2009年01月30日

「情報・人権に関する制限の問題」

「中国人権発展基金会の林伯承副会長は「中国国民の国民権と政治権は民主法制建設の中で保障されている。基本的文化権益はさらに実現されている。経済社会権利は社会建設の中で急速に発展している。中国人権の国際交流協力も平和発展の道程において大きな成果を果たした」と述べた。」(exiteニュース 2008年12月11日)

2008年は「世界人権宣言」60周年と中国改革開放30周年にあたる為にこうした発言があったが、中国は情報は制限されており、巨大な検閲システム「金盾」が稼働し、それに数千人が従事しているようだ.また、人権についても、チベット騒動に見られるように、相当制限された状態だ.こうした検閲にマイクロソフトとかグーグルの大企業が協力しているので、国際的な非難を受けている.彼らにしてみれば、協力しなければ、中国でのビジネスを阻止されてしまうので、行わざるを得ない.

この問題は共産党一党独裁を維持するためのものなのか、中国の今までの皇帝の仕組みを継続して来たからなのか、多民族国家を維持して行くためには必要なのか、昨日の地政学で言うアメリカの偽善の「人権」のカードは大きなお世話なのか.そうした事を今日は話をしたい.

「2004年11月には検閲されていない違法なインターネットカフェ1600店あまりを摘発し、更にはネット上で政府を非難する中国人を逮捕し、メールの文章も検閲している。GoogleやYahoo!、Microsoftなどの企業も政府の検閲に協力している。しかし、ネットやメディアが発展した都会では、諸外国からの批判を見ることがある程度できるようになっている。2006年6月、中国のインターネット人口は1億2300万人に達した。」(ウィキペシア)

インターネットはそのアクセス人口も領域も驚異的に拡大しているので、検閲を仕切れない領域が出て来ているのも事実だ.中国政府はアクセス出来る領域、項目を仔細に限定しているが、以前あった反日運動がネットによって広がった時には政府はそれを押さえることができなかった.煽動をネットで煽ることはできても、沈静化することはできない.携帯電話が3億まで普及して来ており、また、3Gが導入されて来ているので、政府はこの世界まで干渉出来ない.

「2004年には韓国人の議員らが脱北者に関する記者会見を中国国内で行おうとした際、中国政府により強引に記者会見を解散させられることがあった。諸外国の報道機関は、中国政府に対して「報道の自由が保証されていない」として非難しているが、中国政府は「これが中国の文化である」と主張している。」(ウィキペディア)

100年以上も前に排日運動(日貨排斥)が数多くあったが、その目的は日本の政治的・軍事的侵略と並行して,多数の日系工場が設立されるなど,大規模な「経済侵略」があり,それに抗することにあった。第1回目の対日ボイコットは1908年,日本商船の第二辰丸が鉄砲94箱,弾薬40箱を密輸しようとして清朝に拿捕された際,日本は日章旗侮辱問題にすりかえて、賠償金を支払わせたことにある。

この屈辱外交に対して対日ボイコット運動が広東・香港中心に華南一帯で闘われた。こうした排日運動は1931年の第9回まで続く。この期間にイギリス、アメリカに対する排斥運動もそれぞれ一回ずつあった. 実はこうした20世紀初頭頃には人権問題も情報操作も日常茶飯事であった.清帝国はこうした日本の圧力に屈して、賠償金を払っている.対華21か条もこのころだ.この件は来週だ.

「中国の死刑執行 3ヶ月で1781人」(ダライ・ラマ法王代表事務所のHP)は以前話をしたが、人口が多いのかも知れないが、死刑執行の人数が世界の9割が中国で、執行までの期間が極めて短い.人間の命の軽重を問うことはできないが、死刑は多すぎる.なぜだろうか。

「2005年に炭鉱事故は3341件で、死者は5986人。炭鉱事故が頻発している中国では、地方政府や企業の安全意識を高めるために、2006年から、事故の発生状況が地方幹部の出世の考課対象に加えられる見通しとなった。」(サーチナ  2006/01/06)

「人命を軽視し、法律も無視して、違法生産を行うものは、厳罰に処す」「官民癒着や不正な利益供与に対しては、中国共産党の監察部門とともに厳しく取り調べる」と言ったことを言わない限り、いや、言っても、こうした事故は一向に減らない.そもそも、これは人命に関わる安全基準以前の問題で、事故件数を地方幹部の幹部の考課項目にいれると言う事自体が異常だし、中国では人命が軽いとしか言いようがない.

「後漢末から五胡十六国時代(304-439)の戦乱や豪族による土地兼併によって土地を失った農民は流民となって各地をさまよい、あるいは豪族の奴婢となった。このことを放置すれば、国家が直接支配する土地と人民を減少させ、軍事面での破綻や税収の減少にともなう国家財政の破綻を引き起こすことになるので、各王朝は何とかして豪族の大土地所有を抑えようとして様々な対策を行った。」(http://www.wind.ne.jp/khari/hist/keizu-3,3koku,tou,10koku.html)

この時代から中央政府と地方政府の葛藤があり、農民は奴婢であり、「奴婢は、一般的に職業の選択の自由、家族を持つ自由、居住の自由などが制限されており、一定の年齢に達したり、その他の条件で解放される場合もあった。しかしながら基本的には家畜と同じ扱いであり、市場などで取引されていた。明・清代にも奴婢は残っていたが、基本的に私奴婢が中心であり徐々に廃れていった。しかしながら19世紀には、代わりとも言えるクーリー(苦力)が現れた。これらの制度は中華人民共和国の成立で正式に廃止される。」(ウィキペディア)

ところが、何千年も奴婢として扱われて来ていたので、中華人民共和国となって、彼らが解放されても、その生活レベルが大きく変わったわけではない.また、昔からの習慣、風土、文化は容易には変えられない.しかも、彼らが解放で得た農地は極めて少ないものだ.それが今の三農問題だ.

「奴婢(ぬひ)は、律令制における、良民(自由民)に対する賤民(自由のない民)の中の位置づけの一つであり、奴隷階級に相当する。」(ウィキペディア)とあるように、良民と賤民と言う階級制度が今はないが、そうした残滓が歴然と残っている.工場で働く女工が良い例で、彼女たちの中には上昇志向を持っている人は1000人に数人しかいない。現状に満足して、3年したら、国に帰って、結婚すると言うパターンだ.

抑圧されて来た歴史があるから、彼らに修学意欲、出世意欲を持ったものは少ない.そうした背景があるから、先ほどの炭坑のような話が出てくる.人種差別であり、人権軽視となる。それがこうした人権の問題で、これが「中国の文化だ。」と言わしめているのかも知れない.

日本にも奴婢制度はあったが、日本の奴婢制度は、律令制の崩壊と共に消滅し、900年代には既に奴婢制度の廃止令が出ている。だから、日本人はこうした差別された階級を知らない.アメリカではキング牧師が暗殺されたのは1968年であり、黒人と白人のバスの乗る部分が分かれていたのはこのころの事だ.だから、アメリカの人種差別廃止も未だ40年しか経っていない.

「反日活動における中国政府の関与については見解が別れる。西側諸国においては中国政府が情報操作、もしくは一時的に故意に報道管制や言論の自由を緩めることで「反日活動を事実上行わせている」との見解が多い。」(ウィキペディア)

また、「ワイルドスワン」とか「中国農民調査」は販売されていない.また、基本的に宗教の自由はあるが、新興気功集団「法輪功」の弾圧事件は周知だ.基本的に戸籍は移動出来ない.特に大都市は移動の制約が多い.農民工が1億2600万人もこうした都会に働きに出ているが、かれらの社会保障、居住、教育が保証されていないため、問題が多い.政府が農民工に都会に出てくるなと言う事はもはやできない.そうしたことから、この戸籍制度はもはや限界に来ている.

最近は人権問題と言えば、チベット騒動があげられている.インターネットもチベットの問題についてアクセス出来ない.チベット動乱が1956年から59年に起こり、ダライラマ14世はインドに亡命した.1959年〜1961年に中印戦争。1965年に、西蔵自治区が成立した。

「2006年に「青蔵鉄道」が全線開通したが、その9月30日に、ネパール国境地帯でヒマラヤ山脈を歩いていた子供を多く含むチベット仏教徒ら数十人に対し、人民解放軍兵士が銃撃を加えた。先頭と後方部を歩いていた2名(うち1名は15歳の少年)が死亡、数十名らが行方不明となった。」(ウィキペディア)このビデオはYOUTUBEでみることができる。(http://jp.youtube.com/watch?v=-6Fu2FNBFAU)勿論この映像は中国ではアクセス出来ない.

「国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」(本部・ロンドン)は1日、中国の人権問題に関する報告書を発表した。この中で北京五輪を前に国際オリンピック委員会(IOC)や世界の指導者らがチベットや北京で行われている人権弾圧に「暗黙の了解」を与えていると厳しく非難するとともに、中国当局に対して人権状況の改善を迫るよう強く求めた。」(産経ニュース 2008.4.2)

さて、情報規制だが、以上いくつか述べて来たが、報道の自由はない。また、インターネットも規制されている.しかしである。日本企業は主に、上海、北京、大連で日中間のビジネスをしているが、ビジネス上はその支障はない。弊社は大連にBPOセンターを持っているが、日中間での情報の規制は今までないし、問題もない.

規制されているのは政治的なものとか教育上好ましくないものとか上記の人権に拘るものだけだ.よく中国はこうしたカントリーリスクがあるから中国へのビジネスの展開に躊躇している企業が多いが、ビジネス面での支障はこの特定分野以外は全くない.どちらかというと地方政府との利権、企業との「信用」に関連した問題は五万とある.そのために弊社はその解決のビジネスをしている.できれば、問題を起こす前のビジネスを支援していると言った方が正しい.

明日は「不公正であると指摘される裁判制度」だ。これこそ中国の縮図だ.何でもありで、公正も不公正もある.また、利権と収賄もある.政治もからむ.きりがないが、中国を理解する上では裁判制度は無視出来ない.昨年の12月28日に「恣意的な法制度の運用」とその前日に「経済法制度の未整備」を書いているので、そっちの方も参考に。

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海野 恵一
1948年1月14日生

学歴:東京大学経済学部卒業

スウィングバイ株式会社
代表取締役社長

アクセンチュア株式会社代表取締役(2001-2002)
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海野塾のイベントはFacebookのTeamSwingbyを参照ください。 またスウィングバイは以下のところに引っ越しました。 スウィングバイ株式会社 〒108-0023 東京都港区芝浦4丁目2−22東京ベイビュウ803号 Tel: 080-9558-4352 Fax: 03-3452-6690 E-mail: clyde.unno@swingby.jp Facebook: https://www.facebook.com/clyde.unno 海野塾: https://www.facebook.com TeamSwingby
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