2011年07月27日
ヨーロッパの債務危機2
Thus far, Mr Trichet has held his nerve in this high-stakes stand-off, and the ECB’s position may be reinforced by the appointment of Christine Lagarde as IMF chief; Ms Lagarde is reputedly "the most uncompromising opponent of a Greek debt restructuring among euro zone ministers". Despite opposition from voters, the path of least resistance for EU politicians remains to put off debt restructuring for a bit longer, and the euro zone could well muddle into a fiscal union.
今までのところ、Trichet氏はいちかばちかのにらみ合いに勇気を持ってきていて、ヨーロッパ中央銀行の立場はChristine LagardeをIMFの専務理事として指名したことによって、補強されるかもしれない。;Lagarde 女史は評判によれば、「ユーロ圏の大臣の中で,ギリシャの債務再編に対して、最も妥協しない相手である。」有権者の反対にも関わらず,EUの政治家にとって抵抗がほとんどない道筋は少し長い期間、債務の再編を延期しないでいることであり、そうすれば、ユーロ圏はまさしく財政統合へと混乱するだろう。
Lagarde 女史:G8最初のフランスの女性財務相
財政統合:財政統合トレード
これは金融市場に定着した、通貨統合トレード(Conversion Trade)という概念をパロディー化したものだと言える。財政統合トレードは通貨統合トレードの「通貨」を「財政」に置き換えた呼称だ。
それでは「財政統合」とは・・?
欧州連合(EU)は第二次大戦後、半世紀もの時間をかけてゆっくり地域統合を進め、ようやく共通通貨の制定に漕ぎ着けた。しかし現状ではEUは中央銀行は持っているが、欧州財務省に相当する機関は持っていない。それはEU全体の予算を策定したり資金調達したりする権限を持つ機関が欧州には存在しないことを意味する。
予算策定権や債券の発行を決める権限は今でも個々の国に帰属する。平たく言えば「通貨はユーロという共通通貨を使用しているくせに、国債の発行になると未だにギリシャ国債とかイタリア国債という風に個々の国が債券を出している」という状況がそれだ。中小企業より大企業の発行する社債の方が一般に信用力が高いのと同じ理屈で、発行体が大きければ大きいほどその債券の市場性 (marketability)は向上する。
このため「ギリシャ国債をやめて欧州共同債を発行しよう!」という事が若し決まったら、突然、ギリシャをはじめとする周辺国の問題などずっと小さいものになるし、通貨ユーロそのものも強くなる可能性がある。なぜなら流動性、市場性に優れたユーロ共同債は米国財務省証券と同等か、それ以上に魅力だと考える投資家が続出すると考えられるからだ。 また、欧州共同債を出すということは裏返しに見れば予算の策定権が各国から取り上げられ、欧州連合に集中することを意味するからこれは国家の主体性や民主主義のプロセスを脅かすものと見做されるため強い反発が見込まれる。
http://www.asyura2.com/11/hasan72/msg/472.html
とは言っても、結局は債務再編を行ったのだが、ここで言うような財政統合への道は少し大げさだといえる。注
Still, Mr Trichet’s gamble could backfire in the coming months—if, say, Greek citizens revolt against austerity and force a haircut on bondholders or European political leaders give in to public pressure. In that case, the ECB’s brinksmanship will have had disastrous consequences for itself and for Europe.
依然として,Trichet’氏の賭けは来るべき数ヶ月のうちに期待はずれに終わるかもしれない。ー ところで、ギリシャ市民が緊縮財政に反抗し、そして債権所有者にヘアカット(担保価値の削減)を強い、もしくはヨーロッパの政治の指導者達が大衆の圧力に屈するのであれば。 その場合にはヨーロッパ中央銀行の瀬戸際政策はそれ自体にとって、そしてヨーロッパにとって悲惨な結果に終わってしまうだろう。以上でこの記事は終わりだが、この記事は6月13日だが、その一ヶ月後には、トリシェ総裁のこうした意見とは裏腹に、ここで言う悲惨な結果としてヘアカット(担保価値の削減)が起こり、債務再編が起こり、部分的なデフォルトとなったが、彼が心配するような程ではなかった。
ギリシャ国債のヘアカットを21%にとどめることで当局と合意にこぎつけた。そのため、投資家の間では、損失規模が予想ほど深刻ではないとの安心感が広がっている。ヨーロッパ中央銀行は980億ユーロほどを保有しているため、206億ユーロ程度の損失が発生する。(引用:ロイター 11/7/22)
格付け機関のムーディーズは25日、ギリシャのソブリン格付けを「Caa1」から3ノッチ引き下げ、「Ca」とした。見通しは「検討中」。 新たな格付けの「Ca」は、デフォルト(債務不履行)とみなされる格付けよりもわずか1ノッチ高い水準。ムーディーズは、ギリシャ債は「事実上100%」の確率でデフォルトになるとの見通しを示した。(引用:ロイター 11/7/25)
金融に素人の人には私も含めて難しい内容だったが、この記事の意図は十分に理解できたはずだ。結果はTrichet氏がここで言うような結果にはならなかったが、予想した程の「悲惨な結果」ではなかった。明日はアフガニスタンだ。今日はこれまで。