2008年12月

2008年12月31日

「知的財産権の保護、模倣品の問題」

年末にこのようにブログを書く事はちょっと気が引けているが、中国ではこの年末年始は正月ではない。我が社も大連、上海は営業している。勿論日本企業向けの現場はもうお休みだが。私もそうした影響を受けで、テレビ番組のように浮かれてはいない。今こそ、中国の事を整理して、勉強する良い機会だ。BPOがなぜ日本企業に必要か。なぜ中国がグローバル化を理解してほしい。今日も知財だ。2日までこうした課題の話をしたい。

昨日、ルイ·ヴィトンの商標権の話をしたが、中国法院網(2008年12月1日)のニュースで、ようやく判決が出て、王氏が「路易威登」といった商標権を使用することを禁止した。王氏が商標登録したのが、2002年だから、丸6年の歳月がかかってしまった。(JETRO)王氏にしてみればこの期間で、衣料品のポケット、タグ、生地に使用していた意匠を使えたので、彼の事業を立ち上げることができたわけだ。

6年間もルイ·ヴィトンが彼の起業を後押ししたって事になる。中国は法の「公正と正義と自由な競争」になっていない。判決が出ても、処罰の対象にならないと言う事はいかにもおかしい。また、こうした企業がいくらでも出てくると言う事だ。ましてや、この中国では資本主義と自由主義すら十分に浸透せずに、市場経済が発展して来てしまった。

市場経済に移行してから20年もたっていない。国の法整備とその体制が追いつかないのは当然と言える。さらにこの国は中央政府、地方、個人の3者の関係が複雑に絡み合い、昔から、どうお上の「政策」に対して、「対策」するかと言う事を国民はいつでも考えている。日本人のように問題が起こってからどうしようかと言う「対策」ではない。

いつでもどう対策しようか考えている。日本人はこうした事をいつでも考えている習慣がないから出来ない。こうした習慣は一見疲れそうだが、産まれた時からそう言う習慣なので疲れない。こうすればああする。ああしてくればこう対応する。ということを何手もお互いに読んでると言う習慣の事だ。4手、5手先まで読むと言う事は大変な事のようだが、この中国人には朝飯前だ。だから囲碁が強い。

日本が本格的に中国に工場を出して来たのは天安門事件のあった1989年以降だ。この十数年の間にあっという間にGDPが3位になってしまったし、購買力平価で換算すると、5000万人が日本と同じレベルで生活していることになる。日本が戦後60余年で構築して来たものをその4分の一の期間で達成したことになる。そこには環境問題もあれば、地域格差もひどい。こうした状況の中での一つの課題が知識財産権の問題だ。

日本企業が中国に進出して来て、未だ日が浅いが、このビジネスにおいても、膨大な研究開発費を使って来た日本の製品が安易に大量にコピーされてしまった。そのコピーされた商品も訴訟している間に十分に競合できるようになってしまった商品がたくさんある。そうした商品は数え上げたらきりがない。被害額については10億円とも10兆円とも言われているが、政府機関はその数字を控えている。いくらだか出せないのだろう。

そうしたなかで、テックフェイスのよう会社が雲霞のごとく躍進して来た。携帯電話の開発企業で、携帯電話は日本で開発すれば50億円から100億円かかる。こうような中国企業に開発を依頼すれば、10億円ですむ。うまくすれば10分の一で開発できることになる。テックフェイスがこうした犯罪を犯して来たわけではない。一方で、今の中国ではこうした機会が数多くあり、こうした企業が数多くあると言う事だ。

いつの間にか日本の技術に拮抗して来ている企業が出て来た。保守的で、スピードの緩慢な日本がこのままでは躍進する中国に追い越されてしまう。中国を一つの国家と見ては行けない。GDPで見ては行けない。年間成長率で見ては行けない。この国に平均でものを見る事は意味がないからだ。知的財産権もそうした見方をしなければ行けない。


日中の知財の関係はというと、中日知的財産権交流発足30周年を記念するイベントが2008年12月8日、東京で開催された。中国国家知識産権局の田力普局長、高盧麟元局長、日本特許庁の鈴木隆史長官をはじめ、180人以上が出席した。中国国家知識産権局(SIPO)と日本国特許庁(JPO)による第十五回長官会合で、双方が両庁人材育成機関における協力の強化、工業所有権情報のデータ交換に関する合意文書に調印した。(国家知識産権局網 2008年12月12日)(JETRO北京)

この30周年と言うところが傑作だ。1978 年は中国経済は厳格な計画経済から市場経済へ転換が始まった年だ。2007年とこの1978年のGDPを比較すると中国は68倍にもなった。文化大革命は1976年の毛沢東死去に伴って終了した。 そんな時代から知的財産権交流が始まっていたと言うのだから、驚きだ。その当時の北京にはネオンサインがない時代だ。みんな人民服を着ている時代だった。この年に日中平和友好条約が調印された。日本では新東京国際空港が三里塚で有名な新左翼各派も加わった激烈な反対運動を押し切っての開港だった。

さて、日本の自動車メーカーは中国では組み立て以外の部品加工技術は中国には持って行かないと言って来ているが、もうすでに精密機械加工のマシニングセンターが中国に移行されて来ている。そこの下請けメーカーの経営者はそうでもしなければ、こうした精密機器のオペレーターが日本ではもう確保できないと言っていた。制度を計測する最小単位がマイクロメートルと言っていたが、そこまでの精度を要求されるそうだ。そうなると何百台ものマシニングセンターをオペレーションできる人材が日本でもう確保できないそうだ。

そうなると、このオペレーターが辞めて、違うところに行けば、そうした精密機器のオペレーションは出来てしまう。こうした技術の流出は明日のテーマなのでこれ以上話はしない。どこまで模倣、盗用を阻止するのかはすべて例外なく阻止するべきであると昨日言った。昨日はCDのような安易にコピーできるものは阻止しようがないと言ったが、コピーできない技術を開発すれば良いのであって、今のように簡単に解除できない技術を開発するしかない。そうすれば、この問題は解決できる。そうしない限りこうした問題は中国では決して解決できない。

日本が中国の法律を知らないが故に訴訟で負けてしまうケースもあったし、また、訴訟を起こして勝訴をしても、その勝訴までの期間が長過ぎる。そうしたゆゆしき問題に対する外交政策が日本はへただ。「クレヨンしんちゃん」はまけても諦めるべきではないし、ルイビトンは日本の企業ではないから、世界中の企業と政府がこの6年は長すぎると考えている。

日本人はこうした時のリーダーシップがとれないし、世界各国と連携して主導的な立場をとることができない。最も得意な環境問題でも日本は主導権をとれない。環境のCOP(気候変動枠組条約における締約国会議(Conference of Parties))の会議で日本人は意見を言えない。そこに問題がある。2008年11月に開催されたG20緊急首脳会合の記念写真を見ればよくわかる。胡 錦濤はブッシュの隣だが、麻生さんは端っこだ。(日経新聞 小宮隆太郎 私の履歴書)最近どれもこんな調子だ。これは言葉の問題ではない。相手を理解していないからだ。

対中国政府に対して、EUとかアメリカが動いてくれるのを待っている。中国は2006年にWTO加盟後の保護期間は終了している。知的財産保護に対する圧力は日本からだけの問題ではない。「中国は発展途上国ですから」という文言に騙されては行けない。いまや、日米欧と同じ先進国家だ。環境問題では中国はいつでもインドと同様な発展途上国であり、日本もそうした事を認めて来ている。それ自体がおかしい。

たしかに、中国の急成長ですべての事が錯綜し、法律も不整備だが、それどころではない。環境、人口、食料、燃料、貧困すべてどれをとっても、解決すべき課題ばかりだ。しかも拝金主義の中国だ。仕方がないとか、多めに見ようと言うのはおかしい。こうしたことは中国が世界から国際的な信頼を得る上での必須の緊急課題だ。彼らもそう思っている。

中央政府はこの知的財産権の保護に対しては日米欧に対してのフェアな認識は十分にもっている。しかしながら、中国もミニワールドだ。日本のように法律をたてに統治は出来ない国だ。中国では税金をごまかすことはどこの企業でもやっている。だから取り締まりようがないので、増値税のような間接税が7割を占めている国だ。先ほど言ったように、国の「政策」に対して「対策」は国民のお手の物だ。知財も取り締まりようがない。

海賊版のCDはコピーできないようにするしかない。中国では海賊版でないと欲しいものが手に入らない社会になってしまっている。中国人のモラルに訴えても意味がない。こうした模造品に対するモラルは日本人とは違う。中国政府はこうした模造品に対する取り締まりを自ら行うだけでなく、地方政府にもこうした取り締まりを行わせてはいる。彼らはやっているのだが、本音ではない。取り締まれないと思っているからだ。

日本政府、日本の団体がいくら抗議しても言っている事は正しいがその効果はきわめて疑わしい。中国人もコピーは悪いと思っている。税金をごまかす事は悪いと思っている。たぶん、これは宗教観から来るのかも知れない。仏教、キリスト教は人が見ていなくても悪い事をしては行けない。道教は人が見ていなければ、悪いことをしてもとがめられない。違ったかな?確証はないがそうだと思う。もし道教でなければ、中国人の価値観だ。

アメリカ人は人権問題で、いつも中国政府を責めている。中国には確かに言論、報道、信仰、表現、居住、裁判の自由がないか制約している国だ。アメリカはこうした事にたしては執拗なまでにフェアだ。知的財産権についても同様なアクションをしてきている。日本はこうしたアメリカのやり方を学ぶ必要がある。私はアメリカは偉大なローカルな国だと言って来ているが、このようにフェアなところもある。

海賊版の製造は最も重い刑で、無期懲役だそうだ。仮に死刑になってもきっとこの中国ではなくならない。模倣品は金になるからだ。収賄がなくならないのと一緒の論理だ。中国では死刑になっても収賄はなくならない。だから、こうしたCDの製造もなくならない。こう言う事に国民は寛容だ。こうした問題には問題が起こらないような対策しか方法はない。コピーは出来ないような技術を開発するしか方法がない。

JETRO北京知的財産権部に偽物写真館と言うのがあって、(http://www.jetro-pkip.org/photo.htm)とんでもない数の模倣品が展示されているので、一度見てみると面白い。裁判をして、勝訴しても、大した成果を得られない。さらに次から次へと模倣品が出てくる。地方保護主義の話もしてきた。日本は日本人の感性で、日本人の感覚で、こうした知財の問題を扱ってしまうといつまでも解決できないと言う事を我々は理解しなければならない。中国人の目線がどうあれ我々は理解しなければならない。

明日は今日の続きで「技術・ノウハウの流出」だ。大晦日になってしまった。明日は正月だ。相変わらず、この正月は知財だな。中国人を理解する事は大変な事だが、日本人にとっては必須科目だ。だから、BPOをやっている。そうしなければ、いつまでたってもこうした課題は解決できない。中国人の深層心理まで入り込まなければ、こうした課題は解決できない。

お屠蘇気分で、中国人はどういう人たちかを考えてみるのも面白い。彼らは日本人とは違うところはグローバルな環境に揉まれも揉まれて来ていると言う事だ。いま、映画ではやっている「レッドクリフ」は三国志だ。三国志は、中国の後漢末期から三国時代にかけて群雄割拠していた時代(180年頃 - 280年頃)の興亡史である。こんな昔の話だが、中国人の孔子の教えは2500年たっても変わらない。不思議な国だと言うほかない。

古事記は、和銅5年(712年)太朝臣安萬侶(おほのあそみやすまろ)、太安万侶(おおのやすまろ)によって献上された日本最古の歴史書だそうだが、誰も読まないし、高校受験で終わりだ。そう言う中国と我々は縁を切ることはできない。だとすれば、徹底的に関与するしかない。少なくとも、徹底して理解する必要がある。日本はこうした分析はあまり得意ではない。日本の政府はアメリカ政府のように調査していない。中国だけと言うわけではないが、ランド研究所が有名だ。

今日は休みのせいもあって、大分書いてしまったが、この正月も書くつもりだ。仕事が始まると、あまり勉強ができない。今しかないと思っているので、是非つきあってほしい。40歳から中国語を始めた。言葉よりもこうした中国人の価値観が歴史に依存している事から、その奥が深い。13億の国が一つの国家を昔から形成して分解しない事が不思議でしょうがない。そうした国は世界中何処にもない。インドは有名なタージマハールを作ったムガール帝国ですらわずかに100年で、1612年にはオランダ東インド会社がチェンナイの北プリカットに商館を構えて以降、没落して行った。今のインドは各州の人的な交流はなく、国として統一されているが、中国のような人の移動はない。

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2008年12月30日

「偽ブランド品の商標登録問題」

偽ブランド品の販売については以前話をしたことがあったが、今日は「偽ブランド品の商標登録問題」だ。昨日は珍しく、どこにも行かなかった。一日中、このブログの資料を調査していた。こうした調査をしていると、つくずく中国のことについて何も知らないんだなあと言う事に気づいた。世の中は広い。

正月まで知財関連だ。今日はその初日になる。商標登録は昔からある問題だ。2003年6月に中国の業者が中国商標局に「青森」出願申請をして、それに対して、青森県が異議を申し立て、2008年4月にその出願を却下。その間5年もかかっている。「青森」だから、直ぐに審議して結論を出しても良さそうだが、これだけの時間がかかっている。「本場奄美大島紬」に至っては出願してから登録された2000年までに12年もかかっている。以前話をしたように審査員も少ない。

また、「松阪牛」は2006年に出願したが、それは中国の業者が「松坂牛」で登録しているからだ。実に紛らわしいと言うか、賢いと言うしかない。また、台湾で、「青森」ではないが森に似た漢字で、中国語しかないが「水」を三つを書いて森みたいな漢字にして申請しているものも有った。

JETROによると、2007年末までに30の府県と都市の名称が商標登録または申請されているという。すでに秋田、長野、愛知、京都、熊本など19の府県と川崎市が商標登録され、静岡、広島、福岡など8県と名古屋市、横浜市が現在申請中となっている。商魂が逞しいと言うよりかは、審査する以前の問題であり、受理する事自体がうたがわしい。

また、こう言うのもある。「ルイ・ヴィトンの中国名である「路易威登」を、2003年に中国国内で商標登録した人物がいる。湖北省武漢市のビジネスマン、王軍氏だ。「路易威登」の意匠権を国家知的財産権局に申請し、承認された。その結果、中国では法律上、ルイ・ヴィトンの方が「路易威登」の意匠権を侵害しているということになり、本家の方が偽物というおかしなことになった。ルイ・ヴィトンは北京市の裁判所に意匠権承認の決定取り消しを求め提訴したが、判決はまだ出ていない。

かまわず王氏は、武漢に工場を建設し中国「路易威登」として、ルイ・ヴィトンの3分の1の価格でバッグなどを販売すると宣言している。首をかしげるのは、中国メディアの一部に「王氏の行動は、高級ブランド ルイ・ヴィトンを大衆ブランドにする」との肯定的論評があり、市民の間にも称賛の風潮があることだ。日本貿易振興機構(JETRO)の知的財産権部は「中国の地方では、偽物を製造する企業が大量の雇用を創出し、高い税金を納めて地域経済に貢献していることから、地方政府の担当官が本気で摘発に動かない事情もある」と指摘する。」(産経ニュース 2008年3月15日)

先ほどの大島紬の商標登録に12年もかかっているから、このルイ・ヴィトン意匠権の抹消に対しても、数年はかかるので、十分に商売にはなりそうだ。ましてや、この王さんを報道や市民が支持している向きもあるようだが、情けないはなしである。商売だから何でも良いと言うものではない。特に日本人には武士道精神があり、背中から敵を討たない風土がある。であるから、こうした事は到底理解できない。

一方で、「日本企業による中国古典小説関連の商標登録に対する異議を申し立てによって、2008年11月19日、コーエー、コナミら日本のゲーム会社が申請していた三国志など中国古典小説関連の商標10件が棄却された。」(Record China) これなんかは夷狄である野蛮人の日本人に三国志を使わせてたまるかと言う中華思想が影響しているのかも知れない。

「2007年6月12日、中国国家工商総局 李副局長によると、2001年の世界貿易機関(WTO)加盟以来、工商行政管理機関は19万3332件の商標権の侵害を摘発、うち海外企業の商標権を侵害した案件が2万8041件を占めるという。摘発後、司法に裁かれた案件も774件にのぼり、778人が罪に問われた。これらの数字は累計のものだが、2006年だけを取り上げても、252件が裁かれ、263人が罪に問われているという。 」(Record China)

中国政府のこうした発表は興味津々だ。こんなにまでしているという中国独特のアピールだ。いつも日本人はこれに騙されてしまう。「我々は発展途上国ですから」の類いだ。こんなにまでしているのだから、そのうちに解決するのだろうと言う具合に日本人は考えてしまう。私はここで中国政府の悪口を言っているのはない。日本人がとろいと言っているのだ。世界は中国のこうした発言の方が遥かに多い。日本人が純粋だと言う事だ。「馬鹿正直」と言う方が適当かも知れない。

さらに、中国の地方保護主義は甘く見たら行けない。かってに商標登録をされるだけでなく、不服審判に対する拒否、理不尽な買い取り要求、中国側からの商標権逆提訴などあらゆる理不尽な手を使ってきてもこの地方保護主義にひっかかってしまうと保護されてしまう。だから、この地域閥が絡んでくると手に負えない。

「2008年11月6日、温州網は浙江省温州市の企業がバラック・オバマ次期米大統領の商標を申請していたと報じた。 商標が申請されたのは2007年3月14日、1年半以上も前のこと。温州市永嘉県の靴製造業者が、ベルト、衣料、子供用衣料、スポーツシューズ及び帽子などの分野で、「アメリカ・オバマ(中国語で美・奥巴馬)」の商標を申請していた。今年7月17日、30日には温州市の別の企業家が、ビール、コーラ、スポーツ器具分野で「オバマ(奥巴馬)」の商標を申請している。」 (Record China)

このオバマの商標登録は実に1年半も前だ。李副局長の言っているはなしとは裏腹にこうした申請は衰えるところを知らない。クレヨンしんちゃんの件は以前取り上げたが、仔細は以下のとおり。

「1997年、中国の企業数社がクレヨンしんちゃんの絵柄や中国語名「蠟筆小新(ラービィシャオシン)」で勝手に商標を登録したため、双葉社は中国国内で「蠟筆小新」の商標名でのキャラクターグッズ販売ができず、「Shinchan」の商標名での販売を余儀なくされている問題が発生している。

2004年に双葉社が衣料品などのグッズを中国で販売したところ、公式商品にも関わらず商標登録の影響で「コピー商品」として店頭から撤去される事態が発生した。2005年1月双葉社は、第三者の商標登録が有効であるとした行政の判断は間違っているとして、中国の行政を相手に北京で行政訴訟を起こしたが、2006年9月に中国の北京市第1中級人民法院は訴えを退けた。この判決を受け、双葉社は北京市高級人民法院に控訴した。

中国語名「蠟筆小新(ラービィシャオシン)」で商標を登録した、中国の企業の1社は、双葉社との話し合いの席上にて、双葉社に対し 『この商標を譲渡する』 と双葉社へ申し出た。 しかし「日本円で約14億円(一説には約20億円)で買い取れ」などとの内容だったため双葉社は拒絶した。この商標権侵害の問題を解決しようとせず、中国側は「蠟筆小新(ラービィシャオシン)」の商標を未だに使用し続けている。」(ウィキペディア)

「商標申請がされて、公開した後、所定の期間中に誰からも異議申し立てがなければ登録許可になる、いわゆる先願主義に基づく仕組みは、どこの国でもほぼ同じだ。また、中国企業が商標権を獲得してから8年もの間、双葉社が何もしなかったことが、中国企業の正当な権利を印象付ける結果になっている。」(http://washimo-web.jp/)

この商標権の問題は中国ではこうした申請に数年もかかる事からどんなことをしてもなくなることは絶対にない。だから政府は上述したような事は言うがそのアクションは形だけであり、取り締まることはできない。5年も行政訴訟にかかるのであれば、商売が十分に成り立ってしまう。法を犯しているわけでもない。日本の特許庁が「異議申し立て」とか「無効取り消し請求」をすれば良いと言っているが、上記のように5年もかかっている。勿論そうするべきだが、こうした問題は解決しないと言う事だ。

日本の政府とかそれなりの団体が中国のこうした諸機関、諸団体に商標権の侵害で、法的な対処を依頼し、中国政府が上記のような回答をしてくる。依頼する方もこうした問題が決してなくならないと言う事を認識して依頼しているのであれば、それなりにグローバルなプロトコルにそっていると思うが、そうではなくて、真剣にこうした問題を解決しようとしているのであれば、井の中の蛙になってしまう。問題の対処方法が違うと言う事だ。

商標権侵害はかならずあり、それに対しての対策は異議申し立てであり、無効取り消しだと言う理解が正しい。外面として、商標権侵害はなくすべき云々と言う議論が正しい。あくまでも、外面上であり、本心からそのようなことを言っても、意味がない。「真面目」に「偽ブランド品の商標登録問題」に対応しては行けない。きちんと法的に対処し、異議申し立てが受領されるまで待つしかないのである。

社会正義と言う視点からはいくらこれが商売になるとは言っても、本来、許されるものではない。こうした問題は法と正義とが矛盾してしまう事がある。これも仕方のないものだと片付けては行けない。「路易威登」として販売していれば、ルイ・ヴィトンの販売を止めろとは言えない。このケースはどこかで判決が出れば、社会正義が勝つことになるが、クレヨンしんちゃんのケースでは法的に勝てない可能性がある。

経済法は以前にも話をしたように、「公正かつ自由」な取引と競争という理念に基づくものであり、このようなものは公正であるとは言いがたい。法に則っていても、公正でないものは社会正義のもとに制裁を受けるべきであり、こうしたことは政府も経営者も放置するべきではない。クレヨンしんちゃんのようなケースは公正とは言いがたい。

「偽ブランド品の商標登録問題」はこのように経済法の根本である公正と言う視点から追求すべきであり、商標権の登録自体に問題の視点を振り向けては行けない。何度も言うが、中国は白黒でもない、灰色のビジネスが多い。この灰色を白か黒に色分けしようとしてもできない。日本人は得意ではないが、灰色そのものの中の何を公正であるとか公正でないとかの議論をしなければならない。

そうしなといつまでたってもその灰色が白とか黒にはならない。白星は相撲で言う勝ち星だが、中国の世界ではこの勝ち負けが明確でないものが多い。小平が白猫でも黒猫でもネズミを捕るのがよい猫だと言ったが、本当は中国は灰色の猫ばかりだ。ネズミみたいな猫もいるから始末が悪い。それが中国だし、世界だ。日本が狭すぎる。

明日は「知的財産権の保護、模倣品の問題」で、今日の続きになる。

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2008年12月29日

「会計制度・税制の不備および運用の不透明性」

「会計制度・税制の不備および運用の不透明性」が今日のテーマだが、その中から、増値税と移転価格について話をしよう。連日こうしたテーマばかりなので、読者が辟易している事は想像に難くない。札幌の河関さんが言ったように、読む方も苦行に近いかも知れない。本来であれば、今日のテーマは中国に関与する経理部長しか読まない。私のここでの意図は私自身がこうした専門家でもないし、読者もこうした専門家ではない人を対象にしている。様々な角度から中国が如何に泥臭くグローバルに活動しているかを示したいがためにこうして書いている。是非そこのところを理解してほしい。説明も出来る限り、平易に書いているつもりだ。まずは言葉の定義から。

増値税
中国内で物品の販売、輸入、加工、修理を行う企業に対して課税されるもので、94年から導入された。税率は17%(農産物など一部は13%)となっている。増値税の計算は、販売税額から仕入税額を控除する。輸出を行う外資系企業は当初、原材料の仕入税額分について還付を受けることができることになっていた。(中日金網)

移転価格税制
企業が海外の関連企業との取引価格(移転価格)を通常の価格と異なる金額に設定すれば、一方の利益を他方に移転することが可能となる。移転価格税制は、このような海外の関連企業との間の取引を通じた所得の海外移転を防止するため、移転価格を、通常の取引価格(独立企業間価格)を用いて所得を計算し、課税する制度。(財務省)

この2つの制度が最も不備で、不透明だ。マブチモーター大連の元総経理だった大熊さんは以前、この増値税が何時還付されるのかわからないと嘆いていた。製品を輸出する場合にはこの税金が還付されるからだが、なかなか還付されない。2006年6月頃当時のソニーの中国総代表だった高篠董事長に移転価格の件で何度か打ち合わせをしたことがあったが、移転価格の設定はかなり恣意性があるので、各国の税務との調整が大変だと言っていた。移転価格はこの中国に限った事ではないが、この2点が一番不透明のようだ。我が社はこうした問題に対して得威の郭偉董事長と提携していろいろな税務のサポートをしている。

特に税務は細則が日本のように完備していないので、属人的に判断されているようだ。しかも、中国にいる日本企業は他の欧米の外資と相談しないので、徴税で、日本企業だけがターゲットになり易いといつも言っていた。それに日本人はお上に弱い。郭偉さんは自分の所有の接待所と宿泊施設をもっている。私の毎月行っているGLT大連研修で、そこの場所を利用している。日本の税務と違い、中国の税務はこうした恣意性が高いので、外部から遮断されたこうした場所が会議に必要なのかも知れない。

さて増値税だが中日金網によると「この税をめぐってはいろいろとトラブルが多く、本来満額返ってくるはずの還付税率が95年に14%と変更され、96年には9%にまで引き下げられた。さらに97年からは輸出額の8%に課税するという、輸出企業にとってより大きな負担を求める内容に変わってきている。これは還付制度を悪用する企業があって、一時は納付税額よりも還付請求額の方が多かったということが起こったための措置のようだ。

増値税の取り扱いは、地域によって相当異なっている。華南地域の一部では最初から徴収そのものを行わないところがあるようだが、還付がなされていないケースはかなり多いようだ。97年の最新の方式に関しては、上海市や隣接する浙江省、江蘇省で税務局が新方式での納税申告を通達したが、実際の納税状況は地域や企業によって様々だ。企業にとって納税・還付の有無は採算に大きく影響してくるだけに、運用基準の明確化が望まれるところだ。」

と2000年の記事に書いてあったが、今でも変わりなく、増値税の税率が頻繁に変わり、還付率も変更になり、不正還付問題と輸出増大に伴う還付負担のよる恒常的な財源不足を招いているようだ。さらに還付税率調整が人民元の切り上げ圧力と絡んで、そこに政策が入り込んで来ている。

「この増値税は全税収の5割を占めており、中国ではそのほかの営業税、消費税といった間接税もあわせると全税収の7割になる。日本の税体系は所得税が中心で、法人税、所得税と言った直接税が全税収の6割になっており、中国と対照的だ。中国では、企業所得税、外国企業等所得税の割合が低くなっている(合計で14%程度)が、特に外国企業等が納付した企業所得税は全税収の3%余りとなっている。この外国企業等の税収割合が低いことは、外資導入を進める政策として外国企業等に対して各種の優遇税制が設置されていることが主な理由の一つであると言われている。そして、そのことが外国企業に対する優遇税制見直しや企業所得税と外国企業等所得税の統一の動きにつながっているわけだ。

また、世界の多くの国で税収の柱の一つとなっている個人所得税の割合が、中国では今のところ著しく小さいものとなっている(7%)。ここ数年、個人所得税の税収は急速に増加しているものの依然として税収に占める割合は小さい状況だ。そのため、今後、個人所得税が制度上も執行上も注目を集めることになる。なお、日本では、所得税と言えば個人所得税を指すが、中国をはじめ多くの国では所得税は個人所得税と法人所得税(日本では法人税)を合わせた意味として理解されている。」(中国日本商会 2003年)

以前にも話をしたが、日本企業と違って、中国企業は利益を正確に申告している企業は殆どいない。だから、こうして、間接税である増値税が税の中心になって来ている。輸出をすれば、税金が還付されたり、減額されたりするが、その還付も遅延が累積したりしている。この遅延も恒常的な財源不足が原因だと言うし、また、不正還付が後を絶たないようだ。日本では到底考えられない状況だ。

さて、移転価格の話を今度はしよう。この増値税とは異なり、移転価格は2国間の国際2重課税の問題がある。この移転価格は日本から中国に輸出する時に中国の子会社を支援するために安い価格で輸出すれば日本の国税から脱税だと言われてしまう。逆に中国の子会社から日本の本社に安い価格で、輸出をすれば、今度は中国の国税から、脱税だといわれてしまう。まずは事例から見てみよう。

「ここ数年、日本の大手企業が税務当局から移転価格税制に伴う追徴課税を受けるケースが続いている。2005年度に追徴課税が100件を超え、指摘された申告漏れ総額は2836億円に達した(日本経済新聞調べ)。これは、法人に対する申告漏れ総額の20%にも相当する、と言われる。
2008年4月には、ホンダが中国の4輪事業に係る合弁企業との取引に関係し、2006年3月期までの5年分の取引について、総額1400億円もの申告漏れを指摘された。これによる追徴課税額は800億円近いとされている。この金額は、2006年に武田薬品工業が追徴課税された570億円を上回り、決定すれば日本企業で史上最高額となる。」(日経 NB Online 2008年7月28日)

この事例は日本の国税からの追徴にケースだが、先ほどのソニーの話のように中国から日本に安く輸出する場合には今度は中国の国家税務総局が課税してくる。

「中国国家税務総局から調査を受けた企業は、1991年から10年間に8000社を超え、その大半が所得更正を受け入れている。 国・地域別に見ると、日系、台湾系、香港系企業の割合が高く、なかでも日系企業が追徴課税されるケースが多く、欧米企業は少ない。 日系企業の課税が多い理由は、多くの日系企業は権限を本社に集中し、関連者間の取引価格を親会社が決める。そのため親会社が意図的に所得移転を行っているとの印象を与えやすい。中国の移転価格税制による追徴課税は、件数は多いが1件当たりの平均課税所得額は約1,000万円である。」
(2006年2月のジェトロの通商弘報 一部抜粋)

日本の国税庁は中国国家税務総局と二国間事前確認提携をしているので、日中両国の税務当局から認可を受ける制度で、認可されれば移転価格調査を受けなくてすむ事になるが、この移転価格制度は未整備かつ不透明と言えそうだ。2006年の後半に移転価格に関して税務当局からの一斉調査があると言う情報を入手したことがあるが、それが半年以上延期になった。その理由は領収証の虚偽発行脱税事件の調査で、300人以上の調査官がその事件にかり出されたので、移転価格の調査が延びたとの事であった。中国ではこうした領収証の虚偽発行脱税事件も頻繁にあるようだ。

中国国家税務総局ホームペーシにはそうした記事が出ているようだが、中国人はともかく金を払いたくないと言う価値観がある。また、お上に対する対応は日本人とは全く違い、従順ではない。例外はなぜかわからないが、大連は政府も含めて従順のようだ。大連が日本びいきだからと言うわけでのないと思うが、中央政府に対しても従順だ。脱税について少し引用したい。

日本:5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金(脱税額が500万円超の場合は、その相当額)又はその併科
中国:脱税行為、増値税専用伝票に関する不正、税務執行の妨害等に対しては、脱税額及び行為の悪質度合に応じて罰金及び懲役刑等、重い刑罰が適用される。特に、増値税専用伝票の偽造やそれに伴う不正還付については、国家財産の横領行為そのものであり、納税者自身の納税額を隠匿する脱税より一層重い犯罪として考えられているようであり、厳しい刑罰が規定されている。そして国家に与える損害が重大である場合には、死刑、無期懲役刑も規定されている。ちなみに、第一財経日報の報道(06.5.8)によると、94年以降現在までに200人余りに対して死刑判決が出され、このうち100人余りに対して死刑が執行されているとされている。
(中国日本商会 伏見俊行教授)

昨日も書いたように、中国では死刑が多いようだが、この脱税でも死刑が適用だれているようだ。ここまでするのは一向にこうした脱税が横行しているからだ。一方では中国には31の省・自治区・特別市を始め、市、県、郷 鎮、村というさまざまなレベルの地方政府がある事を忘れてはならない。家族閥だけでなく、こうした地域閥もある。こうした脱税には様々な組織と人が絡んでくる。

また、こうした死刑を逃れるために様々なところから様々な賄賂が飛び交うことになる。それで、地獄の沙汰も金次第と言うことになってしまうから不思議だ。こう言う事も日本では考えられない。捕まりそうになったら、即座に香港に逃げると言う事をどこかの電機メーカーの人に聞いたことがあるが、本当だ。捕まってしまうとどうなるかわからない。何人日本人が捕まっているかもわからないのが現状だ。そう言う点では中国は自由主義国とは違う。

わかり易い例はこうした下位レベルの地方政府が土地を開発する。もともと土地は農民から買い上げたものだからタダみたいなものだ。それが工業団地に化ける。そうなると取引単価が1000倍になる。2,3年もするとさらに数倍に跳ね上がる。それを払い下げる時に半値で払い下げても、値段の動きが激しいので、何が不正かが見破れない。売る方も買う方もそれがわかっている。

私はそう言う売買に関与した事がないが、相当の頻度で行われているが、何が不正か、何処までが不正かはきわめて把握しにくい。勿論そうした統計もあるわけがない。今の地価自体がいくらなのかも正確には把握できない。先日、札幌に言った時に河関さんがご尊父の遺産相続で大変な思いをしたと言う話を聞いた。1993年のバブルの崩壊で、その前後の不動産価格の暴落と路線価が連動しないために納税価格と売却価格がとんでもなく乖離していたからだ。税務署はとんでもなく高い路線価で遺産相続税を計算してくるが、地価がもうすでに暴落しているので、そんな値段ではすでに売れない。

まさしく、今の中国がそうだ。政府が評価する不動産価格と実勢は地域、日時によってとんでもなく乖離しているに違いない。だから、何が正しいかわからない。そこで取引をする人たちが金に聡くなるのは当然かも知れない。これが中国だ。還暦で、すべてが保守的な日本では理解できない世界だ。でもそれが躍動するアジアの世界だ。日本こそが例外だ。日本株価が暴落したと言っても、この1年の中国の株価の暴落は数倍も変動幅が大きい。いろんな人がいろんな理由をあげているが、その本質は確定できない変数が日本より多いことだ。その変数自体も、時間軸、地域軸とは別に人々の思惑が絡んで、相互に関連性をもたずに動いて行くから変動幅がでかくなってしまうのだろう。

明日は「偽ブランド品の商標登録問題」。知的財産権保護の問題については以前も取り上げたが、この問題は深いので、数日間のテーマとして取り上げたい。

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2008年12月28日

「恣意的な法制度の運用」

昨日はやっと大変なおもいをして札幌から戻った。今日は「恣意的な法制度の運用」なので、昨日から頭が固まっていた。シナリオをまとめるのは大変だ。実はいつも書きながら考えている。こうしたテーマが連日続くが、事前に整理ができないテーマだ。まずは明らかに恣意的だなあと言うところからはなしを始めよう。善し悪しは別にして、下記の引用は恣意的な法制度の運用としてはわかりやすい死刑執行の例だ。

「中国は死刑執行数を公表していないが、中国社会科学院法学研究所のLiu Renwen氏によれば、2005年の執行数はおよそ8,000人としている。またアムネスティ・インターナショナルは、2004年の執行数を少なくとも3,400人と推定、これは世界における死刑執行数の90%に相当するが、他の人権擁護団体はさらに多いと見ている。」「中央政府による犯罪撲滅運動など犯罪発生率の抑制を求める政治圧力の中で、地方裁判所は恣意的な判決を下す結果となっていると分析している。」(北京IPS=アントアネタ・ベツロヴァ、2006年3月30日)

「死刑は、暴力犯罪だけでなく、贈賄、売春の斡旋、横領、脱税、ガソリン強盗、有害食品の販売等の多様な犯罪に関わり、」「2001年7月6日、アムネスティ・インターナショナルが発表したところによると、中国は過去3ヶ月に1,781人を死刑にし、中国を除いた国々で過去3年間に執行された死刑の合計件数を上回った。」(ダライ・ラマ法王日本代表部事務所 2001年7月6日)

中国は人口が多いだけでなく、様々な人種、階層、文化が錯綜しているから、「逮捕された数万の容疑者、および告訴や裁判がないまま「労働による再教育」へ従事させられた数千の人々は、これらの集会で見世物になった。」というのはうなずける。正確な統計がわからないので何とも言えないが、そうしても犯罪が減少しないのだろう。その他に明確なのは今まで話して来た地方保護主義がある。引用が長いが下記に一例を示す。

「H社(外国企業)と厦門 D社(中国企業)は、合弁事業を営んでいたが、あるとき企業 の運営を巡って紛争が生じた。H社 は合弁契約の紛争処理条項に基づき、中国国際経済貿易仲裁委員会(CIETAC)に仲裁 の申し立てをした。H社の申立の内容は、合弁契約を終止し、法に基づき事業実施中の 債務の支払はすべきであること、また、債務支払を容易にするため、合弁契約において 被告D社が合弁企業資するとした工場建物の使用権を移転せよというものであっ た。CIETACは原告勝訴の仲裁判断をした。」

「 しかし、D社はこの仲裁判断を任意に履行しなかった。そこで、H社はD社の所在地で ある厦門市中級人民法院(人民法院は、裁判所のこと。以下、「法院」という。)に仲 裁判断の強制執行を申し立てた。この裁判で、被告は執行に対して異議申立をした。そ の申立の内容は、工場建物は20年前に野菜畑に誰かによって立てられたものであり、 不法な建物であり、被告は所有権を有していない。従って使用権の移転はできないとい うものであった。」

「法院は、CIETACの仲裁判断は正しくないと裁定した。その理由は、 CIETACは十分な証拠によっておらず、工場建物は合弁企業に出資し得ず、判断の承認 をしないというものであった。 この法院の裁定が公正であるかについて、はなはだ疑問である。D社は20年間もこの 土地を占有し、工場を建設し生産活動に従事している。この土地の使用料を土地管理局 に支払っていないのであろうか。この法院の裁定が出たあと、D社の当該土地の不法占 拠は解消されるのだろうか。依然として従来通り使用し続けるのではないだろうか。H 社とD社の合弁契約は対外経済貿易機関の認可を得たものであるが、D社に当初から詐 害行為があったことになる。法院は、地方企業を保護しようとしたのではないだろうか といった疑問が生じる。 」
(中国での事業におけるリーガル・リスク・マネージメントに関する調査報告書  国際協力銀行 中堅・中小企業支援室 2005年1月)

こうした話は収賄が絡んで、よく聞く話である。今まで話をして来たように、裁判官もこの地域の人だ。中国の信用の絆は家族閥が第一で、その次が地域閥だ。この地域に住んでいる以上はここで言うD社である厦門の会社を守ることになる。無茶苦茶な判決だが、裁判官も人の子だと言うことだ。それに反日感情が交じって来たらもっとひどくなってしまう。津上さんのブログから一つ有名な例を引用しよう。

「東芝のノートブックパソコンには、設計上の問題があり、メディア報道によれば、東芝は、米国のユーザーに対して10億ドルの賠償金を支払ったという。さらに「東芝は、米国のみに賠償金を支払い、中国のユーザーにはこれを行なわなかった。」とのことであるが、なぜ東芝は、中国のユーザーを侮辱するようなことをしたのだろうか。」(津上俊哉氏ブログ 2001年3月1日)

民族問題、歴史問題、中国の歴史教育などと絡み合って、2カ月間、政府調達からの同社製品のボイコット、8カ月間のメディアからのバッシングに遭った。 こう言う事も多々今まであった。「政冷経熱」といっても、そうはいかないのが現実だ。知的財産権問題も地方保護主義が絡むと問題が解決できなくなってしまう。重慶のヤマハ発動機が良い例だ。ヤマハ発動機は、中国の2輪車メーカー「天津港田集団」が作った模造品を巡る民事訴訟で2002年に勝訴しているが、長い時間がかかった。ホンダも同様だ。

このように話をしてくると中国はとんでもなくダメは法制度の国だと言うことになるが、そんなことはない。ダメなところは賄賂とか地方優先主義とか日中歴史問題とかはとかくこうした恣意性が入りやすい。また、明日の課題だが、税務のように日本企業はとりやすいので、日本企業だけを責めてくる事が多い。先ほどの判例はほとんど無茶苦茶だが、それに対抗するためには地域閥の人脈で対応するしか方法はない。日本人の弱いところだ。それではないフェアな判例を示そう。高速道路の騒音の判決を国際協力銀行の報告書から引用したい。

「2002年6月、北京市の豊台区に住む一人の小学校教師が、地域の交通騒音がひどく、正常な仕事、 生活ができず、かつ窓が開けられずに、ついには仕事を休む状態になったとして、北 京市首都公路発展有限公司に騒音から生じた損害の賠償、補償を求めた。要求内容 は、窓を2重にせよ、室内の騒音が昼間は60デシベル以下にし、夜間は45デシベル 以下にせよ、損害賠償3,000元を支払え、騒音被害に対して毎月60元を補償せよとい うものであった。

これに対して被告は、騒音公害は同社の責任ではないと主張した。この根拠は、高速 道路は国の交通計画に基づく重要な政策であり、計画および建設は合理的である。北京市の京石高速道路建設計画時の交通量は5,000台/時であるが、現時点でこの計画 の範囲内であったということである。
判 決 被告は、原告に損害賠償せよ。」

こうした判決には恣意性はない。行政の味方をしていない。北京は空気が汚いので、尚更環境問題に社会の関心が高い。環境汚染については昨日も述べたが、法制度においても、地方優先主義との葛藤はあるにしても、まともは判例は出ている。「人治」国家と言われるだけあって、一般大衆の眼はだんだん無視できなくなって来たと言えよう。

何処に恣意的なものが入ってくるのかをこの中国では企業、個人が見極める必要がある。法律の判断は司法に任せれば良いと言うのはこの国でなくても問題だ。経済法のところで「公正かつ自由」な取引と競争という理念といったが、判断するのはあくまでも裁判官で、彼も人の子だと言う事だ。どういう事かと言うと、ともすれば、「理念」ではなく、法律にそっているから、公正でなくても正しくない判決を下すと言う事もあり得ると言う事だ。

日本でもそう言うことはあるが、中国での違いを我々はここで理解してほしい。恣意的と言う事は裁判官が自分の意志で法制度を正しいか間違いかは別にして、利害を斟酌して、結論を左右すると言う事だ。その際の裁判官がたっている場所が中国の場合多岐にわたると言う事に他ならない。日本の場合にはそうした判断の場は一つしかない。地方裁判所と最高裁判所とは一つの社会からなっているし、法の目をくぐって悪いことをした人間に対して裁判官が公正でない判決をしても責められない。

この中国では中央政府と地方政府とは管轄が異なり、裁判官は異動がない。また、裁判官の判決のプロセスにおいて、日本のように法律が守られているかどうかと言うだけの要因で論理が構築されない。その要因が何かを裁判する被告、原告は十分に斟酌しなければならない。先ほど地方優先主義と言ったが、中国には31の省・自治区・特別市を始め、市、県、郷 鎮、村というさまざまなレベルの地方政府がある。日本の都道府県と違い、法の判断が統一されていない。言い換えれば、地域が変われば法も変わると言った方が正しい。国が変わると考えた方が正しい。国が変わっても変わらない環境問題のようなものは上記の例で示したようは判決が出るということだ。税法のようにまだ、細則が日本のようにないため、それぞれの税官吏に判断をゆだねているところも多々あるようだが、この話は明日にしよう。

明日は「会計制度・税制の不備および運用の不透明性」だが、これもまいったなあ。

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2008年12月27日

「経済法制度の未整備」

昨日は丸惣の河関社長と久しぶりに会うことができた。以前は北海道からわざわざ、私の忘年会に出て来ていただいたりしていたが、じっくり話をすることができなかった。昨日の吹雪のおかげだね。昨日は飛行場に往復してしまった。飛行場に行けば乗れるかと思ってしまった。雪の欠航はさすがに北海道で、手際が良いと言うことを勉強した。私の吹雪に対する初動対応はことごとく裏切られてしまった。今朝は雪が降っていないので、大丈夫だ。

それにしても昨日の飛行場の混雑は異常だった。おかげで、この2日間は膨大な資料の整理が出来た。正月のブログのテーマは難解なものが多い。今日のテーマも難解だ。環境に焦点を絞って話をしようと思っている。今日はホテルだし、冬休みの初日なので、時間の制約はあまりない。このブログの話を丸惣の河関さんに話をしたら、「苦行修行ですね。」と言っていたが、まさにその通りだ。昨晩、資料の調査に2時間、今朝に至っては書くのに3時間だ。5時間も毎日こう言う事をやっていれば、修行になってしまうな。

社員にこのブログを就業時間に読む事を禁止したが、たしかに、就業時間に読んでしまうと間違いなく5%は稼働時間が短くなってしまいそうだ。中国に関心を持っている人もそう多くないばかりか、中国の深層を精神面とか価値観の視点で、モノを書いている人はほとんどいない。日本人にはない部分だが、グルーバルと言う視点は本当はきわめて泥臭い世界だ。そういうことすら日本人は気づいていない。英語がはなせて、アジア人をリードしたいぐらいにしか考えていない。だから国際会議でいつまでも参加できない。あまりにもこうした部分に日本人は表層的すぎる。我が社はこうしたグローバルな企業を目指しているので、社員には必読の指示を出しているが、こうした内容だと結構大変だ。

さて、「経済法制度の未整備」を議論するにあたって、まず経済法とは「公正かつ自由な取引と競争」を行うための法律だと言う事。日本でも最近、食品の原材料を何処まで表示するのか議論になっていたり、証券会社の補填が問題になったりしている。一方で、日本は規制緩和をしようというものも結構ある。電力は独占事業なので、政府が価格を決めているが、石油の値段が下がってから、半年もかかって、電力料金に反映するのは消費者としては納得できないものがある。これもこうした部類の課題だ。法律で決めているから、半年かかっても良いと言うものでもない。日本人はおとなしいから、こうしたぐらいでは誰も文句は言わない。中国ではそうはいかない。

中国ではこうした独占禁止法とか消費者保護に関する法律、カルテルのような談合、社会的に不当な取引についての話になる。中国人がどのようにこうした事に対応しているかを検討してみよう。知的財産権の保護もこの領域だがこれについては散々話をして来た。メラミンを混入させた粉ミルク事件もこれに該当する。中国で有害物質メラミンが混入された粉ミルクを飲んだ乳幼児が腎臓結石になった事件で、メラミンの入った粉を製造販売した業者2人の初公判が12月26日、河北省石家荘市中級人民法院(地裁)で開かれた。これは刑事事件だ。死刑の可能性もある。今日はこうした様々な経済法関連の課題があるが、その中から最近ホットな環境に関する話をしよう。

中国の『循環経済法』が6月24日、立法機関である全国人民代表大会常務委員会に提出され、審議を受けることになった。今後、中国は廃棄物のリサイクルを重視すると共に、資源の効率的な利用と節約を重視することになる。「県レベル以上の政府は、循環経済計画を制定すると共に、地元の資源と環境の受け入れ能力によって産業構造と経済規模を調整し、総量規制制度を導入しなければならない」と規定しているほか、化学工業や、製紙などエネルギー消費の高い企業に対する管理強化を求めている。(CRI Online 2008年6月24日)

昨日のテーマの中で、地方保護主義を中心に話をしたが、今日のテーマもそれに大いに抵触しそうだ。今日はこの環境がらみの話をしよう。製紙工場は環境の問題を起こしやすい。以前、バイカル湖の水質汚染の話を聞いたことがある。バイカル湖の最大水深は1,637mもあり世界で最も深く、貯水量も世界最大。世界の淡水の20%がここにあるとされる。水質も世界一の透明度を誇り、世界遺産に登録されている。(ウィキペディア)だから、この水で清涼飲料水を作ろうとした業者があった。

ところがである。一つの製紙工場からの工業排水がこのバイカル湖を水質汚染していた。そのため、この奇麗な湖の水は飲めなかったのである。まさに深刻な問題だ。こうした話が大連でも雲南省でも省とか市のレベルの話になるとこうした問題がある。彼らは製紙工場を誘致したいが、環境汚染と経済利益のバランスは日本と変わらない。現代は昔と違って、製紙工場の誘致に反対するべきだと言う事ではない。環境を維持するためのコストをどう分担するかと言う事だ。さらにその費用をどのように投資し、それをそのように管理するかが問題だ。ODAのように投資する側と運用する側とに問題が山積する。それを未整備と言う表現にするにはあまりにも問題の根が深い。

今年の1月、中国湖南省辰渓(Chenxi)県で、化学工場から漏れたヒ素などの有毒物質を含む排水で水道水が汚染され、地元当局が住民に対し水道水を飲むことを禁じる事態となったり、2008年9月17日、雲南省の9大高原湖の1つである「陽宗海」が、深刻なヒ素汚染に陥っていることがわかった。原因は、近くの化学工場から垂れ流された工業排水で、すでに工場は閉鎖され、関係者の身柄も拘束されているということだ。(exiteニュース 2008年9月18日)こう言う事件は数限りない。

一方で、中国での日本企業の例を示そう。エプソンは中国事業への水に関する影響に対して、同社は、(1)工業用水の水源汚染に対する前処理設備増強のための設備投資、(2)工場排水のリサイクル率強化のための技術・設備投資、(3)工場排水の水質規制強化によるモニタリング頻度の増加または設備導入、(4)当局の汚染源調査のための情報提供など、環境に対する対策は日本と変わりない。(エプソン ホームページ)

また、この環境対策として日本政府は中国政府にODAとして資金を提供している。例えば、有機化学製品の生成過程を水銀を触媒として使わないようにするための資金を提供している事例を紹介しよう。貴陽水晶有機化工集団有限公司に2000年に114億円借款したが、実はこの工場ができた時、すでに水銀を垂れ流すことによる健康被害の問題は経営者側も市政府も知っていた。しかし、中国が工業化を進める中で、しかたなく放置してあった。この会社の製品の半分が日本への輸出品だ。しかしながら、未だにここの工場の隣を流れる河川には魚はいないようだ。(ODA民間モニター報告)日本政府のODAはこうした環境対策費用として提供している。今のこの経済大国の中国に日本が環境費用を出す事自体が問題だが、出している。

もう一つODAの例を示そう。環境モデル都市貴陽市が日本の環境ODA(円借款)によって成果を出している例だ。市内の二酸化硫黄濃度がどのように改善されてきたかを見たものがこの図だ。97年のデータは異常に高い。98年以降徐々に改善されてきているのが見てわかる。2007年には初めて国家環境基準を達成している。

貴陽市の二酸化硫黄濃度の変化化学工場の脱硫装置の問題も良くはなしに聞く。脱硫装置は酸性雨をなくし、そこから石膏が出来るので、大気汚染防止と土壌改良が出来るので、数多くの設置例がある。しかしながら、日本からの装置は操作が複雑で、メンテコストがかかると言う事だ。だから、あまり使いたがらないと言う問題がある。せっかくの設備だが、使われていないと言う事だ。

ここ数日投資環境に関連した話をして来たが、こうした法規と経済との絡みは中国では複雑だ。なぜかというとこの国は低開発国、発展途上国、先進国が混在しているからだ。しかもそれを統括する共産党と地方政府との葛藤が縦軸にある。これに経済と開発、環境汚染と言う変数が絡んで来ている。今までいろんな角度から中国人のグローバルを泥臭く議論して来た。よく未整備だとか法規を守らないとか中国についてはいろいろな不備をあげるが、このように変数パラメータが多いとこれだけの連立方程式は解けない。だから、いつまでたっても、正解は無い。そう言う良いではいつまでたっても整備できないのかも知れない。

その正解はないんだと言う事を日本人が理解できない。いろいろな専門家がそれぞれの専門家の視点で議論してしまうとこうしたマクロの連立方程式が見えない。マクロの経済の視点だと、今度はこうした環境経済法とかが目にはいらない。横浜市立大学名誉教授の矢吹 晋先生とは社団法人国際善隣協会にておつきあいをさせていただいたが、「ギョーザ事件が映す中国病・地方保護主義」でのかれの意見はまさしくこうした中国の錯綜をついている。少し引用したい。(東アジアの火種 2008年2月28日)

「中国製ギョーザによる中毒事件が日中関係を揺るがしている。製造元「天洋食品」(河北省石家荘市)の工場長は記者会見で「我々こそ最大の被害者」と強調、自己弁明に終始 した。これは「日本の消費者」に向き合う態度ではない。中国病の「地方保護主義」の矛盾を露呈しただけではないか。河北省出入境検査検疫局なども一切「我々に責任なし」との態度で一致している。中南海からの捜査指令さえ無視されているのではないか。このまま捜査が進展せず、日中両国が非難の応酬ばかりをしていれば、4月に予定されている胡 錦濤国家主席来日の成功は危うくなる。」

「地方保護主義という壁に阻まれて、中南海からの捜査指令が宙に浮いているのではないか。河北省は僻遠の地ではなく、北京市に隣接する省、いわばお膝元近くに位置する。中央政府がお隣の河北省政府さえコント ロールできていない疑いを禁じ得ない。仮定の話だが、もし河北省の地方保護主義に阻まれて、胡錦濤が中南海のリーダーシップを発揮できていないとすれば、由々しき事態であろう。」

中央政府が河北省を仕切れないと言う事だ。彼が言うように、河北省は北京の隣の県だ。東京で捜査協力を協議というが、中国には日本と違い、河北省の公安庁と中央政府の公安部との調整。実はそれだけではない。食品なので、双方の衛生部が関与してくる。もうこれだけでも、大変な事だ。さらにこのメタミドボスの混入事件は2008年だけでも餃子以外にも何件もある。そうなると1月にこの事件が発覚して、日本の報道は日中両国の警察は、2月21日からようやく東京で捜査協力を協議し始めたが、あまりにも遅いと非難するが、中国政府からしてみれば、天と地が逆転するぐらいの超特急だ。

さらにその事件の当事者の「天洋食品」が絡んでくるわけだから、たまらない。こうした食品の農薬の混入だけでなく、河川の汚染源の追求、酸性雨にからんだ脱硫装置、水銀などの工場排水の環境課題に対して、「低開発国」で発生したこうした問題を「先進国」の中南海が解決しようと言うのだから正しく世界の縮図だ。今日はこの経済法も課題があまりにも広範囲なので、環境だけに絞ってしまったが、談合とか不公正な取引をあげたら、またきりがないので、それは別の機会にしよう。でもどれもこれもちょっと入り込んだら、変数が多すぎて、正解は求められそうにない。何が正しいかと言う事はだれにでもわかっているが、この中国ではそれを解決するための正解が直裁的には出せない。政策も大変だがこうした対策も相当大変だ。

明日は「恣意的な法制度の運用」なので、今日の続きみたいなところがある。連日長文だが、テーマがこういうので、仕方がない。こう言うテーマで、専門家でない人が書くことはますないので、チャレンジしている。グローバルと言う視点で、こうしたテーマをとらえる事はたしかに、専門ではないので、強引なところとかいい加減なところがあるが、中国の大きな仕組みと価値観を把握することはできる。書く方も大変だが、是非ついて来てほしい。こうしたテーマは日本人にないところだ。だから、はしょる事は簡単だ。だが、これが正解のない世界の縮図である事をわかってほしい。日本のように何でもかんでもまずは成否、白黒を判別し、解決すべき方策の手を打てる国は他にはない。混沌とした世界に入って行かなければ日本人はアジアでやって行けない。澄んだ水は日本だけだ。

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2008年12月26日

「中央・地方の不統一性」

昨日から札幌に来ている。恵和の渡辺社長に会いに来た。相変わらず、渡辺さんは威勢が良い。うらやましい限りだ。雪が20cmも積もっている。20年ぶりに来た北海道なので、何もかも興味津々だ。昔のJCの友達が何人かいるが連絡はしなかった。この札幌は数年不況で、人の流れが少なくなったそうだ。駅中の繁華街は多きい。傘を買おうとうろうろしたが結局買えなかった。今日は渡辺さんの会社訪問をしようとしたが、猛吹雪で、飛行場が雪で閉鎖になってしまった。午後東京に戻れるかどうかわからないが、このブログを終わり次第、空港に行く事にする。へたをするともう一泊しなければならないかも知れない。さて、本題を始めよう。

「中央・地方の不統一性」は地方保護主義と言い換えても言いだろう。その中でも「乱収費」が地方の実態を反映しているのでその話を中心にしよう。「乱収費」とは:
中央政府は、中央の認可していない費用徴収は禁止し、専用領収書の発行と証明書の携帯を義務付けているが、なかなかあとを絶たない。各種名目は数百種に及び、徴収する行政部門も多岐にわたる。中央政府の禁止通達を盾にして払わないことは勿論可能だが、後難を恐れて支払っている企業が多いことも事実だ。(北海道経済部貿易経済交流課)

ちょっと古いが、日経テレコン デジタルコラム(1998年12月10日)がその実態を欲まとめているので、そこから一部抜粋しよう。実態は今でも変わっていないから。

「乱収費」に泣く外資系企業
中国の役所が何かと名目を付けては企業から費用を徴収する悪名高い慣習である。特にカモにされやすい外資企業を対象に中国投資環境のアンケートを取ると、いつも不満のトップスリー入りする「定番」問題でもある。

役所の財源も自給自足
徴税システムが社会に根づいていないため、経済急成長に財政がついて行けなくなっている。

無原則な費用徴収
徴収費用の内容が千差万別で総計3400種類にものぼる。中には地方の警察が被害者に犯罪捜査費を要求する、裁判所が法外な訴訟費用を請求する事例すらある。財政が国の基本機能すら支えられないことが大きな弊害を生んでいると言えよう。しかし、すべてを「たかり」と決めつけるわけにもいかない。日本にだって公立学校の授業料も戸籍謄本の請求料もある。中国にも応益負担のあり方として何がしかの合理性を有する費用徴収は多い。

かさむ徴収コスト
費用徴収の規模は正確につかめないが、ある試算では税と費用を合計するとGDPの25〜30%に相当するほどの巨額になっている。また、費用徴収は全財政収入の50%、約4000億元に相当すると言っている。

ずさんな管理
設定、徴収、使途などの管理は透明性、チェック・メカニズムの欠如による多くの制度的欠陥を孕(はら)んでいることである。日本でも特定財源制度は管理が杜撰(ずさん)になりがちだが、中国の費用の多くは予算・決算による管理すら受けていない。腐敗、不正、無駄な支出が増えるのは当たり前である。仮に受益負担関係に合理性があっても、管理に深刻な問題があるために改革せざるを得ないものは非常に多い。

また、こう言うものもある。江津市役所が平成17年3月7日に以下のような記事を掲載している。

2月19日に行われた「武漢市腐敗反対工作会議」では、「経済発展の環境を損ねる国家公務員を免職することに関する暫定規定」が正式に公布された。その規定によると、公務員は以下の5つの行為をした場合で、5回以上苦情の訴えがあると、免職させられる。
1 法律法規及び市の政策・規定の実施に消極的に対処すること。
2 いろいろな名目を立てて「乱検査、乱収費、乱罰款、乱攤派」をすること。つまり、勝手な名目を付けて様々な経費、手数料等の費用を徴収すること。乱検査とは、検査を口実にして金を徴収すること、乱収費とは、料金徴収項目を勝手に設けること、乱罰款とは、正当な理由も無く「罰金」を徴収すること、乱攤派とは、むやみに金銭、物品、労力を供給させること。
3 故意に企業、国民又はその他の組織を困らせて、その正当の利益を損ねること。
4 サービスの意識が低く、公開・告知の義務を履行せず、期限内に仕事を処理しない等の仕事効率が低いこと。
5 行政権限を越えること或いは仕事の成果を出ないこと。
 苦情の訴えがあった場合は、苦情の訴えを受理する機関・部門は10日(勤務日)以内に事実を調査しなくてはならず、事実と認められる苦情の訴えが5回あった場合、又は免職条件に符合する人は免職させられる。苦情の訴えがなくても、検査、調査、メディア等により不正行為が発見された場合は、苦情の訴えに等しいこととなる。経済発展をひどく妨害し、企業投資撤回や企業にひどい経済損失をもたらす人を直接に免職させる。                     
(参考:「法制日報」 2005年2月21日)

と言う事だそうだ。武漢市と言えば湖北省の省都で、人口は800万人もいる大都市だ。武漢市がこういう規定を公布すると言う事はそう言う事が行われているからだ。中央が地方を管理して、様々な政策行動をとると言う事はどうも不可能のようだ。昔から中国では「上に政策あれば、下に対策あり。」と言われて来た。それが何千年経っても、こうした風習は変わらない。乱収費のように税金の徴収が統一されない。それだけではない。そこには合理性、正当性がないものだけでなく、武漢市のように「乱攤派」みたいなものまであって、不正行為が後を絶たない。

こうした事は日本では考えられない事だ。公のテーマとして「中国の地方保護主義」というと地方優先の政策が問題のように見えるがそれだけではない。それを掘り下げて行くと泥臭い中国が見えてくる。こう言う話をしてくると「なんで中国人がグローバルなんだ。」と言いたくなるのも最もだ。私がこのテーマを取り上げたのはグローバルと言うのはきれいごとではないと言う意味でこうした話をしたい。

中国の歴史から見ても、こうした地方政府は様々な税金だけでなくありとあらゆる規制を設けて来た。それは地方政府が存在して行くためには組織を運営して行くための資金と規制が必要だったからだ。一方で、国民もその徴収とか規制とかから逃れるための「対策」を何千年と対応して来た。最近まで、「上海入境費」とか「天津入境費」と言うのがあって、その市以外から来た車から徴収していた。道路における乱収費だ。こう言うのは行政訴訟の対象になって来ている。市民の「対策」と言える。

中国と言う国は面白い国だと言える。こうした事がいくらでもある。とんでもないことがあって、それをおかしいと言わなければそれで通ってしまう。日本ではそう言う事はあり得ないが、中国ではいくらでもある。自治体国際化協会北京事務所の2005年のニュースにこう言うのがある。

「安徽省では、省内全ての小中学校でマルチメディアネットワークパソコン教室を整備し、その建設資金を学生が費用を出すことで償還することにした。安徽省阜陽市内148校も、その中に入っており、各学生は、毎学期多くて50元を6学期にわたって収めることになっていた。ところが、昨年末に阜陽市物価局の調査で、いくつかの学校で償還が終わっているにもかかわらず、依然として費用を徴収している事実がわかった。そこで、物価局は超過徴収をしていた22校で徴収の中止を、35校で費用基準の減額を通知した。」

これも乱収費で、当然この物価局の局長はクビになったそうだ。日本でもそれはあると言われそうだ。それは社保庁が同様だからだが、これは中国人からすれば、当たり前の事だろう。日本では大騒ぎだ。こうした違いは明らかに文化の違いだ。おおらかと言うかいい加減と言うか人を追いつめないと言うか明らかに日本人の「真面目」さはまったくない。要は中央政府が地方政府に仔細にわたって、「真面目」に政策を規定しない。もしくは仔細に決めても、その通りに「真面目」に実行しない。地方政府がその市民に「真面目」に徴税を規定しない。もしくは実行しない。

仮に市政府が「真面目」に税の徴収を実行しようとしても、市民がそれに「真面目」に対応しない。そう言う文化なんだ。いつもどこかに抜け道があって、その抜け道を政府が塞がない。その抜け道を埋めるのではなくて、塞がないのだ。要は追いつめない文化だ。日本は追いつめてしまう。中国人はそこが日本人から見るとぬけて見えるし、「真面目」に対応していないように見える。

昨年中国政府が100数十項目の税務調査用の分析項目を決めた。それを企業の申告データに適用すれば、税金のごまかしが絶対にわかるそうだ。そこは中国人だ。企業は直ぐにそれがわからないような対策をこうじてしまう。中国の企業はまともに「正直」に申告している人はまずいない。日本人はどこの企業も「真面目」に申告している。不正をする企業は一社も無い。日本人は昔からお上には逆らわない。話は違うが、今まで、日本人は「真面目」「正直」「従順」だと言って来たが、そう言う基準で中国人を雇ってしまうととんでもないことになる。だめなやつばかりを採用することになる。

それではこうした中国人は不真面目で、嘘ばかりで、反目ばかりしているのかと言うとそうではない。これが不思議だ。これらの日本人の価値観は日本人独特のもので、他の民族はもっていない。かといって、今まで言って来た中国人のこうした価値観は中国人独特のもので、アメリカとか他の国には見当たらない。中国人はいろいろな人種、民族の中でもまれて来ているうちに、きわめてフレキシブルな対応能力を身につけて来たと言うのが私の考えだ。それを私はグローバルの本質だと言っている。泥臭いがそうでもしなければ異民族とは一緒に住めなかった。中国の歴史は戦争の歴史だ。異民族とは殺しあうしか方法が無かった。それが漸くこうして国家を形成できたと言う事は中国の歴史の中でもそう多くはない。こうしたことを悪く言えば悪く言えるが、ものは考えようだ。こうした「グローバルな」対応力を日本人は身につけることはできないが、理解することはできる。

今まで日本人はこうした中国人の価値観を理解しようとしていないし、関心も示してしていない。表面的な「中央・地方の不統一性」として議論して来た。地方優先主義にしても、乱収費にしてもそうした議論が中心だった。中国人自身もそうした中国人の価値観を理解して来ていないからこうした議論にはならなかった。中華思想がその歴史的な背景にあるからだ。それは問題だ。

明日は「経済法制度の未整備」だが、まったくこれも、見当がつかない。明日のお楽しみだ。それにしても、今日は大雪で、東京には帰れないかも知れないな。明日は休みなので、問題はないが。

swingby_blog at 06:19コメント(0)トラックバック(0) 
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海野 恵一
1948年1月14日生

学歴:東京大学経済学部卒業

スウィングバイ株式会社
代表取締役社長

アクセンチュア株式会社代表取締役(2001-2002)
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海野塾のイベントはFacebookのTeamSwingbyを参照ください。 またスウィングバイは以下のところに引っ越しました。 スウィングバイ株式会社 〒108-0023 東京都港区芝浦4丁目2−22東京ベイビュウ803号 Tel: 080-9558-4352 Fax: 03-3452-6690 E-mail: clyde.unno@swingby.jp Facebook: https://www.facebook.com/clyde.unno 海野塾: https://www.facebook.com TeamSwingby
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