2009年01月29日

「地政学上での周辺国」

「地政学とは、地理的な位置関係が政治、国際関係に与える影響を研究する学問で、地理的な環境が国家に与える政治的、軍事的、経済的な影響を巨視的な視点で研究するものである。歴史学、政治学、地理学、経済学、軍事学、文化学、宗教学、哲学、などの様々な見地から研究を行う為、広範にわたる知識が不可欠となる。また、総合的な研究がまだ行われていない未熟な学問である。

世界各地には生存適地と資源地域が局地的・不平等に存在しており、それに関連して人口密度も国家発展の度合いも一律ではない。人間の適応能力は限定的であるため地域の特性は人間の行動への影響には一定の法則性が存在することは歴史を見ても明らかである。近年は人口増が急速に地球規模で進み、各国の経済発展によるエネルギー需要が増加し、また国際関係は様々な問題に直面しつつある。」(ウィキペディア)

これが地政学の定義で、中国はここに書いてある通り、人口が増大し、人口抑制をしているが、産業の発展にエネルギーの供給が伴わない.そのため、現在はその資源を求めて、アフリカを中心として世界中に展開している.そのため、そうした国々との様々な摩擦と国際非難を浴びている.

また、中国の歴史を見てみると昨日も話をしたように清の時代(1644年から1912年)に広東省、福建省の人たちが南方に新たな生活の場を求めて移民している.インドを除いた東南アジアのすべての国々の経済はこうした移民の祖先の華人がその90%を握っていると言われている.

また、この地政学としてこの中国は大陸国家で、しかも、アメリカ、ドイツ、インド、フランスとは異なり、長い歴史の中で、内戦の連続ではあったが、終始、一貫して統一されて来ている.この中国は西は砂漠、北はタイガの不毛地、南は山脈に囲まれた「生存適地」であり、今でも「資源地域」ではあるが、石油のように枯渇して来ており、海外にその資源を求めている.

地政学では「交通地域」という用語を持ちいて、資源をどのように入手するかを重視する.かってはシルクロードがそれであり、現在は石油資源の運搬経路となる、マラッカ海峡、スエズ運河、ジブラルタル海峡であり、最近はソマリア沖の海賊に中国は軍艦を派遣している.ついでに、航空母艦の必要性まで便乗している.

また、中国は食料は基本的に「自給自足」が可能であるが、農民の一人当たりの耕作地が日本の3分の一と小さく、7億の農民を農業に従事させることはできない.そのため、3億の余剰人員が発生し、2億2600万人が農民工として出稼ぎに出ている.今回のアメリカの金融恐慌で、最も被害を受けているのはこの農民工である.労働人口も含めると自給自足経済ではない.輸出の相手先がないと内需だけでは毎年の1000万人の新規労働力を養えない.

中国は「シーパワー」と対比して、「ランドパワー」があるとされ、「ランドパワーとは「陸上のさまざまな権益、経済拠点、交通路などを支配、防衛するための陸軍の能力や陸上輸送力、陸地の加工力(土木技術や農業技術など)などを含めた総合的な陸地を支配・利用する能力である。」(ウィキペディア)地政学ではこの「ランドパワー」を持った国家が「シーパワー」を持つことはできないとされているが、最近、中国が航空母艦を製造しようとしている動きがあるが、この地政学上の法則に反している.

「ハートランド」とはシーパワーの影響がほとんど皆無であるユーラシアの中央部から北部に広がる地域を指し、「リムランド」とはランドパワーとシーパワーの接触地域である中国東北部から東南アジア、インド半島、アラビア半島を経てヨーロッパ大陸にいたる長大なユーラシア沿海地域を指す。(ウィキペディア)だから、中国はリムランドになる.

「マッキンダーは1900年代初頭の世界地図をユーラシア内陸部を中軸地帯(ハートランド)、内側の三日月地帯(リムランド)、外側の三日月地帯とに分け、『東欧を支配するものが、ハートランドを支配し、ハートランドを支配するものが世界本島(ワールド・アイランド)を支配し、世界本島を支配するものが世界を支配する』として、独ソ戦を予言した.」(ウィキペディア)

この地政学ではマッキンダーのような学者がたくさんいるが、日本ではあまり多くないようだ.この地政学には法則があるが、その是非はともかくとして、なるほどと思うところがあるで、WorldWar2 Onlineと言うゲームがあるが、そこから以下引用する.


 「地政学10箇条
        
  第1条、国際政治は自国の生存と繁栄のみを目的とする。
     国家とは常に、自国の安全と利益を考えて行動すべきだ。
     国益よりも自身の利益を考え行動した指導者たちの多くは
     「売国奴」の名の下に失脚する。
        
  第2条、国際関係は手段を選ばず、損得だけで考える。
     国際政治においては、生き抜くことが最重要課題であり
     良い行いをしても、殺されてしまっては元も子もない。
        
  第3条、善悪、道義は擬装の道具である。
     生き残るためには、善悪に関係なく手段を選ばない。
     所詮善悪は、自身を正当化したり、相手を非難したりする
     だけの道具だ。
     現在、「人権カード」はこれのもっとも最たるものだ。
        
  第4条、隣接する国は敵国である。
     隣接していれば、互いに利害関係でぶつかる事も多く、
     どんなに友好関係を築こうとも、潜在的な敵対国である。
     そもそも、真に仲が良く対立点などが無ければ、
     2つの国ではなく、当然1つの国として成り立っている。
     また君主論の著者マキャベリも「隣国を援助する国は滅び
     る」と言っている。
        
  第5条、敵の敵は戦術的な味方である。
     隣接する国を恐怖させる敵が存在する場合、
     その脅威を退けるまでは、敵国であったとしても手を組む
     ことが出来る。
        
  第6条、敵対していても、平和な関係を作ることはできる。
     敵対しているからと言って、
     自国の利益が得られるのであれば、
     平和的な関係を築くことも可能だ。
        
  第7条、国際関係は利用できるか、利用されていないかで考える。
     国家は自国の利益のためだけに動きます。
     その為には、自国が有利になるように、
     世界各国はいかに他国を利用を考えている。
     他国をいかに利用するか?
     そして、他国が自国を良いように利用していないか?
     国家の指導者たるもの、それを考えて行動すべきだ。
        
  第8条、国際関係を2国間だけでなく、多国間的に考える。
     世界では多くの国が複雑に入り組んでいる為、
     自国の利益拡大が国の権益を損なうという事も珍しくない。
     国際政治は、当事国である2国間だけでなく、
     多国間的に考慮し、行動しなければなりません。
     日清戦争後の三国干渉は、この顕著な実例だ。
        
  第9条、決して他国を信用してはならない。
     他国は常に油断のならない相手であり、利用しても信用
     してはいけない。
     他国は利益拡大のために、虎視眈々と自国の隙を狙っている。
     チャーチルは「我が国以外は全て仮想敵国である」と語り、
     キッシンジャーも「国家に真の友人はいない」と言っている。
        
  第10条、科学技術の発達を考慮する。
     多くの人間は、自身の経験から対策などを考えるが、
     科学技術の進歩は恐ろしく速く、それを常に考慮しなけ
     ればならない。
     マジノ戦や大艦巨砲主義も、教訓となる。
        
  補項、優れた陸軍大国が同時に海軍大国を兼ねることはできない。
     陸にも、海にも、両方に巨大な資金を投入できない事から、
     1人勝ちする超大国が現れた場合、
     必ずしも、この限りとは言えない。」

さらに、「外国を利用出来るか考える。
     自国が利用されているのではないかと疑う.
     油断しない。
     「友好」を真に受けない.
     徹底的に人が悪いという考えに立つ.」
    
    (地政学名言集 一部修正加筆 2008年09月25日)

ここでは日本人の価値観を否定している.いわば、グローバル価値観を国家レベルで見るとこうなるのかも知れない.日本人の価値観とは「真面目」「正直」「勤勉」「嘘つかない」ということと武士道がある.背中から敵を撃たないのは日本人だけだ.グローバル価値観がこのベースにあるが、それすら日本人は持ち合わせていない。地政学はこれからの日本人にとっては必須科目だ。

アメリカが中国に「人権カード」を使うが、第3条の「善悪は擬装の道具である。」と言うことになり、中国が日本に使う「靖国問題」もこの類いだ.日本は援助がスキだ。マキャベリは「隣国を援助する国は滅びる」と言っている。大連にODAで作った研修センターは未だ3年ぐらいしか建っていないが、昼間は電気が消えている。研修の都度利用しているが、10億も投資する価値があったのか、はなはだ疑問だ。こんなことをしていたら確かに国が滅びる。

第5条の「敵の敵は戦術的な味方である。」日本、アメリカにとっては台湾がその政治的な利用価値があると言う事だ.補項の「優れた陸軍大国が同時に海軍大国を兼ねることはできない。」は中国の事かもしれない.日清戦争の清の軍艦に「定遠」「鎮遠」という立派な軍艦があったが、結局、当時。発展途上国の日本の海軍にまけてしまった.また、戦前の日本の海軍と陸軍の予算の均等分割がそれにあたる。尾崎學堂先生がいつも嘆いていた.

中国は強大な軍隊を保有している。総兵力224万人、予備役約50万人、他に人民武装警察66万人(2007年)。このうち海軍は兵力約28万人しかいない。近代化を進めてはいるが、旧式装備の数の方が多い。弾道ミサイル搭載原子力潜水艦2隻、攻撃型原子力潜水艦の漢型を4隻(稼働1隻のみ)ということで、2004年に日本の領海を侵犯したと言うのはこのうちの一隻だ.日本の報道は大騒ぎしたが、大したことはない。日本はやっぱり平和ボケしている。

だから、中国が航空母艦を建造しようが、どうってことはなさそうだ。海軍はきわめて脆弱だ.陸軍は中越戦争で1978年に侵攻し、直ぐに撤退はしたものの、昆明軍はベトナムの山岳地帯を90年代まで占領し、中国軍の実践の場としてさんざん利用してきた.だから、陸軍は強い。

実はこうした地政学は中国の歴史そのものだ.36計がこれにあたる。

第一計 天を瞞して海を渡る    第二計 魏を囲みて趙を救う
第三計 刀を借りて人を殺す     第四計 鋭気を養い疲れた敵にあたる
第五計 火を見てこれを奪う    第六計 東を指して西を撃つ
第七計 無中に有を生ず       第八計 暗かに陳倉を渡る
第九計 対岸の火を見る       第十計 笑いに刀を隠す
第十一計 李は桃に代わって枯れる 第十二計 手に順って羊を牽く
第十三計 草を打って蛇を警む    第十四計 屍を借りて魂を返す
第十五計 虎を山から誘き出す    第十六計 捕らえるために暫く放つ
第十七計 煉瓦を投げて玉を引く   第十八計 賊を擒えるには王を擒にせよ
第十九計 釜の底から薪を引く    第二十計 濁り水に魚を捕らえる
第二十一計 金蝉脱殻        第二十二計 門を閉じて賊を捉える
第二十三計 遠交近攻        第二十四計 道を借りてカクを伐つ
第二十五計 梁を盗んで柱を換える 第二十六計 桑を指して槐を罵る
第二十七計 醒めていて痴を装う   第二十八計 屋根に梯子
第二十九計 樹上開花        第三十計 客を転じて主となす
第三十一計 美人計         第三十二計 空城計
第三十三計 反間計        第三十四計 苦肉計
第三十五計 連環計         第三十六計 走ぐるを上計となす

36計の中身についてはここでは説明しないが、日本人は中国人に以上の策のどれか2つを組み合わされて、仕掛けられたら決して見破る事はできない。中国のドラマ「首富」はこの策略ばかりを使っている。中国人にとっては日常茶飯事の策だ。私の妻の母親はこうしたドラマを毎日見ているから、こうした問題の解決能力は極めて高い.

22の省の他に、4の直轄市(北京、天津、上海、重慶)、5の民族自治区(内蒙古、広西チワン、チベット、寧夏回族、新彊ウイグル)及び2の特別行政区(香港特別行政区、マカオ特別行政区)がある。これらの省級地方すべてに幾つものテレビ局があり、歴史大河ドラマを無限に制作している。24時間見ても見切れる数ではない。しかもそのほとんどが人脈ネットワークがらみの歴史大河ドラマだ。

さて、ロシアとかアメリカはいわば先にあげた「ハートランド」で、中国は「リムランド」になる。マッキンダーのような話は昔の事だから、世界を制覇するのはどうのということはないが、今の中国は周辺国がたくさんあるが、地政学上は中国は生存適地に存在し、地理的に国が守られている.地続きで侵入するのに障害のない国はロシア、北朝鮮、ベトナムだけであり、ほかは山岳地帯、砂漠に阻まれている.

日本との関係は海を隔てているために、元寇があったように、大陸間弾道ミサイルがある現在でも、北朝鮮に侵入するようには行かない.また、先ほど示したように、中国は海軍がきわめて弱い.地政学で言えば、シーパワーがない.海軍で攻めて来れない.

台湾は違う。中国側が台湾攻撃用ミサイルを1000発配置している。距離が近いからだ.また、金門島は中国大陸から最短でわずか2kmの位置にある中華民国の領土で、厦門は台湾の高雄市から306kmだ。ちなみに、福州から日本の最南端の魚釣島までは420km、魚釣島から那覇までは同じく420kmで、魚釣島から台湾までは190kmで、石垣島までは175kmだ。

石垣島へは、沖縄・那覇空港より約1時間毎に1便、計10往復運航しており、那覇まで1時間かからない.那覇空港は自衛隊との共用空港であり、かつ那覇空港の北東約20kmには米軍管轄の嘉手納飛行場がある。中国、台湾に近いので、ビジネスの要衝になっても良いのだが、今は、軍事の重要拠点だ.img046この図は桜井よし子ブログより転用した。また、宮古島の近くにパイロットの訓練用の飛行場がある下地島の安全保障上の価値をどう判断するかは地政学上興味のあるところだ.

プロイセン首相・ビスマルクが大久保利通らに語った言葉によると「今、世界各国はみな親しく交わっているように見えるが、それは全く表面的なことで、本当のところは弱肉強食であり、大国が小国を侮るというのが実情である。 例えば国際法というものがあっても、それは大国の都合で存在するものであり、自国の都合のいいときには国際法をふりまわし、自国に都合が悪くなるときには軍事を用いる。小国は実に哀れである。国際法の条文を一生懸命に勉強し、他国に害を与えること無く自国の権利を守ろうとしても、大国というものは国際法を破る時には容赦なく破る」 (参考文献・『米欧回覧実記』地政学名言集 2008年09月25日 )

100年前のはなしだが、地政学も所詮こうした事が今でも通用しそうだ。北朝鮮もこの地政学10か条から照らしてみると、北朝鮮のスポークスマンの言っている事はまったく信用せず、格の廃棄についての6カ国協議も徹底的に北朝鮮を信用せずに、悪い連中をどう扱うか、自国の利益のみを考えて、打算で、交渉するべきと言う事になる。

平和的な関係は維持しているが、所詮敵国で、援助などは考えては行けない。善悪抜きで、手段を選んではいけない。ということになる。自国の繁栄と生存を考えれば、今のテポドンのレベルであれば心配するに値しないのかも知れない。拉致問題は日本の朝鮮総連の送金の金額と拉致の人質の金額を相殺すれば良いのかも知れない。それ以上他に関わる必要は日本にはない。

中国はどうかというと、北朝鮮は資本主義国との緩衝地域だと言う事以外にはなさそうだ。となると崩壊しないように適当に管理していれば、良いと言うことになる。生かさず殺さずと言う事かも知れない。ビジネスの上でのメリットはなさそうだ。多少の資源があるが、アフリカに比べれば比較にならない。

明日は「情報・人権に関する制限の問題」だ。これもいろいろありそうだ.ただ、問題は難しくない。

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プロフィール

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プロフィール

海野 恵一
1948年1月14日生

学歴:東京大学経済学部卒業

スウィングバイ株式会社
代表取締役社長

アクセンチュア株式会社代表取締役(2001-2002)
Swingby 最新イベント情報
海野塾のイベントはFacebookのTeamSwingbyを参照ください。 またスウィングバイは以下のところに引っ越しました。 スウィングバイ株式会社 〒108-0023 東京都港区芝浦4丁目2−22東京ベイビュウ803号 Tel: 080-9558-4352 Fax: 03-3452-6690 E-mail: clyde.unno@swingby.jp Facebook: https://www.facebook.com/clyde.unno 海野塾: https://www.facebook.com TeamSwingby
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