2008年12月04日

今日は弊社の忘年会だ.いよいよ今年も終盤だ.

今日は3時に起きたので、このブログが長くなりそうだな.6時半には止めよう.読む方が大変だ.

昨日は大連ハイテクパークの開業式に行って来た.新宿住友ビルのワンフロアを東京の支店にしてしまうと言う大変なものだった.戴副市長も来ていた.さて、今日は恒例の忘年会で、この日が来ると、今年も終わりが近づいたなあと実感する. 毎年だんだん参加者が少なくなってくるのが気になるが、アクセンチュア時代の交友関係がかなり巾が広かったので、だんだん、親しい人たちに絞られて来たのかなあと言う感じがする.最近私自身が仕事一辺倒で、余計な活動ができなくなったせいもある。特に夕食会、昼食会の会合みたいな企画をしなくなった.何をするべきかがはっきりして来たのかも知れない.

ERP研究推進フォーラムの倉石 英一さんが以下のような私の本の書評を書いていただいたので、以下転載する.倉石さん ありがとう。ちょっと長いが、ありがたく、転載させていただく.


記事は、以下のURLから参照下さい。
http://www.erp.jp/center/ml/index.html
(2008/11/19発行の165号メールマガジンの「コラム」欄です)

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03:「コラム」■「BPO(Business Process Outsourcing)が企業にもたらす真の価値とは」
  
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 元アクセンチュア代表の海野恵一氏が最近上梓された「本社も経理も中国へ」(筆者の
旧知の方なので贈呈いただいた)は大変面白い本だ。題材はBPOだが、BPOに対す
る見方を根本的に変えさせる内容であり、これを題材に(本の紹介もかねて)BPOに
ついて改めて考えてみたい。

今やモノづくりの生産現場だけでなく、人事や総務・経理といったホワイトカラーの仕
事を海外にアウトソーシングする日本企業が急増しているのだ。 ジェトロによると、
コールセンターやソフトウエア開発といった従来から海外移管がさかんな業務も含める
と、その数はゆうに2500社にも上るという。 

目下のところ、これらの業務のアウトソーシング先の大半は、中国の大連である。
海野氏もBPOの拠点を大連に立上げた。もともとアクセンチュアは日本を含むアジア
11カ国のバックオフィス機能を中国大連市に集約させ、2003年3月に稼動させた。

アクセンチュアにはいわゆる本社と呼ばれるものが存在しない。世界中に役員がいて、
電話会議やテレビ会議でドキュメントをまわし、必要があればオフィスのある場所に集
まってミーティングを開く。そうした業務を続けるうちに本社と言う概念は消失した。
本社のバーチャル化で業務に不具合が生じたことは一度もないという。

海野氏の言うBPOの意義は、コスト削減とともに「会社組織と企業文化を全面的に改
革する」ことを可能にすることにある。コスト削減はあくまで副次的なもので、本社の
業務を外に出すことの狙いは別のところにある。つまり外注とBPOの間に明確に一線
を画す。

日本では、BPOといっても外注的な意味が強いものが大半だが、企業に危機感を与え
なければ本当のBPOとはいえない。「これは一大事」だという危機感から、会社に活気
が出てくる。これによって企業に変革をもたらすものだ。

特に中国(大連)のアウトソーシング 拠点では、日本語に堪能なスタッフを多数擁し、
本社から提示するマニュアルの誤りや不合理な部分を指摘しながら、自らやり方を変え
て例外業務を次々にそぎ落とし、最終的には仕事量のスリム化に成功してしまうという。

同時に、海野氏は日本(日本人)と中国(中国人)との付き合い方にまで踏み込む。
中国に進出する日本企業がなぜ失敗するか。それは、基本的に中国人を信用しないこと
に原因がある。中国に進出しながら日本という殻の中に閉じこもり、日本人のローカル
な基準で成長の上限を決めてしまい、溢れる中国のパワーと将来への上昇志向をつかみ
きれないのだ。これでは、単なるコスト削減にしかならず(しかも、近年中国の人件費
の高騰で、コスト削減効果も見込めなくなりつつある)、真のBPOに手が届かないのは
当然だろう。

この本には中国でビジネスに成功するノウハウが満載だ。簡単に言えば、イコールパー
トナーとして付き合うこと、とことん信用すれば相手も信用してくれる。中国人は一度
ほれ込んだ相手にはとことんついてくるという。

よく言われることだが、誠実さと実直さは日本人の最大の武器だ。これらの長所を世界、
特にアジアの中で認知されないと日本に残されたものは何もなくなる。海外でボランテ
ィア活動を行うNGO、NPOやイラクに派遣された自衛隊の行動に対する現地での高
い評価は、こうした日本人の資質に負うところが大きいのだ(こういうことが日本のマ
スコミであまり報道されないのは残念なことだ)。日本がアジアでリーダーシップをとる
ためには、この長所を生かすしかないといえそうだ。

話は日本人論に飛躍してしまったが、BPOの意味に立ち返ってみよう。ダブルパフォ
ーマンスな人材とは給与が同じで生産性が2倍の人材を指す。実は、中国にはこういう
人材がうようよいるという。語学教育など人材育成のしっかりしたシステムも持つ。
そのような優秀な人材を取り込めば、企業内に摩擦がおこり強烈なインパクトとなる。
結果として企業を変えることにつながる。

中国政府もサービス産業振興の柱としてBPO事業を重視しだした。 大連、上海など
11都市を指定してその誘致に力を入れ始めた。企業を変革する起爆剤となるBPOに
もう一度光をあててみるとともに、中国を見直すことも企業にとって重要なことではな
いだろうか。(倉石記)

注;海野恵一氏はアクセンチュアを退職後、2004年に「スウィングバイ2020」
社を設立し、代表取締役として主に中国におけるBPO事業に取り組んでいる。

以上が倉石さんの文章だ.ここから私の今日のテーマだ。

さて、今日は「見えない物に対するサービス価値」だ。このシリーズも長くなったので、なぜこの話をするのかと言う出だしはOECDの30カ国のうち日本の労働生産性は20位と言う事で、日本の生産性の悪いところを中国人と比較して、話をしようということだ。私はアクセンチュアに32年いたが、コンサルティングはサービス産業だ.まさしくこの見えない物に対するサービスだった.日本人は見えないものにお金を払わない習慣があった。

もう20年以上も前に話になるが、本社の改革の概要設計に5000万円の提案をしたら、一部上場企業の某社長に怒られたことがある.高すぎると言う事だった.見えないものに対してお金を払う習慣がなかったからだった..欧米ではごく当たり前の習慣だが、日本では今でも抵抗がある.さすがに昨今は外資系のコンサルの相場が普及して来ているので、今はあまりこうした事は大企業にはないが.以前は良くあった.

日本人は元来、こうした目に見えないもののサービス価値を評価しない。ソフトウェアに対する投資も同様だ.SAPは最近はコストが安定して来て、事例もたくさん出来て来たので、高いと言わなくなってきたが、20年前は高いと言われて、大変だった.化学企業トップ20社が導入してしまったので、既成の事実になったからだ.ようやく日本では見えない物に対するサービスに対してお金を払う習慣が出来て来たようだ。その第一番目の導入の時はアクセンチュアもビジネスにならなくて大変だった.

こうした日本人の慣習は日本だけだ.戦後、日本はもの作りで頑張って来た.日本の高度成長期以降の日本の成長は日本の技術力による製品が世界を席巻して来た.今でも、環境技術においては世界中のどこの国も日本が最先端の技術を持っていると評価している.ところがである.この最先端の技術を売り込むことができない.日本人は「正直」「真面目」「実直」「勤勉」「嘘つかない」と言うきわめて世界でもまれな価値観をもっている。実はこの価値観は日本人が世界に打って出る上ではきわめて希有であり重要な価値観であるが、これだけでは売れない.

海外に日本のこうした技術を売り込むための価値観を日本人は持っていないからだ.今までは目に見える商品が日本を支えて来た.これからは目に見えないものを売って行かなければならない.これが日本人には出来ない.日本人は海外に100万人が在住している.この人たちはそうした事が概ね可能であるといえる.問題は日本企業の本社である.そう言う価値観が本社の人にはない.

1920年代にアメリカ合衆国の販売・広告の実務書の著作者であったサミュエル・ローランド・ホールが著作中で示した広告宣伝に対する消費者の心理のプロセスを示した略語にAIDMAと言うのがある.AIDMAの法則では、消費者がある商品を知って購入に至るまでに次のような段階があるとされる。

Attention (注意)
Interest (関心)
Desire (欲求)
Memory (記憶)
Action (行動)

このうち、Attentionを「認知段階」、Interest、Desire、Memoryを「感情段階」、Actionを「行動段階」としている。
(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

これは顧客が商品を認知し、そして、関心を持って、次に欲しくなり、それが記憶にとどめられ、かうと言うアクションにでると言う購買行動を示したものだ.この一連の購買行動で、サービス・ビジネスにおいて日本人と中国人(ここでは一般的な常識の中国人ではなくグローバルな人たちと言うように読んでほしい.)とでは根本的に異なる.商品がものの場合には日本人でも中国人でも言葉はいらない.しかしながら、目に見えないサービスの場合には「あうん」は通じない.実は日本人がいつも中国人とつきあう時に誤解しているのが、日本人の「誠実」に基づいた「信用」であるが、これもまったく通じない.

このAIDMAでは感情段階だ.外国人は日本人の技術を認知してくれる.国際会議でも、イベントでも高い評価をしてもらえる.感情段階の関心も持ってもらえる.問題はその次だ.欲求と言うのはそのサービスを欲しいと思う行為だ.サービスを欲しいと言う事は当然その対価がいくらかも含まれることになる.ここからが、日本人の価値観が通用しなくなる.

再び、大連桑扶蘭時装有限公司董事長の鄒 積麗女史の言葉を借りよう.彼女の会社には3000人の社員がいるが、入社してくる社員は「顧客」とか「サービス」という言葉の考え方がすべて違うそうである.それをまず、入社して来た社員には徹底して共通した言葉の意味を教育するそうだ.こうした事は日本にはない.そうした教育が入社後も継続して行われる.そうした事が3年もすると、会社の内部に共通の文化が形成されてくる.

中国は異質の文化、慣習、言語を持った人たちの集合だから、こうした事は中国の企業にとってきわめて重要だ.彼女の会社はロイヤリティとチームワークをビジョンにしているが、そうしないと企業の総合力を発揮することはできない.ここが日本と違う.いや、日本だけが違うと言って良い.きちんと根気よく説明しないと通じないと言う事だ.それが中国人には当たり前として生活の中に定着していると言っていい.そこが日本人にはない.実は私はアクセンチュアでも同様の教育を受けて来た.アクセンチュアの内部の人間であれば、どこに行っても会話が出来る.異民族間のプロトコルを企業が作ってしまったと言う事だ.鄒 積麗女史も同じ事を実践して来た.

私の昔の専門分野だが、異機種間のデータ通信を実現するためのネットワーク構造の設計方針「OSI(Open Systems Interconnection)」というのがあって、それに基づいて通信機能を以下の7階層(レイヤ)に分割している。それを例にとって、この鄒 積麗女史の会社の教育とかアクセンチュアでの経験がどういうものか説明しよう.

第7層 - アプリケーション層
具体的なメールなどの通信サービスで、会話そのもの。
第6層 - プレゼンテーション層
データの表現方法で、どう言う言葉をつかうか。
第5層 - セッション層
通信プログラム間の通信の開始から終了までの手順で、接続が切れたら、どうつなぐかと言う事。
第4層 - トランスポート層
ネットワークの端から端までの通信管理(エラー訂正、再送制御等)。
第3層 - ネットワーク層
ネットワークにおける通信経路の選択(ルーティング)。データ中継。
第2層 - データリンク層
直接的(隣接的)に接続されている通信機器間の信号の受け渡し。
第1層 - 物理層
物理的な接続。

(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

この中身についてはここでは解説しないが、第一層は通信の物理的な線で、第七層が会話の出来るレベルを意味している.人間のコミュニケーションのプロトコルに似ているので、ちょっと引用したい.日本人のコミュニケーションはこの第一層からこの最も上層部にジャンプして、「あうん」のレベルで、行うことができる.単一文化、単一民族、単一言語だからである.

第一層から第六層までの手順が日本人間は決まっているから改めて定義の必要がない.実は中国人は第一層からの手順を踏まないと、お互いの会話が出来ない.何処の層においても行き違いが生じてしまう可能性がある.これがグローバルなプロトコルであり、ゴローバルでの常識になるが、こうした価値観は日本人には持ち合わせていないから、どうして良いのかわからない.

第七層から一挙に第一層に飛躍してしまう.こうした事は国内だけで言えば一見効率が良さそうだが、実は国内にあってもきわめて効率が悪い事は今まで述べて来ている.あらためて、こうしたグローバル価値観を我々は見直す必要がありそうだ.一挙に改めてしまう事は出来ない.「あうん」はコミュニケーションの仕方が楽だからだ.その仕掛けはBPOの世界で、粛々とやって行かなければならない.

だから、日本人と中国人とでは相手の胸襟を開くと言うプロトコルが違うのである.そこに金銭がからめばサービスの価値を金銭に替えて説明出来なければならない.日本企業がこれから求めて行かなければならないビジョンは目に見えない技術・サービスの販売だ.それをどう海外に販売して行くのかは現法であるにしても、そのビジネスの仕方を本社の人間が理解出来なければならない.

以上今日は「目に見えないサービス価値」をテーマに取り上げたが、明日は「サービス残業」だ。以上。

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プロフィール

海野 恵一
1948年1月14日生

学歴:東京大学経済学部卒業

スウィングバイ株式会社
代表取締役社長

アクセンチュア株式会社代表取締役(2001-2002)
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海野塾のイベントはFacebookのTeamSwingbyを参照ください。 またスウィングバイは以下のところに引っ越しました。 スウィングバイ株式会社 〒108-0023 東京都港区芝浦4丁目2−22東京ベイビュウ803号 Tel: 080-9558-4352 Fax: 03-3452-6690 E-mail: clyde.unno@swingby.jp Facebook: https://www.facebook.com/clyde.unno 海野塾: https://www.facebook.com TeamSwingby
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