2008年12月18日

今日は「模造品」だ。中国は日本とは違うぞ.中国人の価値観はけっして日本人には体得出来ないが、それを理解しなければならない.

年末は師走と言う事で、いつも不思議なんだが、師も走る.要するに誰でも忙しいと言う事だ.いつの間にか師走も18日だ.今年もあと一週間だな。今日は「模造品」について話をしよう.

偽物と言えば上海の淮海中路の象徴であった「襄陽路服飾市場」。ここはもう取り壊されたが、女房のお供で、何度も行ったとこだ.そこの入り口の3元のワンタンが楽しみだった.女房が買い物している間に待っていた路地のマッサージ屋もうまかった。ここの偽物はバックとか服飾専門で、商品の倉庫は別のところにある.偽物か本物かの区別は私には出来なかった.きわめて精巧だ.何度も行ったが、取り締まりをしているんだろうけど、そう言った形跡は感じなかった.値段も結構高くて、本物の3分の一ぐらいだろうか.本物の中古品を買うと言う感じだ.

私がここでいつも感じていた事は偽物もここまで精巧に出来るんだなあと言う変な関心だ.日本に売っている偽物はいかにも偽物だが、ここで売っているルイビトンは区別がつかなかった.今は取り壊されて、別のところに移ったようだ.私はかって明の時代の家具を持っていた.その家具は梅雨時になると木の隙間がぴしっとして、乾燥した冬になると隙間が空く.引き出しをしめるとほかの引き出しが開いてしまう.きわめて精巧なものだった.中国にはいい加減なものを作る人もいるがこのように精巧なものが出来る職人もたくさんいると言う事だ.国が多きいだけでなく、多民族のなせる技だ.日本人には理解出来ないところだ.まさに何でもありだ.

そうした職人芸がこうした偽物にも生かされているのかなあと思っている.以前は中国の偽物は粗悪品だと言うふうに私は考えていたし、今でも、そう言うものは後を絶たない.アメリカに輸出された玩具になまりがはいっていたり、偽物のパジェロが事故を起こしたり、例を挙げればきりがない.中国で現地生産されるホンダやヤマハなど日本の自動二輪メーカー四社の生産台数は、1999年で約200万台だった。しかし日本製品を模造、偽造したものは、それをはるかに上回る700万台だった。そしてこれらニセモノ700万台のうち、実に500万台がホンダの偽造品、模造品だった。あげくの果てはホンダはこの偽物メーカーと合弁するところまで来てしまった.そこまで良く出来るようになったと言う事だ.そこに至るまでの裁判係争は数限りがなかった.

私は北京に行く時にはいつもDVDを買う。おばあちゃんへのお土産だ.一枚6元(90円)。何でもある.取り締まりは時々ある.そのときは彼らはいなくなる.その期間が過ぎるとまた元通りに売っている.大連は今月は禁止と言う具合だ.正規の値段で、なぜ買わないのかと言うと何処に行けば正規の値段で買えるのかわからない。あまりにも、コピーが横行し過ぎて、正規のものを買う人がいないからだ.よく日本の雑誌で、買う人が悪いと言うが、正規品を買うところがないので、しょうがない.あっても欲しいものは絶対にない.

中国にも知的財産権に対する法律はしっかりあるが、この国がこの知的財産権制度を確立する事は本当に出来るのであろうか.日本では悪いやつが裁判に勝つ事はまずあり得ない.法の目をかいくぐって悪い事をするやつはいなくはないが、そう数多くいるわけではない.中国では当たり前のように横行している.悪いやつが裁判で勝つ事は収賄もからんで、何処にでもある.取り締まることはできない.今に始まった事ではないからだ.何千年の前の昔からだ.それを変えることはできない.だから、中国人の家族はこうした悪いやつに対して、寛容だ.日本人では考えられない.かといって、こうした悪いやつを許すにかと言うとそうでもない.きっと数が多すぎて、きりがないのかも知れない.

義烏市を知っているだろうか.中国で最大卸流通の中心である義烏には、屋台の卸売店三万以上、通常店舗三千五百以上があり、十万種類を超える多様な製品を売っている。毎日およそ二十万人の客が来、一日約二万トンの品物を買う。義烏の年間売り上げは91年には1億ドルだったが、95年には22億ドルとなったと言う情報がある。今はいくらかはその情報を持っていないが、ともかくそのとんでもないところに昨年行った.

上海から3時間のところだ.そこの管理組織のトップを知っている友人がいたので、日本の大手の企業の人と一緒に行った.三万店と言うが、実際そこに行ってみるととんでもなくでかい.こんな田舎町にこんなものが出来る事が不思議でならない.1時間自由時間があったので、鞄を見に行った.鞄屋だけでも3000店舗もあった.小走りに見たのはせいぜい100店舗がいいところだった.偽物でもこのように規模が違う.とんでもなくでかい。取り締まる?どうするんだろうか.私には不可能に思う.ここだけではない.

商標権侵害でもきりがないくらい事例がある.その最も有名なものは中国でも大人気の漫画「クレヨンしんちゃん」である。このキャラクター商品を、出版元の双葉社が、上海などで販売したところ、絵柄をコピーした商品が中国名の「蝋筆小新(クレヨンしんちゃん)」として既に商標登録されていたため、本物が「商標権侵害」として売り場から撤去させられた。

私が言っている日本の企業のグローバル化において、このことは結構深刻である.日本はこれから商品ばかりでなく、サービスで商売をアジアに、世界にして行かなければならない.サービスの最たるものは技術の輸出である.この技術の輸出には特許制度がからんでくる.莫大な開発投資をして来た技術を日本が持っている.日本がこれからアジアで、世界で、ビジネスをして行く時の最も重要な国家戦略だ.それでなくても、日本人は「真面目」で「嘘つかない」口べただ.どうみても、ものを売ると言う事に関して言えば、百戦錬磨の歴史を持った中国人に勝てるわけがない.いや、外国人の誰にも勝てない.そうした教育も受けていない.日本人の「善意」と「信用」は日本を出たら、通用しない.それすら知らない日本人がほとんどだ.

さて、この知的財産制度は先進国は浸透していて、中国は未だ後進国だからダメなんだと言うように世間ではいっているが、私はそうは思わない.これは中国が後進国だからではない.こう言う文化だと考えるのが正しい.中国には今数えきれない問題が山積みされている.その一つがこれだ.昨日の代金回収の課題と一緒で日本的な価値観で判断しては行けない.「真面目」に対応してはダメなのである.

党・政府幹部の腐敗問題は1000年前もあったし、100年先もなくならない.農業・農民・農村の三農問題は解消出来ない.役人と農奴の国だ。100年前もそうだったから、100年後もそうだ.いくら共産党が頑張っても、こうした課題は解決出来ない.数が多すぎる.どうように地域の格差はなくならない.横穴住居がビニールハウスになっただけだ.テレビが普及したから、裕福と言うか他の人の生活を知っただけで、暴動になったりしているが、もともとの生活は貧しいし、今も貧しいだけだ.

解決出来ない問題は山ほどあるが、これもその一つである.環境問題のように絶対解決出来るものも有る.生きている人間がこのままでは生きて行けないからだ.そう言うのは解決出来る.そう言う意味ではチベットとか新疆のような民族問題も解決出来ない.この驚異的に発展し、オリンピックどころではないような状況で、オリンピックを成功させてしまう国だ.すごいに尽きるが、この知的財産権はどうだろうか.

いつまでたっても解決出来ないものとして、収賄と同様に気軽に出来るコピーDVDはなくならない。環境問題のように生きて行けないのであれば、改善されるが、気軽にコピーが出来たりするようなものはそれが悪いと言う国民の意識がないというかそう言う事に対する罪悪感がない。だからなくならない。政府は国際社会が文句を言うから取り締まっているだけだ.これはなくならない.微妙なものにはルイビトンのようなコピー商品だ.どんなブランドでもある.それが、毎年だんだん精巧になって来ている.将来どうなるかと言うと別のブランドになって進化して行くように思う.しかも品質は全く同じものだ.今でもほとんど同じだ.日本の税関が良く摘発したと言っているが粗悪品だけだ.精巧なものは摘発出来ない.

バイクが良い例だ.だんだん精巧になって、ホンダが偽物メーカーとついには合弁してしまった.車もそのうちにそうなってしまうだろう.トヨタは部品加工は決して中国には持って行かないと明言しているが、いつまでも、日本に高度なマシニングセンターをオペレーション出来る人材が維持出来るとは思わない.そうなると中国に移って行かざるを得ない.そうなれば、技術が漏れてしまい、偽物がでてしまう.時代の流れだ.

マブチモーターがいまでもその偽物で苦労している.マブチの大連工場は出来てからもう20年経った.この7年間、何度も見せてもらった.女性がワンフロアに1000人もいるのは壮観だし、8時に全員が来ると言う事が信じられない.鋼のコイルからモーターを作っている立派な工場だ.日本でもこうしたレベルの工場はそう多くないはずだ.それでも、偽物にやられている.偽物は溶接する部分のピンが直ぐに折れてしまうと言っても、値段が安い.あれだけの合理化された一貫工場の製品でも値段でまけてしまう事自体が信じられないが事実である.

何とかなるのは先ほどのクレヨンしんちゃんのような商標権だろう.これはいかにもいかさまだ.先に商標登録したから良いって言うもんじゃあない.審査官が圧倒的に足りないようだが、これは時間の問題だ.国際社会ではこれは許されない.ただ、この国はほっておいてはダメだ.異議申請を我慢強くして行かなければならない.目には目を歯には歯を見たいなところだ.日本人の「正義感」だけでは通用しないところだ.

ましてや、盗用した相手に「盗用」したということは日本人の「正義感」からして当たり前だが、中国では通用しない.謝罪要求も固執しては行けない.さっきのコピー商品同様に罪悪感の意識の違いだ.それと中国人は日本人以上に「面子」がある。さきほど、目には目を歯には歯をと曖昧に行ったが、中国は政治力がきわめて魑魅魍魎の世界だ.政治力が介入すれば、絶対勝てる裁判も勝てない.日本のように法の目を潜れば勝てる程度のものではない.これこそ「郷に入る」しかない。

日本にもこうした悪いやつはいるが、中国ではこうした事は白黒がはっきりしない.灰色を悪いと言えないところがある.扱いにくいと言えば扱いにくいが、日本人の価値観では通用しない.こう言うところを中国人から学べとは言わない.日本人の価値観が通用しない世界があると言う事を我々は知らなければならない.日本にいては決して知ることができない世界だ.中国とつきあうのを止めれば良いと言う人がいっぱいいるが、日本が鎖国出来ないと言う事は当たり前の事だ.だとしたら、こうした事に目をつぶることはできないし、実現出来ないような、きれいごとも言ってはいられないだろう.我々がそろそろ動き出さなければならない.だからBPOだと言っている.

明日は「在庫調整と需要予測」だが、焦点を絞るために「需要予測」ダケにしよう.在庫調整と言うと目先の景気対策になってしまう.もっと大きな目で見て行きたい.

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海野 恵一
1948年1月14日生

学歴:東京大学経済学部卒業

スウィングバイ株式会社
代表取締役社長

アクセンチュア株式会社代表取締役(2001-2002)
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海野塾のイベントはFacebookのTeamSwingbyを参照ください。 またスウィングバイは以下のところに引っ越しました。 スウィングバイ株式会社 〒108-0023 東京都港区芝浦4丁目2−22東京ベイビュウ803号 Tel: 080-9558-4352 Fax: 03-3452-6690 E-mail: clyde.unno@swingby.jp Facebook: https://www.facebook.com/clyde.unno 海野塾: https://www.facebook.com TeamSwingby
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