2008年12月17日

昨日は眠かった.今日は「代金回収」。

昨日は元アクセンチュアの蔀とあった。今はファンドをやっている.ファンド企業が軒並み開店休業なのに、彼のところは手堅くやっている.感心して話を聞かせてもらった.投資対象の企業とつきあっているので、持っている情報は中途半端ではない.以前弊社でファンド事業の役員をやっていた木村健太郎の話もでたが、元気でやっているんだろうか.さて、「代金回収」のテーマについて話をしよう.日本企業のグローバル化とどう関係があるのかの視点で議論したい.

このテーマでは今まで何件かの案件に関わって来た.やはり問題が多い.最初にあったはなしは商社の不良債権.山東省の国営企業だった.大きな会社のなので払ってくれそうだが、払わない.上海で、不動産の団地を一括売ったが、払わない.ハルピンで、自動車の販売ディラーの合弁事業を始めたが、相手方が利益を分配しない.合弁の相手方はきちんとした会社だ.アウトソーシング企業を合弁で作ったが3年経っても利益がでない.100人もいるのに.ここも相方はちゃんとしている.レストラン経営を合弁で始めたが、第2店舗まで出したが、利益配分が一銭もない.これも広い意味での代金回収だ.ここの相方も素性がしっかりしている.酸素売っている企業で、設備代金の残額を払わない.こう言う事例は五万とある.

きっとこうした企業がたくさんあるがここではその原因を分析したい。なぜ払わないんだろうか.アジア経済研究所―中国国務院発展研究中心2003年調査で、以下のような結果がでたということだが、本当かなあ.とりあえず、ここに載せておく。

        代金回収できなかったことがあるか? (四川省宜賓市)

         ない。 あるが、最後に回収。 結局、回収できず。 合計
総計            31      47        33       113
どのように対応しましたか?  
  取引条件変更    1      19        7        29
  取引停止              22        15        39
  裁判に訴えた            22        19        43

この表を見ると裁判に訴えたと言う数字がやたら多いが、中国では裁判と仲裁があり、圧倒的に仲裁が多い.2003年で、800件(http://cl.rikkyo.ne.jp/cl/2005/internet/tunen/keizai/kaku/ajiakeizairon/051220ajiakeizairon-22_2.ppt)ということだが、上記の表は四川省だけのデータで、この800件は中国全土だから、やはり多すぎる.800件の方が信憑性がありそうだ.ただ、ここで言いたいのはこうしたトラブルが日本人には桁違いに大いに違いないと言う事だ.

そもそも信用のリスク管理はこの中国では難しい.取引先の経営実態をどう判断したら良いのか.それすらわからない.税務署に提出した資料は正確ではない.正しい申告をしていないからだ.正しい申告をしているのは外資系だけだ。だから、財務情報はわからない.以前、日本企業から投資をしてほしいと言う中国企業の評価で苦労したことがある.財務データが実態を表していないからだ.そこの企業は結局実態のデータを出してくれなかった。税務署にばれるのが怖いからだ.しかもこの企業は近い将来上場すら考えているのに.この国にでは裏帳簿は当たり前だ.

先の自動車ディーラーの場合は貸金に対して、そこの販売拠点の不動産の担保を取っていると言っていたが、不動産市場そのものが成熟していないから、評価が定まらないと言う問題があった.北京とか上海の中心地ならともかく、地方都市だと不動産担保の評価が定まらない.だから、仮に販売しようにも現地に精通していないと値段を叩かれてしまう.現地に精通していれば、こうした合弁企業の問題も起こらないが.

そもそも、支払い遅延は罪悪だと言う感覚は持っていない.中国人はビジネスでなくても、金の貸し借りはきちんとしていない.督促を相当しないと返してくれないと言う文化がある.日本人は相手に会う度にあの金はどうしたと聞く風習はない.だから、支払先が日本企業で、相手の責任者が日本人の場合にはなおさら残金を払わない.8割回収は出来ても、残りの2割の残金を払わない.

先ほど引用した情報では裁判に訴えたと言うのが19件あったが、これは仲裁だと思うが、この仲裁は強制執行が出来ない.ましてや、上記のような地方の場合には地方のコネが強いから、外資は仲裁になかなか勝てない.さてどうしたらいいのか少し検討しよう.

財務情報はきちんと開示する事は上場企業以外には望めない.担保評価も場所によるが、あてにはならない。不渡りになっても銀行は取引を停止しないようだが、これはいくら何でも改善されるだろう.不動産団地の売買では仲裁そのものが買収されてしまったようだ.そうなると、仲裁そのものも当てにならない.これは改善されないと見た方が良い.こう見てくるといやになるくらいどうにもならないと言う事がわかる.

日本企業の研究レポートを見るとこれらの課題に対して、財務諸表の情報開示とか不動産制度の改善とか銀行の不渡り手形に対する対応とか、司法制度の改善が必要だと何処も言っている.市場経済にはこうした資本主義社会の信用大事だと言っているが、こうした事は中国人にたいしては正しくない解決策だ.

やっぱり、回収不能になってしまう.そこが中国だ.そこで諦めては行けない.日本人の価値観は「真面目」「正直」「嘘つかない」だが、相手もそうだと思っては行けない.「郷に入る」必要がある.そもそも価値観が違う.何度言っても、日本人の経営者の多くは「相互の信頼関係の樹立」が出来れば、取引条件の交渉は成功すると言って、私の言う事を聞かない.だから、失敗する.

日本人の価値観と日本の慣習は中国人にはまったく通用しない.日本人の「信用」は理解してもらえない.結果は中国人は「信用」出来ないと言うことになる.違う.契約したんだから、金を払うかと言うと、一度きりだったら、まず払わない.中国人は一見はもともと信用しない.だから、回収困難になる可能性は大きい.

中国人と取引をする場合には「信頼」のネットを探さなければならない。 日本人とのビジネスのように一見での取引はかならず、「信頼」出来るルートをどこかで見つけてから取引を開始しなければならない.相手が信用できる人かどうかではない.中国は多民族で、いろいろな人がいるから、知らない人を中国人は信用しない.だから、金も払わない.相手の面子を気にするのは「信頼」の関係ができてからだ.

だから、ビジネスを開始する上での、第一歩はこの「信頼」のルートを確立しなければならない.そうはいっても、相手が日本人だと払わないケースがある.某社は以前、営業本部長が日本人だった.だから、中国企業が残金をいつまでも買掛残として残していた.ここの企業とは継続的な取引がある会社だ.日本人は脇が甘いと思われているし、中国人は支払いが悪いと日本人が思っているところを彼らはしっているからだ.

だから代金回収の責任者は中国人であるべきだ。取引先との関係は上記の通り、中国人の価値観を理解していれば、「信頼」のルートを探って、彼らの商慣習に従えば良い.ここの中国人の価値観の根幹のところを理解していれば代金回収は怖くないはずだ.こういう風に言って来ても、中国人は信用出来ない.嘘つきだ.という呪縛にはまってしまう。だから、くどいくらいにBPOだと言っている.肌で感じるしかないからだ.日本企業で働く中国人はこうした事は決して指摘しない.自分の立場が大事だからだ.

まずは日本人に感化されていない中国人とつきあう必要がある.彼らが誰かを理解する事から始めなければならない。これからの日本には彼らとつきあいたくないと言う選択肢はない.65%の日本人は中国人を嫌いだと言っている.それは一般大衆だ.経営者はそれを変えて行く努力をしなければならない.そうしなければ、日本の将来はない.

明日は「模造品」だ。これも厄介なテーマだ.今日は1日忙しいので、考える時間が取れるかな.

swingby_blog at 05:19コメント(0)トラックバック(0) 

トラックバックURL

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星
 
 
 
プロフィール

swingby_blog

プロフィール

海野 恵一
1948年1月14日生

学歴:東京大学経済学部卒業

スウィングバイ株式会社
代表取締役社長

アクセンチュア株式会社代表取締役(2001-2002)
Swingby 最新イベント情報
海野塾のイベントはFacebookのTeamSwingbyを参照ください。 またスウィングバイは以下のところに引っ越しました。 スウィングバイ株式会社 〒108-0023 東京都港区芝浦4丁目2−22東京ベイビュウ803号 Tel: 080-9558-4352 Fax: 03-3452-6690 E-mail: clyde.unno@swingby.jp Facebook: https://www.facebook.com/clyde.unno 海野塾: https://www.facebook.com TeamSwingby
講演・メディア出演

最新記事
月別アーカイブ
Recent Comments
記事検索
ご訪問者数
  • 今日:
  • 累計:

   ご訪問ありがとうございます。


社長ブログ ブログランキングへ
メールマガジン登録
最新のセミナー情報を配信します。
登録はこちらのフォームから↓