2008年12月30日

「偽ブランド品の商標登録問題」

偽ブランド品の販売については以前話をしたことがあったが、今日は「偽ブランド品の商標登録問題」だ。昨日は珍しく、どこにも行かなかった。一日中、このブログの資料を調査していた。こうした調査をしていると、つくずく中国のことについて何も知らないんだなあと言う事に気づいた。世の中は広い。

正月まで知財関連だ。今日はその初日になる。商標登録は昔からある問題だ。2003年6月に中国の業者が中国商標局に「青森」出願申請をして、それに対して、青森県が異議を申し立て、2008年4月にその出願を却下。その間5年もかかっている。「青森」だから、直ぐに審議して結論を出しても良さそうだが、これだけの時間がかかっている。「本場奄美大島紬」に至っては出願してから登録された2000年までに12年もかかっている。以前話をしたように審査員も少ない。

また、「松阪牛」は2006年に出願したが、それは中国の業者が「松坂牛」で登録しているからだ。実に紛らわしいと言うか、賢いと言うしかない。また、台湾で、「青森」ではないが森に似た漢字で、中国語しかないが「水」を三つを書いて森みたいな漢字にして申請しているものも有った。

JETROによると、2007年末までに30の府県と都市の名称が商標登録または申請されているという。すでに秋田、長野、愛知、京都、熊本など19の府県と川崎市が商標登録され、静岡、広島、福岡など8県と名古屋市、横浜市が現在申請中となっている。商魂が逞しいと言うよりかは、審査する以前の問題であり、受理する事自体がうたがわしい。

また、こう言うのもある。「ルイ・ヴィトンの中国名である「路易威登」を、2003年に中国国内で商標登録した人物がいる。湖北省武漢市のビジネスマン、王軍氏だ。「路易威登」の意匠権を国家知的財産権局に申請し、承認された。その結果、中国では法律上、ルイ・ヴィトンの方が「路易威登」の意匠権を侵害しているということになり、本家の方が偽物というおかしなことになった。ルイ・ヴィトンは北京市の裁判所に意匠権承認の決定取り消しを求め提訴したが、判決はまだ出ていない。

かまわず王氏は、武漢に工場を建設し中国「路易威登」として、ルイ・ヴィトンの3分の1の価格でバッグなどを販売すると宣言している。首をかしげるのは、中国メディアの一部に「王氏の行動は、高級ブランド ルイ・ヴィトンを大衆ブランドにする」との肯定的論評があり、市民の間にも称賛の風潮があることだ。日本貿易振興機構(JETRO)の知的財産権部は「中国の地方では、偽物を製造する企業が大量の雇用を創出し、高い税金を納めて地域経済に貢献していることから、地方政府の担当官が本気で摘発に動かない事情もある」と指摘する。」(産経ニュース 2008年3月15日)

先ほどの大島紬の商標登録に12年もかかっているから、このルイ・ヴィトン意匠権の抹消に対しても、数年はかかるので、十分に商売にはなりそうだ。ましてや、この王さんを報道や市民が支持している向きもあるようだが、情けないはなしである。商売だから何でも良いと言うものではない。特に日本人には武士道精神があり、背中から敵を討たない風土がある。であるから、こうした事は到底理解できない。

一方で、「日本企業による中国古典小説関連の商標登録に対する異議を申し立てによって、2008年11月19日、コーエー、コナミら日本のゲーム会社が申請していた三国志など中国古典小説関連の商標10件が棄却された。」(Record China) これなんかは夷狄である野蛮人の日本人に三国志を使わせてたまるかと言う中華思想が影響しているのかも知れない。

「2007年6月12日、中国国家工商総局 李副局長によると、2001年の世界貿易機関(WTO)加盟以来、工商行政管理機関は19万3332件の商標権の侵害を摘発、うち海外企業の商標権を侵害した案件が2万8041件を占めるという。摘発後、司法に裁かれた案件も774件にのぼり、778人が罪に問われた。これらの数字は累計のものだが、2006年だけを取り上げても、252件が裁かれ、263人が罪に問われているという。 」(Record China)

中国政府のこうした発表は興味津々だ。こんなにまでしているという中国独特のアピールだ。いつも日本人はこれに騙されてしまう。「我々は発展途上国ですから」の類いだ。こんなにまでしているのだから、そのうちに解決するのだろうと言う具合に日本人は考えてしまう。私はここで中国政府の悪口を言っているのはない。日本人がとろいと言っているのだ。世界は中国のこうした発言の方が遥かに多い。日本人が純粋だと言う事だ。「馬鹿正直」と言う方が適当かも知れない。

さらに、中国の地方保護主義は甘く見たら行けない。かってに商標登録をされるだけでなく、不服審判に対する拒否、理不尽な買い取り要求、中国側からの商標権逆提訴などあらゆる理不尽な手を使ってきてもこの地方保護主義にひっかかってしまうと保護されてしまう。だから、この地域閥が絡んでくると手に負えない。

「2008年11月6日、温州網は浙江省温州市の企業がバラック・オバマ次期米大統領の商標を申請していたと報じた。 商標が申請されたのは2007年3月14日、1年半以上も前のこと。温州市永嘉県の靴製造業者が、ベルト、衣料、子供用衣料、スポーツシューズ及び帽子などの分野で、「アメリカ・オバマ(中国語で美・奥巴馬)」の商標を申請していた。今年7月17日、30日には温州市の別の企業家が、ビール、コーラ、スポーツ器具分野で「オバマ(奥巴馬)」の商標を申請している。」 (Record China)

このオバマの商標登録は実に1年半も前だ。李副局長の言っているはなしとは裏腹にこうした申請は衰えるところを知らない。クレヨンしんちゃんの件は以前取り上げたが、仔細は以下のとおり。

「1997年、中国の企業数社がクレヨンしんちゃんの絵柄や中国語名「蠟筆小新(ラービィシャオシン)」で勝手に商標を登録したため、双葉社は中国国内で「蠟筆小新」の商標名でのキャラクターグッズ販売ができず、「Shinchan」の商標名での販売を余儀なくされている問題が発生している。

2004年に双葉社が衣料品などのグッズを中国で販売したところ、公式商品にも関わらず商標登録の影響で「コピー商品」として店頭から撤去される事態が発生した。2005年1月双葉社は、第三者の商標登録が有効であるとした行政の判断は間違っているとして、中国の行政を相手に北京で行政訴訟を起こしたが、2006年9月に中国の北京市第1中級人民法院は訴えを退けた。この判決を受け、双葉社は北京市高級人民法院に控訴した。

中国語名「蠟筆小新(ラービィシャオシン)」で商標を登録した、中国の企業の1社は、双葉社との話し合いの席上にて、双葉社に対し 『この商標を譲渡する』 と双葉社へ申し出た。 しかし「日本円で約14億円(一説には約20億円)で買い取れ」などとの内容だったため双葉社は拒絶した。この商標権侵害の問題を解決しようとせず、中国側は「蠟筆小新(ラービィシャオシン)」の商標を未だに使用し続けている。」(ウィキペディア)

「商標申請がされて、公開した後、所定の期間中に誰からも異議申し立てがなければ登録許可になる、いわゆる先願主義に基づく仕組みは、どこの国でもほぼ同じだ。また、中国企業が商標権を獲得してから8年もの間、双葉社が何もしなかったことが、中国企業の正当な権利を印象付ける結果になっている。」(http://washimo-web.jp/)

この商標権の問題は中国ではこうした申請に数年もかかる事からどんなことをしてもなくなることは絶対にない。だから政府は上述したような事は言うがそのアクションは形だけであり、取り締まることはできない。5年も行政訴訟にかかるのであれば、商売が十分に成り立ってしまう。法を犯しているわけでもない。日本の特許庁が「異議申し立て」とか「無効取り消し請求」をすれば良いと言っているが、上記のように5年もかかっている。勿論そうするべきだが、こうした問題は解決しないと言う事だ。

日本の政府とかそれなりの団体が中国のこうした諸機関、諸団体に商標権の侵害で、法的な対処を依頼し、中国政府が上記のような回答をしてくる。依頼する方もこうした問題が決してなくならないと言う事を認識して依頼しているのであれば、それなりにグローバルなプロトコルにそっていると思うが、そうではなくて、真剣にこうした問題を解決しようとしているのであれば、井の中の蛙になってしまう。問題の対処方法が違うと言う事だ。

商標権侵害はかならずあり、それに対しての対策は異議申し立てであり、無効取り消しだと言う理解が正しい。外面として、商標権侵害はなくすべき云々と言う議論が正しい。あくまでも、外面上であり、本心からそのようなことを言っても、意味がない。「真面目」に「偽ブランド品の商標登録問題」に対応しては行けない。きちんと法的に対処し、異議申し立てが受領されるまで待つしかないのである。

社会正義と言う視点からはいくらこれが商売になるとは言っても、本来、許されるものではない。こうした問題は法と正義とが矛盾してしまう事がある。これも仕方のないものだと片付けては行けない。「路易威登」として販売していれば、ルイ・ヴィトンの販売を止めろとは言えない。このケースはどこかで判決が出れば、社会正義が勝つことになるが、クレヨンしんちゃんのケースでは法的に勝てない可能性がある。

経済法は以前にも話をしたように、「公正かつ自由」な取引と競争という理念に基づくものであり、このようなものは公正であるとは言いがたい。法に則っていても、公正でないものは社会正義のもとに制裁を受けるべきであり、こうしたことは政府も経営者も放置するべきではない。クレヨンしんちゃんのようなケースは公正とは言いがたい。

「偽ブランド品の商標登録問題」はこのように経済法の根本である公正と言う視点から追求すべきであり、商標権の登録自体に問題の視点を振り向けては行けない。何度も言うが、中国は白黒でもない、灰色のビジネスが多い。この灰色を白か黒に色分けしようとしてもできない。日本人は得意ではないが、灰色そのものの中の何を公正であるとか公正でないとかの議論をしなければならない。

そうしなといつまでたってもその灰色が白とか黒にはならない。白星は相撲で言う勝ち星だが、中国の世界ではこの勝ち負けが明確でないものが多い。小平が白猫でも黒猫でもネズミを捕るのがよい猫だと言ったが、本当は中国は灰色の猫ばかりだ。ネズミみたいな猫もいるから始末が悪い。それが中国だし、世界だ。日本が狭すぎる。

明日は「知的財産権の保護、模倣品の問題」で、今日の続きになる。

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海野 恵一
1948年1月14日生

学歴:東京大学経済学部卒業

スウィングバイ株式会社
代表取締役社長

アクセンチュア株式会社代表取締役(2001-2002)
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海野塾のイベントはFacebookのTeamSwingbyを参照ください。 またスウィングバイは以下のところに引っ越しました。 スウィングバイ株式会社 〒108-0023 東京都港区芝浦4丁目2−22東京ベイビュウ803号 Tel: 080-9558-4352 Fax: 03-3452-6690 E-mail: clyde.unno@swingby.jp Facebook: https://www.facebook.com/clyde.unno 海野塾: https://www.facebook.com TeamSwingby
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