2010年05月24日

フェアな貿易と自由貿易13

週末はインライン・スケートもせず、じーっと家で寝ていたので、風邪の方は大分良くなった。でもこんなにひどい風邪は久しぶりだ。今週は重要なミーティングがいくつかあるので、気が抜けない。

それでは今日は昨日のスイスのSt.Gallen大学のSimon J. Evenett教授に引き続いて、世界銀行の主席経済学者のAaditya Mattoo教授の話を見て行こう。彼は現在サービス産業の於ける国際貿易のプロジェクトを主導していて、WTOの政策分析、活動の専門であり、発展途上国に於ける政策策定と交渉能力の強化を支援している。



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Aaditya Mattoo 

中国やインドをも含めた国際貿易に於ける新しい関係者たちは自由な、そしてフェアな貿易について北ばかりでなく、南に於いても新たな関心事をもたらして来ている。保護貿易主義から貿易を守るためにはこうした関心事は否定されるよりかは取り組む必要があり、理想的には一方向よりかは多角的に。

New actors in international trade, including China and India, are causing fresh concerns about free and fair trade, not just in the North, but also in the South. To protect trade from protectionism, these concerns need to be addressed rather than denied, ideally multilaterally rather than unilaterally.

Jagdish Bhagwati氏が「弱められた巨人症候群」(1993年のCFRの彼の論文)にあるように、1970年代と1980年代に日本との貿易のフェアネスについてアメリカの関心事を丁度見て来たように、中国とインドの出現は「出現して来た巨人達の症候群」を造り出している。

彼らの驚くべき 大きさと比較的少ない収入はヘクシャー・オーリン貿易理論に対する新しい意味を与えて来ている。もしくは労働と資 本の国家の基本財産の中の相対的な相違に基づいた貿易である。

Heckscher-Ohlin Trade Theory ヘクシャー・オーリン貿易理論:(資本豊富国の輸出は、資本集約財を輸出し、労働集約財を輸入する。労働豊富国は、労働集約財を輸出し、資本集約財を輸入する。

1970年にアメリカ合衆国の一人当たりの収入は日本のそれよりかはわずかに高かっただけであった。そしてその労働力は日本よりも2倍あった。2010年には一人当たりのアメリカの収入は中国やインドよりも7-15倍あり、アメリカ の労働力は中国の5分の一、インドの5分の2しかない。

Just as Jagdish Bhagwati saw US concerns about the fairness of trade with Japan in the 1970s and 1980s as coming from the "diminished giant syndrome", China and India's emergence is creating an "emerging giants syndrome". Their sheer size and relatively low incomes are giving new meaning to "Heckscher-Ohlin trade", or trade based on relative differences in national endowments of labour and capital. In 1970, income per head in the United States was only slightly higher than that of Japan and its labour force was twice as large as Japan's. In 2010, the US income per head was 7-15 times larger than China's and India's and its labour force was only one-fifth of China's and two-fifths of India's.

相対的な基本財産のそうした著しい差異とともに、貿易はきっと収 入の配分に影響することになった。実際の賃金がアメリカで停滞し、ヨーロッパで失業率が上昇しているので、経済学者は始めは省力化の技術的な進歩を批判した。たぶん、貿易を保護するために。しかし最近の調査でわかったことだが、それは単に技術ではない。

それはまたオフショア委託だ。:中国に対して低いスキルの製造の、インドに対しては高いスキルのサービスの。前者は低いスキルの労働者に打撃を与え、後者は中産階級に影響を与えている。

With such stark differences in relative endowments, trade was bound to affect the distribution of incomes. As real wages stagnated in the United States and unemployment grew in Europe, economists initially blamed labour-saving technological progress, perhaps to shield trade. But recent research reveals that it is not just technology. It is also offshoring: of low-skilled manufacturing to China and of higher-skilled services to India. The former hits the low-skilled hard, and the latter is affecting the middle class.

貿易の経済学者は保護主義を絶えず恐れていて、国家は貿易から利益を丸ごとすべて、原則として、如何なる敗者に補償することが出来ると主張している。実際には彼等は通常はそうしない。より深い問題がある。

国際的な統合が収入の分配に影響を与えるだけでなく、救済のアクションをとる政府の能力にも限界がある。グローバリゼーションの勝者である資本とスキルを持った労働はますます、国際的に流動的で、それゆえ、税金をかけにくい。

敗者は明白であり、スキルのない労働者であり、彼等は容易に税金から逃れることは出来ないので、2倍過大な敗者である。しかし、持続する失業と増大する債務は根本的に従来からの政治的な経済を保護の方向に変えようと しているのかもしれない。

と言うのは拡散した労働者の税金を支払う市民の不安が、集中はしているが、ますます国際的なビジ ネスの利益に対するロビー活動よりも影響力を持って来ているためである。

Trade economists, ever fearful of protectionism, argue that nations as a whole benefit from trade and can, in principle, compensate any losers. In reality, they usually do not. There is a deeper problem. Not only does international integration affect the distribution of incomes, it also limits the ability of governments to take remedial actions. The winners of globalisation, capital and skilled labour are increasingly mobile internationally and therefore hard to tax. The losers, notably low-skilled labour, are losers twice over because they cannot easily escape taxation. But persistent unemployment and growing debt may be turning the traditional political economy of protection on its head, because the angst of dispersed worker taxpayer citizens is becoming more influential than the lobbying of concentrated, but increasingly international, business interests.

従来型の貿易モデルではなく、中国は安価な労働が、またインドではスキルを持った労働がアウトソーシングと言う形態で、拡大して来てい る。そのため、アメリカの景気の停滞、ヨーロッパの失業がその影響を受けている。そのため、新たな保護主義の機運が生じて来ている。中国とインドでは輸出する労働の中身が違い、中国は安価な労働であり、インドはスキル労働者なので、欧米に与える影響はそれぞれ市場が異なる。

これは新たな、保護貿易のインパクトだとAaditya Mattoo教授は言っている。今日はこれまで。

 

 

 



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海野 恵一
1948年1月14日生

学歴:東京大学経済学部卒業

スウィングバイ株式会社
代表取締役社長

アクセンチュア株式会社代表取締役(2001-2002)
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