2008年12月

2008年12月25日

投資における「不透明な政策運営」

中国における投資リスクはその多くが「不透明な政策運営」にあると言われている.世界的なテクノロジー調査機関であるIDC (インターナショナル・データ・コーポレーション)社の国際事務部門上席副社長のフィリップ・ド・マルシラ氏は5月17日、「世紀先導科学技術トップフォーラム」で、中国とインドが過去数年間に高度な経済成長を遂げ、大量の資金投入で、未来における成長も評価する経済学者もいるが、両国の経済成長規模にはきわめて高い危険性を帯びているため、注意しなければならないと指摘した。(大紀元2005年5月20日)

こうした指摘が数多くあるが、その幾つかについて検討してみたい.最も不透明なものは汚職だろう.家族同士の金の授受は汚職にならない。しかしながら、同郷の場合には汚職だろう。汚職そのものが中国の伝統的な慣習だ.何千年と言うか有史以前からありそうだ.そう言うものは決してなくならないし、どう対処したら良いのかを検討するしかない.受け取るか受け取らないかもお互いの「信用」のレベルによる.「信頼」しあっていればお互いの秘密は決して漏れない.日本でも同じで、重要な面談は決してホテルのような公共の場では行わない.汚職でなくても勘ぐられてしまうからだ.これは日本でもインドでも同じだ。

国有企業を中心に非効率な投資が行われている.Dollar and Wei[2007]によれば、民間企業や 外資系企業に比較して、国有企業の投資収益率は低い。その背景には、制度的障害(労働や雇用に関する制限など)、賃金などのイ ンセンティブの欠如、ガバナンスの悪さ、資金調達の容易さなどがある。何らかの方法に より国有企業の投資収益率を民間企業並みに 改善することが出来れば、経済成長率を下げ ることなく投資率を6%下げられるという。 すなわち、国有企業改革や金融改革の推進が、 投資の抑制につながることになる。(環太平洋ビジネス情報 RIM 2007 Vol.7 No.27 )

政府による介入が多いために、金融部門が国民の貯蓄を有効に投資に転換させる役割を果たしていない為である。中国では資本市場の規模はまだ小さく、企業の資金調達は銀行に頼らざるを得ない。しかし、銀行部門の中枢になっている四大銀行は、融資先の大部分を占める国有企業と同様、コーポレートガバナンスが欠如したままとなっており、株主(抽象的存在としての「国家」)の利益を最大化するように行動しているわけではない。そもそも、貸出金利は、融資の対象となる国有企業を救済するために低水準に設定されており、資金の価格として資源を最も収益率の高いプロジェクトへと誘導する役割を果たしていない。また、融資の中から不良債権が発生しても、関係者が責任を取ることもほとんどない。(実事求是 2004年6月18日)

製造業の企業数は国有企業が8%ぐらいだが、資本ストックは依然として、32%もある。(Dollar and Wei[2007])国有企業は銀行融資を受けやすく、その生産性は民間企業より30%は低いと言う事だ.ただ、SINOPECとかChina Lifeのようは中国の経済を牽引しているのは上場しているとはいえ、いわゆる国有企業だ.であるから、国有企業すべてへの非効率な投資とは直裁的には言えない。また、中国の伝統的な地方優先主義もある。地方の企業を優先すると言う政府の政策だ.これには地方の人脈が絡んでくるから、それこそ不透明だ.

法律とか司法も不透明と言うか不公平なところが多々ある.ここには収賄も絡んでくる.以前のテーマで、「模造品」の話をした時にこうしたいくつかの問題を議論したように、不透明なところが一杯だ.クレヨンしんちゃんの商標権に代表されるように、中国で申請したものが中国の法律に合致しているから良いと言った事が今まで多々あった.勿論、日本でも法も目をかいくぐる悪いやつはいる。いま、我が社のビジネスで学校の裏サイトを撲滅しようとしているが、法律では取り締まれない.そぐに取り締まれば良いように思うが、なかなか出来ない.

交通事故などはさすがに人治国家だから、人がたくさん集まって来て、どっちが悪いと言ってくれる.法治国家の部分ではまだまだ不透明な部分がいっぱいある。ただ、日本の場合には裁判をする時にどっちが悪にかはっきりしている場合が多いが、中国の場合にはどっちが悪いのかわからないケースが多いのではないだろうか.訴えた人が悪いやつの時もあったが、こう言うのは統計のとりようがないから、実態はわからない。

だから、知的所有権については商標権のように、ヤマハ発動機が勝訴しているケースも多々出て来ているので、今後、こうした政府の政策ははっきりして行くだろう.しかしながら、直ぐにコピーされてしまうような音楽とかソフトウェアの保護には未だ相当の時間がかかりそうだ.以下のような江沢民の傑作な答弁もある.と言う事はこうしたコピーは当面なくならないと言う事だ.

かつて江沢民前国家主席がアメリカに訪問したとき、米国人記者に中国における知的財産権の侵害について質問されたことがある。これについて、江沢民前国家主席は「古代中 国において羅針盤、活版印刷術、製紙と火薬という4大発明がなされたが、欧米諸国はそ れを利用するにあたり著作権料を払ったのか」と聞き返した。近代的市場経済の基本的な ルールに則った答弁ではないが、途上国の立場を代弁したものとしてまったく無意味な答えではなかったように思われる。(中国の第11次5カ年計画に関する分析調査 経済産業省 2006年)

地方保護主義があり。WTO加盟後のグローバリゼーションの大きな阻害要因でもある.これについては明日のテーマであるので明日話そう.要は是非の判断の重要な要素として「地方」が優先されると言う事だ.その他に税関の輸出入のルールの不透明。外貨管理局等金融当局の為替政策.これについては2005年の1ドルあたり8.2元が現在6.8元まで、元高になって来ている.2005年の世界銀行の発表で購買力平価が1ドルあたり2.1元から3.4元に改められたがそれでも、元安だ。中国は全般的な改革の一環として人民元の為替制度をより柔軟にすると公約しているが、米政府はそのペースがあまりに遅すぎると毎日のように非難して来ている.それでもこの3年で、17%の元高にはなって来ている。

政府は生産過剰業種(鉄鋼、電解アルミ、自動車、コークス、 鉄合金、カーバイド等)を指定しているが、 その根拠となるデータは公開されてはいないが、この世界同時不況において、12圧19日のブログで、鉄鋼で言えば、2008年8月時点で、前年比69.5%の在庫増であり、化学原料および製品についても36%も前年比で増加している.といった。その際にも言ったが、中国人は日本人のように隣を見ながらものを作らない.だから、共倒れになるくらいにものを作ってしまう.だから、この大不況でも倒産するまで作るこことはやめない。

昨日のテーマのストライキとか暴動はたしかに不透明な隠蔽もあるだろう.年に10万件を超える暴動はそれを押さえるだけでもものすごいパワーだ.産経ニュース 2008年6月29日のニュースによると、中国・西南地方の貴州省甕安県で28日、15歳の女子中学生が乱暴のうえ殺害されたとみられる事件で、当局のあいまいな事件処理に怒った住民約1万人が、県政府庁舎や公安局を襲撃、数十台の警察車両が燃やされるなどした。集まった住民は数万人との情報もある。鎮圧に当たった当局側の発砲で1人が死亡したといい、中国国営新華社通信も29日、暴動の事実を伝えた。鎮圧で約150人が負傷、200人以上が拘束されたという。現地では、汚職や水質汚染に対する住民の不満も高まっており、こうした不満が暴動につながった可能性もある。

こういうのから、ラサのチベット騒動、土地の強制収用をめぐる農民暴動、反日暴動などきりがないが、その実態と解決策も不透明かも知れない.2005年に起こった大連の日系企業の一律賃上げも不透明だ.国が大きいだけの問題ではない.ともかくこうした暴動は時代を超えてきりがない.

環境汚染も見逃せない.緑の川とか青い川とかそれだけではない.4つ目の豚とか足が一杯のカエルとか奇形児がたくさんある.環境問題も以前話をしたが、こうした汚染が垂れ流しになっているのは以前の日本も同じだった.役人と企業の癒着だ.罰金も大したことない.ただ日本と違うのは国がでかく、かつ、工業化がものすごい勢いなので、そうした事をこのまま放置すると、中国だけの汚染のとどまっていない.勿論そこに住んでいる中国人も黙っていない.不透明な許認可が背景にはあってもそこに住んでいるからそのままで良いわけはない.メラニン入りのミルクを飲んだ中国人の乳幼児が4人に一人もいると言う事だ.そうなると誰も黙ってはいない。

このように一杯、不透明な政策運営に関連した項目を挙げて来た。そう言う国でも中国国内の市場目指して、多くの外国企業が進出をもくろんでいる。中国は様々な人種、所得階層、地域格差、地域ごとに異なる法規や制度、不透明な許認可、法規の運用。挙げればきりがない.こうした中で、中国市場はきわめて大きなビジネスチャンスだという意識は誰にでもある.一方で私が感心するのはこうしたぐちゃぐちゃとも思える環境のなかで、生き抜いて来ている中国人の生き方と価値観だ。これは日本人にはないものだ.

日本にはこうした不透明なものは数多くない.日本では澄んだ水にも魚が住んでいるが、中国では澄んだ水には魚は住まないと言う故事がある.こうした混沌とした社会に住んでいる人たちは混沌としているが故に政府の政策もあいまい不透明になって行くのであろうか.日本には清濁あわせ飲むと言う言葉もあるが、こうした中国の実態を見て、この国の経済が崩壊するのではないかとか危険が多すぎるとか言う人がいっぱいいる。こうした事は今に始まった事ではないと言う事だ.中国人のこうした価値観は変えられないし、これからも継続する.過去もそうだった.だから崩壊しようがないと言う事だ.そうした彼らの動きと考え方をわれわれは理解しようと努力したい。そうしなければ、彼らの将来は我々と一致点を見いだすことはできない.我々の将来は彼らと共有して行かなければ、我々の繁栄は維持出来ない.

明日は「中央・地方の不統一性」何を話すか未だ決めていない.これもやっかいだな。

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2008年12月24日

「ジョブホッピング」

日本では3年以内の退職率が3割で、中国では1年以内が3割だと言われている.中国の日本企業だけでなく、中国人は退職する頻度が高い.日本企業に勤めている中国人の方がもっと高いようだが.今日はそこらへんの話をしよう。それでも、7割は残っていると言う事だ.退職の理由は調査機関によってまちまちだが、以下のような理由だがその真の理由はわからない.

自分が成長出来ない
給与が低い
どれくらい勤めるか考えていなかった
いやだから辞める
キャリアアップのために
職場を変えた方が将来のリスクが低い

上海市労働社会保障局が発表したデータによると、上海市内の就労者の平均勤続年数は全体の平均で約3年10ヵ月。30歳以下に限ればわずか1年5ヵ月ほどと言うデータもある.このデータは平均勤続年数だから、とんでもなく短いと言う事だ.しかも理由が上記のような理由だ.何とも納得出来ない.日本はどうかと言うと25歳〜29歳だと10.6%。(2007年)

かって働いていた日本のアクセンチュアは中国並みだったように思う.その当時はその退職率の高さに対して、不思議には思っていなかった.強烈な上昇志向と強烈なノルマの世界では当たり前のように思っていた.今の中国はそうしたところがあると思う。おたおたしている人にはいちいちかまっていられないと言うようだった.成長率が30%を超えてしまったら、きっと中国の企業もそうだ.しかしながら、日本企業に働く中国人の退職率が高いのは問題だ.

改革開放前の終身雇用は86.7%、90年代の転職率は30.5%(人民日報 2004年8月17日)だというから、昔から、中国人がジョブホッピングしていたわけではない.1979年以前は終身雇用だったが、転職率は1980年代で18.2%、1990年代で30.5%だった。だから、雇用が流動化して来たのはつい最近のようだ.この10年間、中国の実質経済成長率はほぼ10%を超えている.だから、企業文化が変わって来たのだ.

かつての社会主義体制を「大鍋飯(ダァグォファン)」(大鍋で作った食事)と呼んで、一律の平等を進めて来た時代があった.悪い意味で、過去の事をこう言っている.その時代にはジョブホッピングはなかったと言うことになる.同じ仲間だと言う意識が企業でも昔は強かった。家族、同郷の絆のような関係を維持して来た。だから、企業の中には病院も学校もすべてがあった時代があった.一方では3000人の石油プラントで、働いているのは300人と言う具合だった.あとは何をしているのかわからなかった。それでも昔は採算が取れた.給与がみんな安かったからだ.みんな家族も含めて仲間だった。1992年の南巡講話からこの世界が崩壊して行った.

先に挙げた理由で会社を辞めると言うアンケートのようだが、アンケートにはそう書いているが、辞める人の深層はこうした人的なつながりの欠如があるように思う.中国人は結婚しても、会社に勤めても、たえず、欧米人以上に、そのつながりを確認しあう.妻であれば毎日、愛情を確かめなければ維持出来ない.会社も同じだ.絶えずお互いに、将来のビジョンを分かち合わなければ辞めてしまう.

中国人の歴史がそうさせて来た.そもそも国が広いし、民族が多様だから、直ぐに人を信用しない風土がある.だから、確かめて生きて行かなければならない.信用出来ないと思えば直ぐに別れてしまう.だから、昔の国営企業は社員の生活そのものを囲うことによって、社員の信頼を得て来た.こうした国営企業は社員を組織にとどめる機能は十分に果たして来たが、それは小さな自治体のようなもので、資本主義社会における利益集団ではなかった.それが問題で、殆どが解体して行った.

それに伴って、この10数年の間に急速に、市場経済が浸透して行った.と同時に、採算を度外視した国営企業が衰退して行った.その背後に社員の会社組織への従属意識も変化して行ったと言える。今中国人の会社への帰属意識を高める方法はこうした国営企業が持っていた良い部分をどう復活するかである.お互いに信頼出来る風土を会社が築く事だ。実力主義だ.目標管理だ。高い給与だ。と同時に、一生ここでやって行きたいと言うロイヤリティとチームワークが必要だ.

それを実践している企業が大連桑扶蘭時装有限公司だ。董事長の鄒 積麗女史が創業して10年。中国全土に600店舗を展開している.だから、漢民族の社員が中心とはいえ、多民族だ.その600店舗の店長が今まで誰も辞めていないと言う.彼女のところのこうした社員が辞めない秘訣は教育にある.徹底した人材育成を行っている.まるで、アメリカの企業のようだ.そうした教育は社員のロイヤリティを高める.

わたくしの会社はベンチャーなので、そうした教育をする規模ではないが、中国人の社員とのコミュニケーションは相当気を使っている。絶えずお互いに理解しあっていなければ、辞めてしまう.日本のように採用されてしまえば終身雇用と言う事ではない.会社も社員もたえず、会社で仕事を進めて行く上のコミットメントを確かめあわなければならない.日本人にはこうした事はわからない.

最近の中国人の経営者も若い人が多いので、こうしたコミュニケーションの仕方がわからない人が増えて来ているのではなかろうか.昨今は雨後のタケノコのように、企業が乱立し、まさに、戦国時代のような企業群がこの中国にひしめいている状況だ.自分が生き残るために必死で、社員のメンタリティまで面倒見れないと言うのが本音かも知れない.しかし、大連の広衆科技の総経理をしている邢社長のような人もいる.今社員が80人だが、毎年倍々に成長して来ている.30人が大連理工大学卒だ.日本で言えば東工大卒というところだ。

彼がこうした人材を確保出来ているのは社員とのコミュニケーションだ.いつも話をしていて関心するのは社長は本来営業しかしない.社長しか出来ないからだ.しかし彼はいま、30歳でありながら、社員との会話を最も重要に思っている.だから、人が辞めない.大連桑扶蘭時装有限公司と同じ考えだ.何年か前に、私の台湾の友人がこう言った.「海野さん。中国人を雇うのであれば、払う給与の倍の金を用意しなければならないよ.払う金以外に同額の金をばらまかないと行けないよ.たえず、気を配っていないと辞めちゃうよ.」

彼はそう言う経営をしていたのだろう.大分前の話だから、当時は給与も安かったから、そう言うことができたのだろうが、今はそうはいかないが、何か納得出来るはなしだ.今は金ではなくて、将来のビジョンかも知れない.この会社で一生働いていいのだろうかという疑問を解消してあげなければならない.中国人の「信頼」が会社になければ辞めてしまうのは当然のような気がする.

そう言う意味では最近の中国の若い経営者の中にはこうした昔からの中国人の「信頼」の関係を知らない人が増えて来たのかも知れない.欧米流のビジネス流儀で商売をする事自体がこの中国では危険だが、そうした事が増えて来ているのかも知れない.中国人も会社に勤める生き甲斐は金ではないと言う人が増えて来ている.そうした傾向も新しい動きかも知れない.今まではあまりにも、ノルマに重点を置き過ぎて来た.のんびりしようと言う事ではないが、会社との絆を求めて来ているのかも知れない.

明日は「不透明な政策運営」。私は金融は専門ではないので、こうした中国の為替とか市場操作については明るくはないが、そうした素人目から中国の昨今の運営を見てみようと思う.今日は中国の雇用に新しい動きがあるのではないか言う視点で見て来たが、中国人はすぐ辞めてしまうという昨今の動きにはどうしたら良いのか私の考えを述べた.社員が辞めない会社もあると言う事だし、時代の流れの中で、中国人の価値観をきちんと見て行く事も大事だ.慌ただしく変化する中国の市場経済もかってのいいものも置き去りにして来てしまった.

今一度そうした中国人の価値観をジョブホッピングと言う視点で見直してみた.たまたま、天皇誕生日なので、考える時間が取れたのが幸いだった.忙しさにかまけていると、中国人でさえ中国人の本来持っていた「信頼」をないがしろにしてしまうような現象が出て来ている.あらためて、こうした価値観の重要性を考えてみた.こうしたダイナミックな変化を我々日本人はBPOを通じて接触して行く必要がある.そう言う課題認識は未だ一般大衆にはない.

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2008年12月23日

ストライキ

今日は「ストライキ」だ。古いところだと1915年の中国での日本の「対華21ヶ条要求」の際の商店でのストライキがあった。これは第1次世界大戦の勃発で、それまで中国を浸食していた西欧諸国が撤退したことに起因する。この「対華21ヶ条要求」は西欧諸国に代わり、中国での利権獲得を狙った日本政府は、各界の中国での利権についての要求をとりまとめた。この事件を契機に、対日感情の悪化が年ごとに進んで行った.日本人だからなおさらと言うところもあった.

中国人から日本人を見れば、日本人はもともと「夷狄(いてき)」(中華思想における漢民族以外の異民族の蔑称。日本は東夷とも言われていた。)とよばれ、中国人より下等と見なされて来た歴史がある.こうした中華思想は今はないが、中国人の精神構造の根底にはあるような気がする.今日のテーマとは違うが、中国の反日感情は今に始まったわけではなく、100年前からこうしてあった。欧米に対してもこう言うことはあったが、騒動が一桁少なかった.だから、反日暴動はストライキではないが、過去の歴史を見てみるとこうした行動になりやすい中国人の精神的な背景がそうさせていると思う.

さて、最近では2003年には遼寧省の炭坑での数万人のストライキがあった.これは典型的なそこの地区の幹部の腐敗であったようだ。こうした腐敗による汚職は別途項目をもうける必要があるが、中国の最高人民検察院(最高検)の賈春旺検察長(検事総長)は2008年3月10日、北京で開会中の全国人民代表大会(全人代=国会)で活動報告を行い、2007年までの過去5年間で、公務員が絡む汚職事件が約18万件あり、約21万人を摘発したと発表している。(徳島県議会議員 丸若祐二さんのホームページから 2004年5月6日)こうした汚職が原因のストライクも多々ある.

また、2008年12月19日、シンガポールの華字紙「聯合早報」によると、今年10月以降、四川省や重慶市で小中学校の教師が公務員と同等の待遇を求めて相次いでストライキを決行している。教師1万人近くがストに参加。最近では、内モンゴル自治区、山西省、湖南省、湖北省など多くの省・市にも飛び火しており、全国的な広がりを見せている。(Record China 2008年12月21日)

このストライキも納得のいくものだ.公務員の平均年収3万5000元(約45万5000円)に対して、教師はわずか1万5000元(約19万5000円)。同クラスの公務員と比較すると、教師の給料は3分の1程度という。湖南省のように横領事件もあるようだが、昨今の経済成長に伴う教師の給与が上がっていなかったと言う現象もあるようだ.こうしたケースは福利厚生もあわせて、全国的な問題であり、改善されて行くような動きをしている.中国はストが合法化されていないが、こうした問題の解決にはストが一番手っ取り早い.このデータは2008年12月21日のRecord Chinaからの情報だが、それにしても教師の給与が信じられないくらい安すぎる.

タクシーのストライキも広範囲に広がっている.最近の重慶市の例では、一ヶ月の収入が12000元。会社に上納する管理費が7000元から8000元。ガソリン代金が2000〜3000元。毎日13時間以上働いても手元に2000元しか残らないそうだ.この重慶のストでは16000台が参加して、ストが行われた.改革開放当時はタクシーの運転手は大学教授より高給だったそうだ.2000元では先週土曜日に示した重慶の労働者の平均月収に等しい.それならばそれで、良いじゃあないかと言えなくはなので、微妙なところだ.中国は言わなければ何も起こらないので、全国的なこうしたストライキによって、彼らの賃金が向上するのは間違いない.

企業のストライキも相当あるようだ.最近で有名なのは昨日話をした2005年9月に起きた大連開発区の賃上げストだ.大連キャノンから始まり、多くの日系企業に広がった.最終的には市政府と工会(労働組合)が介入して解決した.市政府と工会は労働者側の要求に一方的には組しなかった。仲裁したと言うのが正しい.彼らの意向はこうした賃上げが大連の賃金体系に影響を及ぼし、大連の生産コストが上昇し、外資の利益を逼迫する事を懸念したからだ.賃上げを安易に認めてしまえば、税収が減ってしまう.それでなくても、大連のどこの企業も近年の賃金の上昇によって経営状況が年々悪くなって来ている.当然、税収も低下して来ている.こっちの方が共産党としては問題だ.

工会については別途述べた方が良さそうだが、これは労働組合だが、日本のそれとは違う.中国全国の組織で、総工会があり、企業ごとに工会がある。この組織は労働者の代表と言うよりかは会社と労働者の間に立ってとりまとめをするような位置づけだ.だから、賃上げ交渉の労働者側の立場ではない.工会の最高機関である共産党は企業の利益も大事であるから、外資の利益が減る事には賛成しない。だから、矛盾しているようだが、そのバランスをとる立場にならざるを得ない.

こうした賃上げだけではなく今後雇用に起因したストライキも増えて行く.今年発効した「新労働契約法」によれば2度目の雇用契約からは終身雇用契約になる.そうなると、今までのような1〜3年の短期雇用契約は出来なくなる。少し情報が古いが、中国各地の労働仲裁委員会が受理した労働紛争の件数は、1994年から2002年の8年間で、ほぼ十倍になっている。そして、2004年上期の統計では、半年で135,000件、年間のベースにすれば27万件というペースになる。 (CSR Archives)

中国各地の労働仲裁委員会が受理した労働紛争の件数また、上記ソースによると、中国全土の18歳以上の一般消費者男女5000人に「働くなら、どういう企業を選択するか」を尋ねたところ、欧米企業が68%の支持を得た。一方、日本企業は10%しか支持されなかったというデータがある。 これはこうした労働の雇用条件だけではない.最大の課題はこうした従業員の将来をどう企業が考えるかだ.そうした日本企業が少なすぎる.特に近年中国の経済が急成長し、生活レベルが向上してくると、以前のような賃金だけではなく、彼らの将来に対する期待が大きくなって来たと言える.ホワイトカラーにおいては特に顕著だ.日本企業は中国人社員の将来に対してのビジョンがない.

ストライキが嵩じると暴動になる.中国の中央政府が発表した年間の暴動件数は、04年7.4万件、05年が8.7万件。特に農村部での暴動が激化している。最近の情報はわからないが、10万件を超えていると言う報道を最近香港のニュースで読んだ.汚職とか搾取は中国の歴史そのものであり、役人と農奴の関係は共産党になってもそう簡単にはなくならない.実質経済成長率は平均10%だが、農村と都市の格差が多いところで、10倍はある.国全体の貧富の格差はもっとある。5000万人は日本と同じレベルに来ている.こうしてストライキの事例を見てくると市場経済になってからのこの20年のひずみがあちこちで出て来ている.一方で、江沢民の西部大開発が失敗して、そのあげくに四川大地震があっても、暴動が起きないのは大したものだ.

こうした様々なストライキに対して、政府、労働組合(工会)がマメに対応している。一方では役人の腐敗が耐えない.この多民族国家を取りまとめている共産党もすごいと思うが、そこに住んでいる13億の人たちも様々な環境の中で、もまれにもまれてきている.日本のように黙っているうちに誰かが助けてくれると言う事はこの国では決してあり得ない.団結して声を大にして、大げさに騒がなければ、誰も何もしてくれない.公務員の給与より、教師の給与が3分の一だと言う事自体がおかしいが、そう言う国だ.

誰かがきちんと公平に見てくれているなんて事はない.教員がおとなしすぎたのだろう.タクシーのストライキも面白い。彼らがもらっているのは労働者の平均月収だ.経営から見ればそれで良いと言う判断なのだろうが、タクシーの運転手から見ればだんだん月収が毎年減って来ているから、問題にしているのだろう.どっちが正しいのか判断に迷うところだ.企業のストライキにおける共産党の考えも面白い.労働組合(工会)は労働者の味方のように思えるが、そうではない。企業の利益も税収に繋がるから大事だと言う視点が面白い.ところで、就業者数が7億6000万人もいる.さらに2006年末で、登録失業率が4.1%で、847万人が公式な失業者の数字だ.今年の600万人の大学卒業生のうち200万人が就職出来ないことを考えると、この数字自体は怪しいが.

このストライキを見て我々が思う事は多民族、多言語、多宗教、多慣習を乗り越えてそれぞれのグループが立場を変えて、生きて行こうと言うたくましさを感じる.誰かに訴えれば、誰かが対応してくれると言う国ではない.自分自らが対応しなければ何も動かない国だからだ.グローバルと言うのはそう言う事だ.彼らは事に当たって、きちんとものを言う.言わなければ誰も対応しない.日本人の国際会議での対応とは違う.

日本人はこうした中国の実態にあまり関心を持たない.さらに、日本人は昔から、中国人を蔑視、軽蔑しているところがある.それも歴史観だ.そろそろ現実の中国を見る必要がある.日本テレビで放映していた「OLにっぽん」は欠かさず見た.視聴率が悪かったようだが、中国とBPOを理解する上ではいい番組だった.私が毎日こうして書いているがそもそも日本人が中国人に関心を持っていない上に、今の日本ンが保守的な「還暦ニッポン」であるからだ.困ったもんだ.中国の野菜を農薬問題で閉め出してばかりいる日本人の対応は戦前のABCDラインを思い起こすのは私だけだろうか.排他的な国民だからと言うのは言い訳にはならない.時代は後ろ向きには流れない.

明日は「ジョブホッピング」だ。確かに上海人はそう言う傾向にある.なぜだろう。

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2008年12月22日

「賃金水準の上昇」

昨日は駐車場に止めてあったバイクからガソリンが漏れている事がわかって大変だった.結局、息子のビッグスクーターとかほかのバイクにガソリンを移して、漏れているところに布を入れて、シートをかぶせて、駐車所の隅に持って行って、今日、修理することになった.ともかく、ガソリンなので、近くで、タバコでも吸ったら爆発してしまう.あわやというところだった。さて、今日は「賃金水準の上昇」だ。

賃金の上昇で一番記憶にあるのは2005年の大連開発区で起こった日系企業に対する労使紛争だ.誰が首謀者かは結局不明のままで、一律100元賃金が引き上げられた.当時の東芝の香椎さんが日本商工会の会長だったが、彼も全くこの源泉がどこだかわからなかった.大連市政府も全くわからなかった.翌年の7月には最低の賃金が500元だったが、650元に3割も引き上げられた.2007年末にさらにアップして700元になったが、毎年こう言う感じで、あがって行って来ている.

実質経済成長率が毎年10%だから、大体同じレベルであがっている.ただ、今まで言って来たように都市部では実質その3倍の成長率があるから、都市部の賃金の上昇はGDPの成長率以上になる事は間違いない.ただ、中国は国土がでかいので、都市部と地方の賃金格差は10倍はある.勿論所得格差も同じだ.また、同じ都市部でもスキルによって、10倍以上の格差がある.その上こうして、毎年、最低賃金がどんどん上がる.だから、今誰がいくらなのかきちんと把握する事は大変な事だ.賃金がどんどん上がっている事は事実だが、どう上がっているかを正確に把握する事はほとんど不可能に近い.

さらに、昨年は大連の不動産が2倍に暴騰した.これは今まで、大連の不動産があがっていなかったからだ.元はいままで、購買力平価では現在の半値だと言って来たが、そのこともあって、毎年、元高になって来ている.2006年は3.2%の元高、2007年は6.9%で、2005年の1ドル8.2元から現在は6.8元まで、元高になって来ている.しかしながら、2005年に世界銀行が試算した購買力平価によれば元は1ドルあたり3.4元である。このように毎年輸出コストが大幅に上昇している.

それと今年は新しく「労働契約法」が実施され、福利厚生を充実せざるを得なくなって来ている.日系企業では未だ顕著な動きはないが、2007年1年間で、広東省で、香港系と台湾系の靴生産企業約1000社が閉鎖され、その約半分は内陸地域に移転し、約25%はベトナムなどに移転した.(富士通総研 2008年4月15日)ある大手の大連の労働集約型の日系企業のトップは今の賃金上昇ではあと3年は持たないと言っていた.そこの工場は数千人の工員がいる.言ったどうやって、閉鎖するんだろうか.韓国企業のように日本企業は「夜逃げ」はしない.中国は撤退の賠償が高い.

賃金の相場そのものについては今まで何度か述べて来たのでここでは詳細に言及しないが、今の中国で圧倒的に不足しているのはスキルを持った人材だ.だから、コンサルタントとかエンジニア、ブリッジSE、経営者のようなスキルを持った人材は平均的な賃金の10倍以上になる.たとえば、大連で言えば一般社員の年収が4万元ぐらいだが、トップの日本語が堪能なコンサルタントであれば、40万元はとっている.経営者のレベルになれば勿論それ以上である.「エーそんなに払うのか.」と驚く経営者がいるが、5年前とは全く違うし、もはや中国は「低開発国」とか「発展途上国」ばかリではないと言う事だ.

日本人の感覚であれば、2006年の厚生労働省の調べでは社員の平均給与が男は406万円、女が268万円で、東京都がこれより2割高い.男女平均すると337万円。東京都が413万円になる。日本の大手の上場企業のトップでも年収が5000万円ぐらいだから、そう言う意味では日本と中国も大差ないと思うかも知れないが、そうではない.中国の方が日本と違いトップになるのは30代だ.だから、日本より、20年は早い.勿論、中国のトップの給与はばらつきがあってよくわからない.国営と私営とは桁が違ってくるし、欧米系の企業では欧米並みで、また桁が違う.

何でもあり見たいなところあがる.実はこの中国の平均給与は2008年版中国統計年鑑」より、ジェトロ大連作成したものを先週土曜日に転載したが、正直言って、しょっちゅう賃金が改定されるので、正確には今いくらだかわからない.我が社の社員も日本人が採用した人と中国人が採用した人との開きもあって、今いくらが妥当かもわからない.はっきり言える事は中国が低コストの生産基地ではもはやないと言う事ははっきり言えそうだ.

以前のような低開発国の労働者はだんだん少なくなってくる.だから、労働集約的な生産は今後難しくなってくる.勿論、中国の内陸部は「低開発国」だから、当面はそうした内陸部への移行も十分考えられる.先ほど言ったベトナムなども候補だ.これからの中国は「先進国」の占める比重がだんだん顕著になって来ている。大学生があっという間に2700万人もいる.こうした人材をさらに育成して、高度なビジネスを行う事が可能となって来ている.それが我が社の行っているBPOだ。

ただ、ここで、人材の育成については日本企業のように30年で経営者を目指すような教育の仕方は中国ではあわないようだ.10年で経営者にするための人材育成プログラムを考えなければならない.こうしたプログラムはアクセンチュアのような欧米企業は持っているが日本企業は持っていない.賃金の上昇に見合った育成プログラムを日本企業は考えて行く必要がある.

もう一つ面白い考えがある.2002年に国連貿易開発会議が作成した資料だが、労働生産性を割り引いた単位労働コストと言う考え方だ.中国に賃金水準は米国の2.1%しかないが、中国の労働生産性も悪いと言う。中国は米国のわずか2.7%だというのだ。すなわち、中国はインフラ、法律制度、システム、商慣習において労働生産性が悪いと言う事だ.そうなるとこの労働生産性で賃金水準を割り引くと79.6%になると言う事だ.こうした数字はそのまま現実と言う事ではない.購買力平価だけ見ても倍違うから、まだまだ、中国で作った方が安い。

ただ、大連桑扶蘭時装有限公司 董事長の鄒 積麗女史が言っていた言葉が面白い.彼女のところで作ったブラジャーが日本の通信販売で、460円で売っているが、同じものを中国で売ろうとすると1350円かかると言うのだ.返品、物流コスト、管理コストがかかるので、3倍くらいになってしまうと言っていた.日本はそうしたコストがほとんど製品に按分しない程かからない.日本の中はきわめて効率が良いのである.

ここで何か変だなあと思うかも知れないが、日本の中国での製造は日本からの設備をそのまま持って来て、工場のレイアウトも日本のままだ.TPMも5Sも日本のまま移植して来たから、労働集約型であれば人件費と土地代だけは安くなった.それをそのまま日本に持って行くのであれば、コスト削減が出来る.自分の企業が中国でものを売ろうとすれば、先ほどの鄒 積麗女史が言うようなことになる.未だそうした事は日本の企業は大都市の上海とか北京ぐらいでしか行っていないので、コストがかかると言う事は未だない.

勿論、現地企業の販売を委託することもできるが、利幅は大きく減少してしまう.日本企業がこれから中国で販売して行く上での大きな課題である.鄒 積麗女史は最近、中国の中間層をターゲットとした小売りビジネスを展開しだした.この2年で、100店舗を展開するそうだ.すでにある600店舗とは別のブランドを投入するそうである.こうした企業が今中国では数多く出て来ている.中国全体の生活水準があがって来ているからだ.日本企業にとっては今後のチャレンンジだが、彼女は普通のビジネス展開ぐらいにしか考えていない.

明日は「労務問題(ストライキ、労働組合問題など)」だ。ストライキについて話をしよう.

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2008年12月21日

今日は「教育レベル」だ。

今日は中国の「教育レベル」について話そう.今日は日曜日だから、多少長くなっても時間が取れる.さて、この国は科挙の国だ.隋の文帝により初めて導入されるが、北宋になると科挙によって登場した新官僚たちが政治・社会・文化に大きな変化をもたらした。試験の競争率は熾烈を極め、約3000倍とも言われている。合格者の平均年齢も、約36歳と言われている。20世紀初頭になっても、官僚は詩作や作文など教養面に優れることを最大の条件とし、経済・工業技術・軍事など実務面には無能であることをむしろ誇りとした。西洋列強の進出する中では科挙は時代遅れの存在となり、1905年に廃止された。
(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

もう一つ.科挙試についての文章を引用しよう.昔の科挙の試験の雰囲気が書いてある.ここに書いてあるような事を映画で見たことがある.こう言う歴史のある国だ.広い国だから、せめて、漢文だけでも統一しなければならなかった.漢字で中国全土がコミュニケーション出来る手段として、漢文が採用され、科挙がこうして20世紀まで続いた.5,600の言語があって、漢民族とはいえ、多数の人種が混在していて、文化、価値観が幾つあるかわからない国がこうした科挙制度によって、一つの国として維持出来た理由の一つかも知れない.

科挙試─郷試

郷試の予備試験である科試(倍率約100倍)を突破した者を「挙子」と呼ぶ。 郷試は3年に1回、8月9日〜16日(旧暦)にかけて、各省の首府で行われる。試験場は貢院といい、独房が蜂の巣のように何千・何万と並んでいる。挙子は、試験開始の前日、8月8日に入場する。 門前でまず人員点呼が行われ、各学校の教官が立ち会って本人に間違いないことを確認する。挙子はめいめいに大きな荷物を抱えているが、それもそのはずで、試験場でとりあえず3日3晩を過ごさなければならないから、硯(すずり)や墨、筆、水さしのような文房具のほかに、土鍋・食料品・せんべい蒲団・入り口にかけるカーテンまでもちこむ必要がある。

点呼がすむと、今度は身体検査がある。4人の兵卒が同時に挙子の着衣を上から下までなでまわし、荷物を開けさせて内容を調べる。書物はもちろん、文字を書き込んだ紙片は持ち込み厳禁で、もしそれを発見した兵卒があれば、銀3両を賞に与えられるというので、取調べは厳重をきわめ、饅頭(まんとう)を割って中のあんまで調べるといわれる。 それが終わるとようやく受験生は試験場に入り、自分の独房をさがしあてる。1日がかりの入場さわぎが終わり、挙子が全部それぞれ自分の号舎に落ち着くと、大門に錠が降ろされる。この時以後はどんなことがあっても試験の終了するまでこの門の扉は開かれないのである。 翌朝から試験開始である。係員がまわってきて、答案用紙と問題用紙を配布する。この日の出題は四書題3、詩題1である。挙子たちは、これから頭を抱え、知恵を絞って答案作成に取りかかる。時間は十分に、翌10日の夕刻まで与えられている。

まず、草稿紙の上で十分に案を練り、いよいよ自信ができたときに初めて清書に取りかかる。腹が減れば持参の饅頭を食い、時間に余裕のあるものは土鍋で飯をたく。雨が降ったりすれば大変だ。戸のない独房の中に容赦なく吹きつける雨で命よりも大切な答案を濡らすまいと、必死になって防ぐ。夜になればろうそくを灯すことが許されるが、もしそれが倒れて答案用紙に焼け穴でもこしらえたらおおごとである。

疲れればぜんべい蒲団をひっぱりだしてひと休みすることもできる。しかし隣の独房にこうこうと灯がついていると、自分一人遅れてはなるまいと、再びとび起きて答案用紙に向かう。疲労と興奮とが重なって、たいていの人は頭が少しおかしくなり、日頃の実力が発揮できぬものが多いが、ひどいのになると病気になったり、発狂したりする。(宮崎市定著『科挙』(中公文庫))

この科挙制度は中国の教育の歴史でもあり、こうした文化的な素地は今でもあるように思う.厳しい受験戦争がそれを引き継いでいる.現在の大学入学者数は2700万人で、大学入学率は23%、大学生の数は世界一であり、日本の10倍である.しかもそれはこの10年で、10倍になった.また、大学以上の学歴を持つものが7000万人以上もいる.2007年末に9年制の義務教育の普及率は99.3%だ。しかも教師の資格を持つ人は1964万人もいる.(人民網日本語版 2008年10月10日より抜粋)

私が毎月GLT研修で大連を訪問する時は東軟情報技術学院 (Neusoft)にかならず行っている。学生が15,000人いて、全寮制だ.朝6時45分から10時半まで勉強ばかりだ.授業時間中は誰も外にはいない.今年は全国で、600万人が卒業するが200万人は就職出来ないと言う国だからだ.景気とは関係なく、就職するところがない.ここを訪問する時は授業風景とか教授・学生とは接触しない.日本の学生と違い中国の学生は一生懸命就職するために勉強していると言うところを見せるのが目的だ.15,000人の寮である20棟以上のビル群も圧巻である.図書館も時々よるが、いつも満杯である.この現象は何処の大学も同じだ.日本では信じられない光景だが、事実だ.中国は何処の本屋に行っても人が一杯で、若い人が床に座って本を読んでいる。日本ではあり得ない事だ.

こうした大学の数はちょっと古いが1997年の中国の統計年鑑で、1020校。そのときの学生数が318万人だから、今の半分.だから、現在はもっと大学の数が多い.この国は10年大昔と言う感じだな.文化大革命が終わったのは1976年で、大学が再開されたのが1978年。その後の30年間で大学への入学者数は5400万人。留学生は121万人だ.これだけの数の人たちが東軟情報技術学院と同じように勉強し、生活している.この学生たちと卒業して間もない社会人を日本企業が採用しない手はない.中国の膨大な資産だが、その資産が使い切れていない.

9年制の義務教育制度も1986年の全国人民代表大会で決まったので、わずか20年で、ここまで来てしまった.中国語が標準語で制定されたのが1982年だから、教育もほぼ時を同じくして、国を挙げて、人材育成を開始したと言える.それが今までその勢いは止まらない.この国は先ほど示したように科挙のような暗記の国だ.日本も戦後暫くまでは「読み・書き・そろばん」が子供の必須科目だった.学校に修学する前から、近所の塾に通わされた.私もその恩恵に授かることはできた.「読み」が一番に廃れて行った.四書五経の読みだ。ただ暗記するだけの学習だ.戦後、幼児教育において、この「読み」はもうなかった.これを止めてしまった事は日本人の精神の育成においては返す返すも残念だった.

今思うに、こうした暗記の勉強は戦後私の代まではあったが、その後、だんだん廃れて行ってしまった.日本も中国も昔から文字の意味が解るが解るまいが暗記させられた.それが人生を通して精神構造の辞書となって蓄積されて行った.年を取って行く中で、小さい時に暗記した文言の意味がだんだん分かって行く.そう言う勉強をさせられていた.日本は敗戦して、GHQと日教組がこうした仕組みを壊してしまった.戦後の若い親もそうかと思ってしまった.戦前の良いものが何だかの判断がつかなかった.

前後、何でも壊してしまった.これだけは英語教育と並んで、大失敗だった.就学前の幼児の情操教育がなくなってしまった.欧米では子供たちに暗記させると言う幼児教育があるが、中国のように中身のある四書五経を暗記させると言うようなことはない.中国では日本の今のような義務教育が出来てから、わずか20年しかたっていない.そのわずかな期間でここまで来た.そう言う事だから、課題はきりがないくらいにありそうだ.欧米に留学中の教授を夏休みに呼んで、授業をしてもらうような事までしている.

70%の卒業生しか就職が出来ないから、就職するための予備校まであるそうだ.これは日本とは違う.日本の企業の仕事のスピードが遅いと言ったが、学生も同じだ.4年後には3割が就職出来ない.英語の勉強も毎朝6時半から素読を声を出して行うと言うのは納得出来る.辛いと言う事ではない.そういうふうにしなければ、生き残れないと言う事だ.そうした雰囲気は日本にはない.これは何とかして、我々が学ぶべきだ.上海で採用した社員は英語を話せるからと言って給与は変わらない.

この今の中国の教育の実態が良いとか悪いとかではない.凄まじい勢いで、だーーーっと来ている.一体どうなっているんだと言う感じだ.日本のかっての受験地獄どころではない.我が家の中国人の子供はもう中国人の学校にはいっていないので、中国の学校にはもう戻れない.レベルがあわないからだ.『古文真宝』 眞宗皇帝勸學文に「書中女あり顔玉の如し」と言う言葉がある.中国の家庭では「本を読まないと、良い奥さんがもらえないよ.」と教える.こう言った類いの家庭教育は日本とは違う.多民族故の生存競争に生き抜くための教育を家庭が行うのである.そうしなければ、自分の種族が存続出来ないと言う歴史があったからだ.

中国青年報 2005年3月14日に掲載された1978年から1981年に産まれた青年の調査結果を引用しよう。この調査は北京、上海、広州、深せん等の8都市で行われ、年齢が23〜26才、男性が53.8%、女性が46.2%、うち一人っ子が57.8%。母集団はわからない.

「自分が従事している分野で頂点に到達したい」・・・・・・・・・・・83.7%
「自分は独特な風格を持つ人になりたい」・・・・・・・・・・・・・・82.7% 
 (収入、教育レベルが高ければ高いほど、「独特な風格」への追求が高いという傾向が出てきている)  
「ほかの人が自分のことをどう見るかを気にしない」・・・・・・・・・12.5% 
 (父親世代での同様アンケートの結果よりずいぶん高い)  
「現在の仕事を失っても、すぐ新しい仕事が見つかると思う」・・・・・76.3% 
 (大学以上の学歴を持つ人の中にはこう思う人が82%、月給3000以上の人の中にはこう思う人が91.5%)  
「リーダーとして認めて欲しい」・・・・・・・・・・・・・・・・・・64.9% 
 (教育レベルと収入が高ければ高いほど、リーダーになりたいという意欲が強い傾向が出てきている)  
「現在の生活に対して非常に満足、比較的に満足している」・・・・・・55.3%  
健康状態への満足率・・・・・・・・・・・・82.0%  
人間関係への満足率・・・・・・・・・・・・76.6%  
家庭生活への満足率・・・・・・・・・・・・73.1%  
生活水準への満足率・・・・・・・・・・・・57.8%  
愛情への満足率・・・・・・・・・・・・・・56.7%  
勉強・仕事の前途への満足率・・・・・・・・50.4%  

こうした過激な受験勉強を経て来た若い人たちの考えはやはり日本の高度成長期の若者の雰囲気を感じる.しかし、大分中身が違う.トップに立ちたいと言う欲求が83%もあるのは中国人ならではと思う.「独特な風格」の意味がいまいち分からないが、差別化されたスキルを持った人材と言う事か.そのことが今の給与格差を生んでいる.スキルがない人間は何倍も給与が安い.他の人がどう見ていようが関係ないと言うところは見ている暇がないと言う事かも知れない.

辞めても直ぐに仕事が見つけられるという比率が76%もあると言う事はこのアンケートをとったレベルが日本企業の工場で雇っている人たちのレベルでない事は確かだ.中国の中でも先進国のホワイトカラーだ。中国青年報が選んだ母集団がわからないが、都市部の青年たちが「仕事を重視し、独自の個性を追求し、自信があり、楽観的であり、現状に満足している」という事がよくわかる.

こうしてデータを見てくると私がかねてから言っている日本が保守還暦で、中国が躍進している事がよくわかる。日本人はかって受験地獄があったが、猛烈に勉強したのは受験までで、大学では大して勉強はしなかった.いまもそこのところは変わらないと思うが、中国では違う.もの心ついてから、ずーっと受験地獄が続いているようなもんだ.社会に出てもそれが継続していて、それが自信になって来ていると言う感じだ.中国人は日本人のような繊細な神経は持っていない.大陸に住んでいる人はこうした性格の人が多いから、このような過酷に見える環境でもあまり苦にならないのだと思う.この性格は民族に関係なく、中国人に共通する性格のようだ.

日本企業の仕事の仕方は「あうん」で効率が悪いと言って来たが、このように中国の若者の教育の実態を見てくると、欧米のようなギブ・アンド・テイクだけではない、何か別の我々に欠けているビジネスにチャレンジしようと言う大きな流れがあるように思う.私がかって、アメリカの会社で経験した毎日11時まで働くと言う感じに近い.自信を持って生きているが、絶えず背伸びをして、出世を急ぐ。

そこに収入がついてくると言った事だ.中国もアメリカとにたようなところがあって、能力、努力、スキルによって人材が年数に相応しないで、飛躍出来る素地がある.日本の企業は終身雇用の呪縛があるから、それが出来ないが、こうした人材が混在することによって、企業の風土が変わって行く事は間違いない.中国との給与格差があるうちに中国人を採用すると言う事により、企業のチャレンジする風土を高めることはできる.仕事を速くすることはできる。それとグローバル化のBPOが合わさればさらに加速される.

2055年には日本の人口が9000万人になる.労働人口は半減だ。そのときには1000万人の移民が必要になる.今から日本人がこうしたい民族を受け入れるための日本人の価値観を新たに習得して行く必要がある.これがグローバリゼーションだ.それも日本人の価値観とは別にである.外国人の日本への受け入れは日本人の考え方を変えて行かない限り、彼らを理解することはできない.彼らが我々の文化、価値観を習得し、日本人のなりきると言うのは出来ない.

中国人は何代たっても、自分の言語、価値観を捨てないし風化させない.日本人とは違うと言う事を我々は認識しなければならない.よく、日本に長くいる中国人は日本人になってしまうとか日本的になってしまうと言う事を聞くが、中国人の世界にもどれは直ぐに中国人に戻れる.そこは日本人とは違う.米国に30年も日本人が住んでしまうとその日本人はもはや日本人ではないが、中国人であれば、3代住んでも中国人だ.

明日は「賃金水準の上昇」だ。そもそも購買力平価が中国は1ドルあたり3.4元だ.これは現行の為替の丁度2倍になる.中国の給与が2倍安く感じる。そうはいっても、あと数年もすれば、日本は中国が低賃金の国だと言う認識が持てなくなる.今ですら、購買力平価で見ると5000万人以上が日本人以上の生活をしている.そのことを日本人は知らない.ましてや、中国に「先進国」が存在している事すらしらない。

日本人は相手の言うことばをすぐに信用してしまう.中国は「発展途上国」だというが、日本人はその言葉を信じてしまう.だが、それは正しくない.「発展途上国」もあるが、日々「先進国」の部分が驚異的なスピードで、拡大していると言う現実を知らなければならない.その部分を中国人は政治家も経済人も決して言わない.賢いとしか言いようがない.爪を隠している事に日本人は気がついていない.GDPが突然3年前に7位から3位になったが、今度は何が起こるかわからない国だ.中国人の言う事は「嘘は言わない」が、言葉通りに受け止めてはならないし、統計値もその数値通りに受け止めてはならない.中国では日本と違い、平均値と言う数字は何も意味しない.

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2008年12月20日

「人材の採用」

昨日は西出さんの忘年会に出席した.彼の会に出るといよいよ年の瀬だね.師走だ。この週末も忙しいぞ.このブログもゆっくり書いていられない.さて、今日は「人材の採用」だ。私の商売のBPOの革心にあたる部分だ.

中国人事科学研究院がまとめた「2005年中国人材報告」では、中国の就労人口に占める高学歴人材の割合は先進国の1990年代半ばの最低水準(11%前後) よりも、さらに2~3%低いと指摘し、また、政府の第11次5カ年計画(2006 ~10年)は、経済・社会の発展によって人材に対する需要が一層拡大し、2010 年には専門技術人材の不足が1746万人~2665万人に達するとの見通しを示して いる。((社)日本経済団体連合会 2006年5月16日 )

一方で、この10年で10倍にふくれあがった2600万人の大学生がいる.来年は600万人が卒業するが、そのうちの200万人が就職出来ない.景気に関係なく、就職の場がないのである.であるから、専門スキルの人材が不足していると言う一方で、スキルのない人材は余っている.今までは日本企業はスキルのいらない工場の労働者を採用して来た.この人たちは中国の後進国に属する部分の人たちで、農民である.そう言う人たちはいっぱいいるがこれからはこうしたスキルのない人材はいらない.

今ここで言う人材と言うのは先進国としての中国におけるホワイトカラー人材だ.以下に労働者の平均給与を示しておこう.これはあくまでも平均であって、スキルが要求されるポジションになれば給料は格段に高くなる.課長職であれば、この2倍の年収8万元.部長職であればさらにその3倍の24万元。外資系の人材コンサルの日本語がわかるシニアマネージャーになると50万元。同様に100人規模のホワイトカラーの企業の総経理になると同じく50万元.一方で、工場の労働者は相変わらず、大連で、月給1000元。

2007年 労働者平均月額給与(各行政区別) (単位:元)
行政区 月額給与     行政区 月額給与
1 上海 4,109      17 湖南 1,795
2 北京 3,876      18 山西 1,794
3 チベット 3,842    19 新疆 1,786
4 天津 2,912      20 四川 1,776
5 浙江 2,591      21 陜西 1,775
6 広東 2,454      22 甘粛 1,749
7 江蘇 2,281      23 河南 1,745
8 寧夏 2,184      24 貴州 1,722
9 青海 2,181      25 吉林 1,709
10 遼寧 1,934     26 雲南 1,707
11 重慶 1,925     27 河北 1,659
12 山東 1,904      28 湖北 1,652
13 福建 1,857      29 黒龍江 1,616
14 安徽 1,848     30 海南 1,613
15 広西 1,825      31 江西 1,533
16 内モンゴル 1,824

出所:「2008年版中国統計年鑑」より、ジェトロ大連作成

学生の外国語の専攻は英語が90%、日本語が5%。また、日本は留学先としても2005年度が6位で、2007年度は9位だから、日本企業への就職の関心は極めて低いと言えよう.2005年度の希望就職先の調査では上位45社にはソニーと松下だけであった.そのことからして、彼らの関心度の低さが伺える.昨今の日中両国間の政治的軋轢を背景とする反日感情が依然としてあるにしても、中国での調査(2008年5月19−20日実施) によれば、四川大地震に対する日本の支援で中国人の対日好感度が上昇した。対象者1000人の83.6%の人が日本に対して好感を持った. 逆に日本人の66.3%が中国人に対していい印象を持っていない.(2007 日中共同世論調査 「日中両国に対する印象)

わたくしの上海の会社が復旦大学と共催で、2006年7月25日に上海で、復旦大学新速佰合同シンポジウムを開催した.後援にはJETRO 上海商工クラブ 日中経済促進機構 日中経済協会 が賛同してくれた.議題は「中国人の人材育成が最大の成功要因」で、復旦大学日本研究中心主任 樊勇明氏に挨拶を戴いた.その他4人の講師に講演をお願いした.150人の日本企業の方々が参加した.現地の企業の関心の高さを知ることができた.

ここでの関心事は日本企業特有の雇用課題についての提言であった.

ビジョンがない.
給与が固定給だ。
将来のキャリアパスが明確でない.
人事制度がグローバルになっていない.
昇進が遅い
研修が充実していない.

こう言ったテーマは欧米の企業に比較すると日本企業は中国人にとって魅力がない.今でも日本企業のこうしたスタンスは変わっていない.2007年に上海の大手の日本企業にこうしたテーマでコンサルティングをしたことがある.現地の要望で行ったが、日本の本社はこの案件を経営会議に上程しなかった.人事担当の常務の話によれば、時期早尚と言う事であった.こうした人事案件での日本企業の課題は日本の人事制度を変えなければならないと言うことにあるからだ.

そもそも日本企業は外国人を日本本社の人事データベースに名前を入れる習慣がない.中国人だけではない.アメリカ人もである.欧米企業からすると奇異に感じるが、ごく少数の企業を除いて、何処も外国人の社員を登録していない.だから、上記に挙げたような課題を日本の本社と共有することができない.簡単に言えば、大連の総経理が日本人であれば、年に一度は日本で健康診断を受けることができるが、北京の総経理が中国人の場合にはそう言うことはできない.と言う具合だ.いわば差別をしていると言う事になる。こうした慣習は戦前からある.特に中国人に対しては昔から蔑視の風習がある.一方では以下のような文言がある。

戦前の中国人の内地雑居論で、「労力および商売の競争に就いては、中国人のために、敗を取らざるべからず。」とみなしていた。その理由として、中国人が鋭敏で、勤倹、忍耐力において日本人より優れている。この背景には中国人に対して、「脅威と恐怖の念」と「蔑視と差別と言う屈折した感情」が混在していた。 (1889年雑誌「日本人」)

こう言う事が研修、昇進、評価、報酬、育成、福利厚生において差別されている.なぜそうなのか私には理解出来ない.当時、上海でのシンポジウムを開催した時には参加者はこうした雇用課題に全員が賛同してくれたし、JETROの当時の所長であった薮内さんはパーティの挨拶でそのことを強調していただいた.しかしである。日本の本社こうした事への反応は全くない。

今の中国の日本企業の最大の課題はこうした人事政策である事は間違いないが、日本企業の本社がそうした課題に対して関心を示さないのであれば、コンサルティングのしようがないので、そうした事業を2007年に止めてしまった.現法の要請で、そうした事を行っても、本社の人事制度が変わらないのであれば、そこに勤める中国人は決して本社の役員にはなれないし、マレーシアの社長にもなれない.

そんな馬鹿な話はないと私は思うのだがほとんどの日本企業の人事はそうは考えないようだ.日本人の価値観の悪いところだ.「真面目」「正直」「勤勉」「実直」「嘘つかない」日本人の価値観は世界最高だが、中国人に限らないが、他民族を排除してしまう日本人の価値観は改めなければならない.日本人の価値観は特殊である。その特殊なところを守るべきところと守っては行けないところをいま、考え直さなければならない.

よそ者を排除しようと言う考えからは出島のように昔からあるが、今の日本の将来を考えるとそうした考えは直ちに止めなければならない.そうでなくても、もはや日本はアジアの一員ではないように思う.アジアがもはや日本を仲間に入れていないのではないだろうか。そうでなくても、日本人は国際会議で発言が出来ない.しないのではなくて、出来ないのであるからどうしようもない.これは前から言っているように英語ができる出来ないの問題ではない.価値観の問題だ.私はその価値観を変えなければならないと言っている.

さて、中国人の会社に対する考え方を以下に示そう.

<中国人の会社・仕事の捉え方>

個人主義
暗黙のルール、人による管理を嫌う
合理的かつ公開された制度(就業規則、報酬・評価制度、昇 格基準)による管理を好む
自らの責任範囲を線引きする
自分自身の貢献・成果に対する正当な評価・処遇を求める
実力主義、能力主義、成果主義であり、即時的な報酬への反 映を求める
「会社」より「個」を重視した独自の人間関係を築く (会社との連帯感が薄い)

キャリア志向
仕事の内容を重視する
中長期的視野に立って、プロを目指す
さらに上の仕事、さらに大きい責任に挑戦する
研修による能力アップを重視する

形式知管理
暗黙のルール、人による管理を嫌う
合理的かつ公開された制度(就業規則、報酬・評価制度、昇 格基準)による管理を好む

((社)日本経済団体連合会 2006年5月16日 )

私がこの4月まで、4年間上海で、日本の企業とおつきあいして来たが、こうした事は現法の日本人はよく理解している.問題は日本の本社だ.いくら上海で、こうしたコンサルティングを行ったところで、日本がその方向に向いていないのであれば、如何ともしがたい.よく日本の本社のトップは現地化と言って、中国人をトップにしようとしている.日本の価値観を持った中国人をトップにする事はそれなそれできわめて大事な事だ.

現地の企業が中国人の価値観を持つことができるからだ.しかしながら、2点において問題がある.第一点は現地の制度そのものを上記に列挙したように現地流に変えなければ社員は定着しない.第2に日本の本社を変えなければ、本社の人間は中国の多様な人材を理解する事はできない。本音でコミュニケーションが出来なければ、そのためのオーバーヘッドが今と同じようにかかってしまう。

ここで注意しなければ行けないのは中国人の価値観にすべてを合わせる必要があると言っているのではない.中国人の価値観の視点を理解しなければならないと言っている.そうした上で、日本人の価値観の優位点を中国人の社員に理解してもらう事が大事だと言う事だ.日本人の価値観の劣位点は逆に改めなければならない.劣位点とは「あうん」の仕事のやり方だ.優位点とは「真面目」「正直」「勤勉」「実直」「嘘つかない」ところだ。ここは徹底的にこのポイントを中国人に教育すべきだ.

日本人はOJTは得意だが、これは時間がかかる.教育プログラムは欧米が進んでいるし、中国人はこうした知識習得に熱心だ.その方が2倍の早さで、業務を体得出来るからだ.もう一つ日本の仕事の仕方での劣位点は仕事のスピードが遅い事だ.そのことすら知らない日本人が多い.それとあわせて、意思決定が曖昧で、遅い.さらに、コミュニケーションでは日本人ですら本社との温度差がある.「あうん」は当然暗黙のお互いの合意を前提にしているところから、常識と言うか前提の範囲が狭い.こうしたところは中国人の採用だけでなく、日本人のグローバル化を考えると日本人が直さなければならない課題だ.

もう一点気になることがある.それは日本人は多様な価値観を受け入れる素地がない.我々が持っているのは単一民族の価値観だ。国際感覚と言ってしまえば聞こえは良いが、私のようにアフターファイブ中国人と一緒に生活している日本人はほとんどいない.寝るまで異民族と一緒にいて、抵抗を感じない日本人は少ない.そう言う環境になかったからだ.これは語学の問題ではない.

一方で、日本人としての自覚を持っている日本人も少ない.日の丸だとか国家に対する日本人としての精神を教育されてこなかったせいかもしれない。日本の歴史についても日中の歴史についても知らない人が多い.私だけではないと思うが、高校の勉強も1840年のアヘン戦争あたりで、受験勉強のために終わってしまった.年代の暗記はしているが1899年に起こった義和団の乱の「扶清滅洋」の事は知らない.日露戦争も「坂の上の雲」を読んでいる範囲でしか知らない.

靖国参拝とか南京事件、慰安婦問題がどうのいうことではない。異民族とつきあうと言う事は自分の民族の自覚を持たなければならないと言う事だ.海外に移住した日本人は昔戦前に移住したブラジルを除いてほとんど現地に同化してしまった.それは日本人としての精神を持っていなかったからに他ならない.中国人は多民族だから、自分の民族に対する意識はきわめて強い。台湾人はどこに行っても台湾人と結束する.何代たっても、風化しない.拝む神様は決して変わらない.福建省の閩南語をはなす厦門(アモイ)周辺は同族だから、彼らとは決して仲違いはしない.

日本人が最も強い特徴はロイヤリティとチームワークだ。実はこのビジョンが中国人には最も必要とされる項目だ.中国人はそうした事が出来ないと日本人が思っているだけで、決してそう言うことはない.チームワークの基本は本人の存在感だ.本人が能力に見合った仕事を任され、そこに存在感を持つことができれば、会社を辞めることはない.勿論、正当な評価と教育、報酬、昇進が連動していなければならない。

明日は「教育レベル」だ。人材の質について検討してみよう.

swingby_blog at 04:27コメント(0)トラックバック(0) 
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海野 恵一
1948年1月14日生

学歴:東京大学経済学部卒業

スウィングバイ株式会社
代表取締役社長

アクセンチュア株式会社代表取締役(2001-2002)
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