がトップを占めているが、WTOは違う。さらに、先進国が利益を独占していることにも反論している。ところで、こうしたグローバルな組織での日本人は極めて少ないのもの問題だ。今日はこれまで。
明日は主客 Simon J. Evenettの意見を取り上げよう。
この週末にはこの「フェアな貿易と自由貿易」のディベートを終わるだろうと思っていたが、終わりそうにない。次も同じディベートを扱おうと思っている。アフガ ニスタンがテーマだ。だから、このテーマは早く終わらせたい。量が以外と多く、なかなか終わらない。
さて、昨日はBhagwati教授のWoods教授に対する反論の続きだ。彼の反論か彼女が言う「自由貿易は害を及ぼす。」と言うことに対する反論から始まっていた。中国、インドの貧困ライ ンを救って来たのはこの自由貿易ではないかと言っている。
ただ彼も、この自由貿易に対して懸念はある。それはフェアかどうかである。そうした懸念に対して彼女の考えから今日は見てみることから始まる。では始めよう。
本質的に彼女は 3つの議論を提起している。第一に、(再び、Oxfamを引用するが、)「貿易システムの規定」は発展途上国に対して、「不正に操作されている。」第二に、この貿易システムの規 定は先進国が作っていて、開発途上国ではない。第三に、貿易による利益の配分は貧困国に対しては歪められている。
In essence, she produces three arguments. First, that (again quoting Oxfam) the "rules of the trading system" are "rigged" against the developing countries. Second, the rules of the trading system are made by the developed and not by the developing countries. Third, the distribution of the gains from trade is skewed against the poor countries.
最初の議論で、手短かに言えば、「第二部並びに特別かつ差別的な処置」(WTOの各協定における途上国向けの配慮条項。義務の減免、経過措置の付与等を定めている。 )がGATTにおいて開発途上国に長い間、 適用されて来た。これは互恵貿易をするための譲歩の手段として要求されて来ていなかった。これはまた、貿易障壁は発展途上国よりも先進国が平均的に高いと 言う良くある主張が製造業に於いてはなぜ正しくないのかと言うことでもある。
この製造業は農業が1955年にウェ−バー条項によって除外 されて以来、1995年までGATTの主要な焦点であった。
ウェーバー条項:GATT体制は自由貿易を原則としているが、特例として本条項に基づき自由化義務を免除している品目がある。
この条項は、GATT加盟国の3分の2以上の多数決により、特定の産品について輸入制限を認めるというもの。実際にこの恩恵を受けてきたのはアメリカだけで、具体的には酪農品、砂糖、ピーナッツ、綿など14品目が対象になっている。その特徴は、アメリカが国内価格を保護するため農業調整法で輸入制限することにした品目は、自動的にウェーバー品目となり、かつ、その期限は半永久的であるという点である。ウルグアイ・ラウンドの農業分野では、日本のコメが問題 にされることが多かったが、アメリカのウェーバーの方が「聖域」としての性格がより強かったといえる。
1992年11 月のアメリカとEC間の「ブレアハウス合意」で、双方が農業分野で歩み寄り、さらに 1993年秋になって日本がコメ問題で譲歩したことから、8年越しのウルグアイ・ラウンドも基本合意し、ウェーバー品目にも課税されることが決定した。
On the first argument, let me briefly say that "Part II and Special & Differential Treatment" have long been applied to the developing countries at the GATT. Little was demanded by way of reciprocal trade concessions. This is also why the frequent allegation that trade barriers are higher on the average in the developed than in the developing countries is incorrect for manufactures, which were the principal focus of GATT until 1995, since agriculture was excluded by the 1955 waiver.
第二の議論として、私が疑いなく同意しているのはIMFとか世界銀行のような幾つかの機関が発展途上国からの声をより必要としていることだろう。 Dominique Strauss-KahnとRobert ZoellickがEUとアメリカ合衆国からそれぞれ推薦されたも同然だと言うことは不面目なことだ。
対照的に、WTOは薔薇のような香りがする。Pascal Lamyは彼の最初の任期を得るために厳しい戦いをしなければならなかった。また、WTOは総意にもとづいて仕事をしている。殆ど財政的な貢献度合いに基づいて投票をしていない。
実際に、それはWoods教授が賞賛しそうな覇権国家との自由貿易協定である。それは発展途上国の均整のとれていない搾取に対する手段である。あらゆる種類の貿易に関連しない要求が覇権国家のロビー活動によってもたらされて来ているが、一対一の交渉で、発展途上国にさらされている。これらの要求が彼等にとって良いことであるかのような既成の価値を疑うような、嘘で。私の2009年の本を参照してほしい。「貿易の システムに於けるシロアリ:特恵協定 がどのように自由貿易の土台を崩すか。」
On the second argument, I certainly agree that several institutions, such as the IMF and the World Bank, need more voice from the developing countries. It is scandalous that Dominique Strauss-Kahn and Robert Zoellick were more or less nominated by the EU and the United States respectively. By contrast, the WTO smells like roses. Pascal Lamy had to fight hard to gain his first term. Also, the WTO works by consensus; there is almost no voting by financial contribution. In fact, it is the free trade agreements with hegemonic powers that Professor Woods seems to celebrate, which are the vehicle for the asymmetric exploitation of the developing countries. All kinds of trade-unrelated demands, driven by lobbies in the hegemonic power, are imposed on the developing countries in one-on-one negotiations, under the cynical pretence that these demands are good for them: see my 2009 book, "Termites in the Trading System: How Preferential Agreements Undermine Free Trade".
第三の議論として、Woods 教授は再び、Oxfamを参照して、貿易から得た利益は殆どすべて先進国と中位の発展途上国から生じて来たものだと主張している。しかし、中位の発展途上国はしばしば他の改革の中で貿易をよりよく開発した政策に変更して来ているので、「貧しい」国に終止符を打って来た。
Woods教授によればOxfamは「活発な動き」を造り出し、もしかすると、他のイギリスの慈善事業並びに吟遊詩人トルバドゥールの中で。彼のエレクトリック・ギターはイギリスの中で、実際上、学者達の声をかき消してしまったようだ。しかし、どこか他の場所で、Oxfamの報告書はそれが馬鹿げた内容だとランク付けされているようだ。
(彼はイギリスの慈善事業の人たちが言っているほど先進国が貿易で利益を独占していないと言うことを言おうとしているのだが、ここで言っているような吟遊詩人の背景は日本人には理解できない。)
For the third argument, Professor Woods turns to Oxfam again, citing its assertion that the gains from trade had accrued almost entirely to the developed and middle-income developing countries. But the middle-income developing countries often ceased to be "poor" countries because of changed policies that exploited trade better, among other reforms. Oxfam created a "stir", according to Professor Woods, maybe among other British charities and the singing troubadours whose electric guitars seem to drown out the voices of scholars effectively in Britain. But elsewhere, the 2002 Oxfam report is seen to be the rank nonsense that it is.
以上がBhgawati教授のWoods教授に対する反論だが、彼の方に歩がありそうだ。以前は私もアフリカの綿花産業が消滅したのはアメリカの助成金で補助を受けた綿花が悪いと思っていたが、今回の議論で、そうでもないと言う理解に変わっていた。
一昨日も示したように、非農産品の譲許税率は先進国は低い。また、確かに、IMFとか世界銀行は欧米人がトップを占めているが、WTOは違う。さらに、先進国が利益を独占していることにも反論している。ところで、こうしたグローバルな組織での日本人は極めて少ないのもの問題だ。今日はこれまで。
明日は主客 Simon J. Evenettの意見を取り上げよう。
swingby_blog at 07:24