2009年01月28日

「国家正当性を巡る台湾」

今日のニュースでメタミドボス入りの餃子の話が出ていたが、「中国製冷凍ギョーザによる中毒事件で、製造元の「天洋食品」(河北省石家荘市)が回収、保管していたギョーザ約15万食が08年4〜6月にかけて複数の地元国有企業に横流しされていたことが分かった。」(毎日新聞 2009年1月24日)

天洋食品を救済するためだと言う事だが、日本人の感覚では理解出来ない.配布した結果、食べた人は食中毒を起こしている.そのことがまた地方レベルで、隠蔽されてしまう.環境問題に対する意識が低いだけでなく、情報自体が統制されてしまうのだ.そこに、地元政府との癒着関係が相当ありそうだ.日本人には到底信じられない事件だ.私の家族の中国人も中国では野菜を食べたくないと言っているが、その通りだ.

さて、台湾の話をしよう.台湾はご存知のように中国が台湾省としてその領有権を主張して来ている.1971年に台湾は国際連合から追放され、未だに、再承認されていない.「現在、22の加盟国とローマ教皇庁が中華民国との外交関係を維持している。」(ウィキペディア)

中国と台湾の話は政治的には紆余曲折して来ているが、台湾独立に関しては家族が台湾人であることもあり、独立したいと言う事自体がよく理解出来ない.この台湾に関してだけは短いニュースはあまりなく、みんな長文の内容だ.書いてある事は複雑ではなく、単純なので、わかりやすい。要約したものをとりあえず、以下引用する。

「中国政府の考えはきわめて明確で、台湾をその母国たる中国に戻すことは、最重要課題と位置付けられています。米中間で1972年、1979年、1982年に3つのコミュニケが調印されましたが、そのいずれにおいても台湾が中国の一部であることを米中両国が認めるとの記述があります。これは対米のみならず、全世界に向けて中国がやっていることです。中国と何らかの関係を持ちたい国は、必ずこの「1つの中国」原則、つまり台湾は中国の領土で、統治するのは中華人民共和国であることを認めなければならないのです。」

「中国政府のもう1つの対台湾政策の特徴は、台湾との経済統合の積極的な推進です。過去数年間、とくに台湾経済の悪化を背景に、多数の台湾企業が中国に進出し、直接投資をすすめ、台湾から中国への人材の流入も活発に行われています。」

「米国政府は、おそらく中国・台湾両方との関係を良好に保つ努力をすると思われます。中国とは3つのコミュニケに基づいた関係を維持し、台湾とはインフォーマルな関係を保つべく、武器輸出を続けることになります。不明確で矛盾した外交政策ですが、この戦略はいまのところうまくいっているし、米国政府は今後もこの戦略を維持すると思います。台湾とは友好関係を保ちつつ、中国との関係改善にもまじめに取り組んでいる、というのが現状のようです。」(経済産業研究所 Ramon H. Myers (Senior Fellow, Hoover Institution) 2002年2月12日)

「現中華民国総統の馬英九は党綱領から「統一」の文字を削除して「台湾」の文字を新しく盛り込み、党規約に「台湾主体」を明記しているが、中国との間で、欧州連合(EU)加盟国同士並みに関税、資金、労働力の自由流通を目指す「両岸共同市場」を提唱した。現在も「両岸対等、共同協議、市場拡大」を掲げ、総統就任後の2008年12月15日には、中国との間で「三通」を実現させた。」(ウィキペディア)

「三通(さんつう)は中国大陸と台湾の「通商」、「通航」、「通郵」を示す言葉で、2008年12月には、直行チャーター便を毎日運航、中国大陸側の就航都市を5都市から21都市に増加、貨物便の就航、経路を香港上空経由から最短ルートに変更することとなった。海運についても台湾が11港、中国大陸側が63港を開放する。郵便、送金についても、香港経由をとりやめることとなった。」(ウィキペディア)

台湾の人口が2300万人で、そのうち労働人口は2007年の統計で約1000万人。150万人から200万人が中国に在住してビジネスをしている.すなわち2割近くが中国にすでにいることになっている。それもこの5、6年で2倍に増加して来ている.この三通によって、ビジネスが加速するのは間違いない.

「2008年9月30日、中国本土から台湾へパンダが贈与されることになっているが、29日、台湾当局上層部が明らかにしたところによれば、パンダと引き替えに台湾固有の動物が中国本土へ渡ることになるという。台海ネットが伝えた。」(EXITEニュース 2008年10月1日)

「台湾国防部は、中国は台湾に向けて1000基以上の短距離弾道ミサイルや巡航ミサイルを配備しているとし、報告書では「中国は台湾問題を平和的に解決したいと主張しているが、台湾との軍事紛争に備え軍備拡張を続けている」と強調している。」(AFP 2008年05月13日 )

「中国中央軍事委員会の徐才厚副主席は「台湾問題は緩和の兆しが見えてきたが、敵対関係の解消には至っていない」と述べている。」(日経ネット 2008年7月2日)

「台湾の対中国交流窓口機関、海峡交流基金会トップ、江丙坤理事長が7日から訪中し、中国側の海峡両岸関係協会トップ、陳雲林会長と金融危機をめぐる中台間の協力などについて話し合うことが5日分かった。中台関係筋が明らかにした。」(産経ニュース 2009.1.5)

大分引用が長くなってしまったが、この背景には国民党と共産党の歴史があるが、台湾では戦後国民党とともに台湾に移ってきた中国大陸出身者とその子孫を「外省人」と言い、それ以前から台湾に住んでいた人々を「本省人」というが、この「本省人」は福建省出身者が多い。

台湾語は閩南語とほとんど同じで、中華人民共和国福建省南部の言葉だ.漳州、泉州、厦門あたりの出身者は台湾の人たちと閩南語で会話が出来る.いわば同族、同郷と言っても良い.これらの都市は台湾の対岸の都市だ.「本省人」といっても、清の時代に移民して来た人たちで、福建省南部の風俗、文化、言語が全く同じ人たちだ.

台湾は鄭成功(1624−1662)政権があったが、実質的に中国人が移民して来たのは清の時代だから、1644年から1912年の長期にわたって、移民して来たことになる.そのほとんどが対岸の福建省からだ.シンガポール、マレーシア、ボルネオの中国人も1700年代から広東、福建から移民して来ている.だから、年代的にはそう大きな違いはない.シンガポールの華人出身地が混在しているが、ボルネオは都市によって出身地が明確になっていて、話す言語も違う。ただ、台湾との違いは出身地だろうか.本省人が台湾の人口の8割だから、彼らは福建省南部の人たちだ.シンガポール人は違う.異民族の集合だ.マレーシアもそうだ.同じ中国人だが、人種が違う.

中国は昔から戦争の歴史だと言って来た。なぜ戦争をするかと言うと、民族が違う、言語が違うからだ.異民族同士が戦って来たのが中国の歴史だ。この台湾は国民党という過去の経緯はあっても、台北の市民生活と福建省南部の人たちとのそれとは全く同じだ.食堂、クリーニング屋、金物屋すべてが一緒だ.違うものは貨幣の単位ぐらいだろう.

こうした人たちが戦争をするとは思えない.中国は同じ民族同士では戦争して来たことはない.中台米の関係は政治の駆け引きにしかみえない。一国二制度と言うことはあり得るだろうし、今のままでずーっと行くかも知れない.ただ、今の台湾の経済人がビジネスに支障のある動きを台湾政府がして来た場合には勿論反対して来たし、これからも反対するだろう.

しかしながら、台湾の一般のビジネスマンとか一般の市民はこうした事には関係なく、中国と行き来している.また、中国に行っても、アメリカに行くのと同様に、同郷の人たちがいるところにすんでいる.彼らにとっては共産党も国民党も関係ない。同じ生活が出来る。お互いに信用できれば良いのだ.だから出身が福建省南部であれば信用できる。これが正しく中国人の地域閥だ.中国人は人脈ネットワークが一番強い.

この地域閥は政治がからんでも崩すことはできない.陳水扁が独立を叫ぼうが、連戦が訪中しようがこの関係は崩せないと言う事だ.台湾を政治的に利用することはできるが、戦争する事は決してない.福建省南部とか漳州、泉州、厦門の地方政府は何が何でも台湾人の本省人を守ろうとするだろう.同じ民族だからだ.最近は私の家族みたいに、本省人と外省人が混血して来ているから、そうした区別がなくなって来ているが、彼らは言語、風俗、習慣が同じだ.家族閥の次に強い絆を持っている事を忘れては行けない.

明日は「地政学上での周辺国」。地政学はジオポリティックスといい、「地政学とは地理的な環境が国家に与える政治的、軍事的、経済的な影響を巨視的な視点で研究するものである。イギリス、ドイツ、アメリカ合衆国等で国家戦略に科学的根拠と正当性を与えることを目的とした。歴史学、政治学、地理学、経済学、軍事学、文化学、宗教学、哲学、などの様々な見地から研究を行う為、広範にわたる知識が不可欠となる。また政治地理学とも関係がある。」(ウィキペディア)さあ、どうしよう.

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海野 恵一
1948年1月14日生

学歴:東京大学経済学部卒業

スウィングバイ株式会社
代表取締役社長

アクセンチュア株式会社代表取締役(2001-2002)
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海野塾のイベントはFacebookのTeamSwingbyを参照ください。 またスウィングバイは以下のところに引っ越しました。 スウィングバイ株式会社 〒108-0023 東京都港区芝浦4丁目2−22東京ベイビュウ803号 Tel: 080-9558-4352 Fax: 03-3452-6690 E-mail: clyde.unno@swingby.jp Facebook: https://www.facebook.com/clyde.unno 海野塾: https://www.facebook.com TeamSwingby
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