2008年12月27日

「経済法制度の未整備」

昨日は丸惣の河関社長と久しぶりに会うことができた。以前は北海道からわざわざ、私の忘年会に出て来ていただいたりしていたが、じっくり話をすることができなかった。昨日の吹雪のおかげだね。昨日は飛行場に往復してしまった。飛行場に行けば乗れるかと思ってしまった。雪の欠航はさすがに北海道で、手際が良いと言うことを勉強した。私の吹雪に対する初動対応はことごとく裏切られてしまった。今朝は雪が降っていないので、大丈夫だ。

それにしても昨日の飛行場の混雑は異常だった。おかげで、この2日間は膨大な資料の整理が出来た。正月のブログのテーマは難解なものが多い。今日のテーマも難解だ。環境に焦点を絞って話をしようと思っている。今日はホテルだし、冬休みの初日なので、時間の制約はあまりない。このブログの話を丸惣の河関さんに話をしたら、「苦行修行ですね。」と言っていたが、まさにその通りだ。昨晩、資料の調査に2時間、今朝に至っては書くのに3時間だ。5時間も毎日こう言う事をやっていれば、修行になってしまうな。

社員にこのブログを就業時間に読む事を禁止したが、たしかに、就業時間に読んでしまうと間違いなく5%は稼働時間が短くなってしまいそうだ。中国に関心を持っている人もそう多くないばかりか、中国の深層を精神面とか価値観の視点で、モノを書いている人はほとんどいない。日本人にはない部分だが、グルーバルと言う視点は本当はきわめて泥臭い世界だ。そういうことすら日本人は気づいていない。英語がはなせて、アジア人をリードしたいぐらいにしか考えていない。だから国際会議でいつまでも参加できない。あまりにもこうした部分に日本人は表層的すぎる。我が社はこうしたグローバルな企業を目指しているので、社員には必読の指示を出しているが、こうした内容だと結構大変だ。

さて、「経済法制度の未整備」を議論するにあたって、まず経済法とは「公正かつ自由な取引と競争」を行うための法律だと言う事。日本でも最近、食品の原材料を何処まで表示するのか議論になっていたり、証券会社の補填が問題になったりしている。一方で、日本は規制緩和をしようというものも結構ある。電力は独占事業なので、政府が価格を決めているが、石油の値段が下がってから、半年もかかって、電力料金に反映するのは消費者としては納得できないものがある。これもこうした部類の課題だ。法律で決めているから、半年かかっても良いと言うものでもない。日本人はおとなしいから、こうしたぐらいでは誰も文句は言わない。中国ではそうはいかない。

中国ではこうした独占禁止法とか消費者保護に関する法律、カルテルのような談合、社会的に不当な取引についての話になる。中国人がどのようにこうした事に対応しているかを検討してみよう。知的財産権の保護もこの領域だがこれについては散々話をして来た。メラミンを混入させた粉ミルク事件もこれに該当する。中国で有害物質メラミンが混入された粉ミルクを飲んだ乳幼児が腎臓結石になった事件で、メラミンの入った粉を製造販売した業者2人の初公判が12月26日、河北省石家荘市中級人民法院(地裁)で開かれた。これは刑事事件だ。死刑の可能性もある。今日はこうした様々な経済法関連の課題があるが、その中から最近ホットな環境に関する話をしよう。

中国の『循環経済法』が6月24日、立法機関である全国人民代表大会常務委員会に提出され、審議を受けることになった。今後、中国は廃棄物のリサイクルを重視すると共に、資源の効率的な利用と節約を重視することになる。「県レベル以上の政府は、循環経済計画を制定すると共に、地元の資源と環境の受け入れ能力によって産業構造と経済規模を調整し、総量規制制度を導入しなければならない」と規定しているほか、化学工業や、製紙などエネルギー消費の高い企業に対する管理強化を求めている。(CRI Online 2008年6月24日)

昨日のテーマの中で、地方保護主義を中心に話をしたが、今日のテーマもそれに大いに抵触しそうだ。今日はこの環境がらみの話をしよう。製紙工場は環境の問題を起こしやすい。以前、バイカル湖の水質汚染の話を聞いたことがある。バイカル湖の最大水深は1,637mもあり世界で最も深く、貯水量も世界最大。世界の淡水の20%がここにあるとされる。水質も世界一の透明度を誇り、世界遺産に登録されている。(ウィキペディア)だから、この水で清涼飲料水を作ろうとした業者があった。

ところがである。一つの製紙工場からの工業排水がこのバイカル湖を水質汚染していた。そのため、この奇麗な湖の水は飲めなかったのである。まさに深刻な問題だ。こうした話が大連でも雲南省でも省とか市のレベルの話になるとこうした問題がある。彼らは製紙工場を誘致したいが、環境汚染と経済利益のバランスは日本と変わらない。現代は昔と違って、製紙工場の誘致に反対するべきだと言う事ではない。環境を維持するためのコストをどう分担するかと言う事だ。さらにその費用をどのように投資し、それをそのように管理するかが問題だ。ODAのように投資する側と運用する側とに問題が山積する。それを未整備と言う表現にするにはあまりにも問題の根が深い。

今年の1月、中国湖南省辰渓(Chenxi)県で、化学工場から漏れたヒ素などの有毒物質を含む排水で水道水が汚染され、地元当局が住民に対し水道水を飲むことを禁じる事態となったり、2008年9月17日、雲南省の9大高原湖の1つである「陽宗海」が、深刻なヒ素汚染に陥っていることがわかった。原因は、近くの化学工場から垂れ流された工業排水で、すでに工場は閉鎖され、関係者の身柄も拘束されているということだ。(exiteニュース 2008年9月18日)こう言う事件は数限りない。

一方で、中国での日本企業の例を示そう。エプソンは中国事業への水に関する影響に対して、同社は、(1)工業用水の水源汚染に対する前処理設備増強のための設備投資、(2)工場排水のリサイクル率強化のための技術・設備投資、(3)工場排水の水質規制強化によるモニタリング頻度の増加または設備導入、(4)当局の汚染源調査のための情報提供など、環境に対する対策は日本と変わりない。(エプソン ホームページ)

また、この環境対策として日本政府は中国政府にODAとして資金を提供している。例えば、有機化学製品の生成過程を水銀を触媒として使わないようにするための資金を提供している事例を紹介しよう。貴陽水晶有機化工集団有限公司に2000年に114億円借款したが、実はこの工場ができた時、すでに水銀を垂れ流すことによる健康被害の問題は経営者側も市政府も知っていた。しかし、中国が工業化を進める中で、しかたなく放置してあった。この会社の製品の半分が日本への輸出品だ。しかしながら、未だにここの工場の隣を流れる河川には魚はいないようだ。(ODA民間モニター報告)日本政府のODAはこうした環境対策費用として提供している。今のこの経済大国の中国に日本が環境費用を出す事自体が問題だが、出している。

もう一つODAの例を示そう。環境モデル都市貴陽市が日本の環境ODA(円借款)によって成果を出している例だ。市内の二酸化硫黄濃度がどのように改善されてきたかを見たものがこの図だ。97年のデータは異常に高い。98年以降徐々に改善されてきているのが見てわかる。2007年には初めて国家環境基準を達成している。

貴陽市の二酸化硫黄濃度の変化化学工場の脱硫装置の問題も良くはなしに聞く。脱硫装置は酸性雨をなくし、そこから石膏が出来るので、大気汚染防止と土壌改良が出来るので、数多くの設置例がある。しかしながら、日本からの装置は操作が複雑で、メンテコストがかかると言う事だ。だから、あまり使いたがらないと言う問題がある。せっかくの設備だが、使われていないと言う事だ。

ここ数日投資環境に関連した話をして来たが、こうした法規と経済との絡みは中国では複雑だ。なぜかというとこの国は低開発国、発展途上国、先進国が混在しているからだ。しかもそれを統括する共産党と地方政府との葛藤が縦軸にある。これに経済と開発、環境汚染と言う変数が絡んで来ている。今までいろんな角度から中国人のグローバルを泥臭く議論して来た。よく未整備だとか法規を守らないとか中国についてはいろいろな不備をあげるが、このように変数パラメータが多いとこれだけの連立方程式は解けない。だから、いつまでたっても、正解は無い。そう言う良いではいつまでたっても整備できないのかも知れない。

その正解はないんだと言う事を日本人が理解できない。いろいろな専門家がそれぞれの専門家の視点で議論してしまうとこうしたマクロの連立方程式が見えない。マクロの経済の視点だと、今度はこうした環境経済法とかが目にはいらない。横浜市立大学名誉教授の矢吹 晋先生とは社団法人国際善隣協会にておつきあいをさせていただいたが、「ギョーザ事件が映す中国病・地方保護主義」でのかれの意見はまさしくこうした中国の錯綜をついている。少し引用したい。(東アジアの火種 2008年2月28日)

「中国製ギョーザによる中毒事件が日中関係を揺るがしている。製造元「天洋食品」(河北省石家荘市)の工場長は記者会見で「我々こそ最大の被害者」と強調、自己弁明に終始 した。これは「日本の消費者」に向き合う態度ではない。中国病の「地方保護主義」の矛盾を露呈しただけではないか。河北省出入境検査検疫局なども一切「我々に責任なし」との態度で一致している。中南海からの捜査指令さえ無視されているのではないか。このまま捜査が進展せず、日中両国が非難の応酬ばかりをしていれば、4月に予定されている胡 錦濤国家主席来日の成功は危うくなる。」

「地方保護主義という壁に阻まれて、中南海からの捜査指令が宙に浮いているのではないか。河北省は僻遠の地ではなく、北京市に隣接する省、いわばお膝元近くに位置する。中央政府がお隣の河北省政府さえコント ロールできていない疑いを禁じ得ない。仮定の話だが、もし河北省の地方保護主義に阻まれて、胡錦濤が中南海のリーダーシップを発揮できていないとすれば、由々しき事態であろう。」

中央政府が河北省を仕切れないと言う事だ。彼が言うように、河北省は北京の隣の県だ。東京で捜査協力を協議というが、中国には日本と違い、河北省の公安庁と中央政府の公安部との調整。実はそれだけではない。食品なので、双方の衛生部が関与してくる。もうこれだけでも、大変な事だ。さらにこのメタミドボスの混入事件は2008年だけでも餃子以外にも何件もある。そうなると1月にこの事件が発覚して、日本の報道は日中両国の警察は、2月21日からようやく東京で捜査協力を協議し始めたが、あまりにも遅いと非難するが、中国政府からしてみれば、天と地が逆転するぐらいの超特急だ。

さらにその事件の当事者の「天洋食品」が絡んでくるわけだから、たまらない。こうした食品の農薬の混入だけでなく、河川の汚染源の追求、酸性雨にからんだ脱硫装置、水銀などの工場排水の環境課題に対して、「低開発国」で発生したこうした問題を「先進国」の中南海が解決しようと言うのだから正しく世界の縮図だ。今日はこの経済法も課題があまりにも広範囲なので、環境だけに絞ってしまったが、談合とか不公正な取引をあげたら、またきりがないので、それは別の機会にしよう。でもどれもこれもちょっと入り込んだら、変数が多すぎて、正解は求められそうにない。何が正しいかと言う事はだれにでもわかっているが、この中国ではそれを解決するための正解が直裁的には出せない。政策も大変だがこうした対策も相当大変だ。

明日は「恣意的な法制度の運用」なので、今日の続きみたいなところがある。連日長文だが、テーマがこういうので、仕方がない。こう言うテーマで、専門家でない人が書くことはますないので、チャレンジしている。グローバルと言う視点で、こうしたテーマをとらえる事はたしかに、専門ではないので、強引なところとかいい加減なところがあるが、中国の大きな仕組みと価値観を把握することはできる。書く方も大変だが、是非ついて来てほしい。こうしたテーマは日本人にないところだ。だから、はしょる事は簡単だ。だが、これが正解のない世界の縮図である事をわかってほしい。日本のように何でもかんでもまずは成否、白黒を判別し、解決すべき方策の手を打てる国は他にはない。混沌とした世界に入って行かなければ日本人はアジアでやって行けない。澄んだ水は日本だけだ。

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海野 恵一
1948年1月14日生

学歴:東京大学経済学部卒業

スウィングバイ株式会社
代表取締役社長

アクセンチュア株式会社代表取締役(2001-2002)
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海野塾のイベントはFacebookのTeamSwingbyを参照ください。 またスウィングバイは以下のところに引っ越しました。 スウィングバイ株式会社 〒108-0023 東京都港区芝浦4丁目2−22東京ベイビュウ803号 Tel: 080-9558-4352 Fax: 03-3452-6690 E-mail: clyde.unno@swingby.jp Facebook: https://www.facebook.com/clyde.unno 海野塾: https://www.facebook.com TeamSwingby
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