2009年05月

2009年05月31日

Free Trade debate3

昨日はチャイナリスク研究会のメンバーご苦労様でした。最近内容が難しいと言うことで恐縮している。確かに難しいと言うよりかは、興味が持てないと行った方が正しいかもしれない。欧米の人はグローバリゼーションの話をする時に、こうした基本要素の話とか、歴史とかを話をする。日本人は単刀直入に問題に入っていく。そうなると、問題の捉え方が、どうしても軽くなってしまう。日本の景気が特に悪いのも、目先でしか見ることができなくなってしまう。だから、こうして書いている。

昨日はグラフばかりだった。今週も受験勉強みたいな内容だが、こうした勉強をする機会は皆さんの私もないので、向こう3、4年の日本のグローバル化の危機を迎える前に一度整理しておく上では良いと思う。好況の波が来ると、その金で、中国が日本の企業を買いにくる。Jパワーのときは一社だから、日本政府は守ったが、それが100社になったら、もう誰も止められない。その前に、しっかり課題を整理しておくだけでなく、そのための対応策を考え、そのアクションをとっておかねばならない。勿論、こうした議論以前に、日本の企業はグローバルスタンダードで、仕事をしようと言うのは必定だ。今日はイギリスでの1838年のトウモロコシ法の廃止に関連した自由貿易の歴史だ。我々には関係ない話だが、そうとも言えない。今の農業の関税に関連している。当時イギリスは国内のトウモロコシの農業を保護するために関税をかけていた。それを廃止まで持っていた経緯を今日は扱っている。皆さん、毎日忙しい日々かもしれないが、今しばし、こうした歴史があったことを考えるひと時も大事ではないだろうか。

相互の自由貿易は輸出業者の利益になる。

自由貿易のための早期のロビー活動は反トウモロコシ法同盟の企業家によって行われた。(注:1838年にマンチェスターで結成され、1846年にこの法律は廃止された。1836年に反トウモロコシ法協会が作られたが、これは失敗した。この法律はイギリスの国内のトウモロコシの価格を守るために、輸入に対して関税をかける法律であった。)この紳士たちの幾人かは繊維工場を所有しており、輸入を禁止するトウモロコシ法を廃止することによって、1830年代のイギリスは小麦を輸出している国々に、綿布を売ることができるだろうと信じていた。

David Ricardoは反トウモロコシ法に介在し、その過程で、比較優位の理論を展開した。(Reciprocal Trade Agreements Act)この議論は国内生産者による重商主義と貿易保護主義に対して、自由貿易に賛成する意見であった。

1950年になって、Jacob Vinerによって、相互に関税を下げる通商圏は単に需要サイドに利益をもたらすだけでなく、供給サイドにも利益をもたらすことを示した。このことを貿易創出( trade creation 以下のところにVinerの日本語の説明がある。http://www1.doshisha.ac.jp/~yonozuka/International_Trade/InterT-11.htm)といい、供給サイド全体に利益をもたらし、各国の中において、そのパートナー間で、最も高い比較優位で生産している企業に対して、資源が割り当てられるとこうしたことが生じることになる。

この議論は日本貿易振興機構アジア経済研究所 石戸 光氏に易しくかつ詳しい。http://dakis.fasid.or.jp/report/information/tradeanddevelopment.html

自由貿易に賛成した道徳的な議論

18世紀、19世紀の知識人は自由貿易を支援していたが、増大する物質的な豊かさという題目のもとでは滅多にそうしたことはしてこなかった。多くの場合、自由貿易が豊かさの最も重要でない理由として考えられていた。むしろ、国際社会は交易の増大によって、改善されると考えていた。後にこれらの人たちの何人かは以下のような社会政治的な議論をしている。

自由貿易は正しい。

自由意思論(リバタリアニズム:他者の権利を侵害しない限り、各個人の自由を最大限尊重すべきだとする政治思想である。 哲学、神学、形而上学においては決定論に対して自由意志の存在を唱える立場を指す。)を支持する人たちはいかなる貿易に対する制約は経験に依存することなく、不道徳だと主張し、外国商品を買うために消費者主権の権利を制限することは合法的な政府のすることの範囲外だという。

消費者主権:消費者が何をどれだけ買うかは完全に消費者の主権に属するものであり、これが企業の生産体制を決定すると考える厚生経済学の用語。自由市場経済に規範的価値を与える。

この考えは反トウモロコシ法急進派の伝統であり、Richard Cobdenは1838年の議会への嘆願書で、「消極的自由」への嘆願として結論づけている。

消極的自由は自由概念の一つで、他者の権力に従わない状態、他者の強制的干渉が不在の状態を意味する。例えば信教の自由では政府が国民個人の宗教活動に干渉しないと規定(国家からの自由)するように、消極的自由は他者の干渉が物理的に無い範囲を規定する。消極的自由は「〜からの自由(liberty from)」、積極的自由は「〜への自由(liberty to)」とも呼ばれる。

「永遠の正義の原則の一つを支持する。それは万人の権利を自由に奪いことはできない。その権利とは労働の結果を他の人々の生産と交換すると言う権利のことである。また、一方で、社会の一部を他の階級の人たちの費用で、保護してきているが、それは不健全であり、かつまた、正義ではない。この嘆願者たちは真面目に名誉ある議会に懇願し、外国のトウモロコシとその他の外国の生活品の輸入に関連するすべての法律を廃止し、農業、製造に影響を与えるすべての範囲で、真実で、平和な自由貿易の原則を実行し、制限のない、産業の雇用と資本に対する障害を取り除くことを請願する。」





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2009年05月30日

Free Trade debate2

生産可能性曲線と無差別曲線

ここに仮想の国家Aの生産可能性曲線があるとする。単純化のためにその国家は2つの商品、米と肉だけ生産していると仮定する。この国は資源が制限されているので、米の追加一単位の生産には肉の生産から幾ばくかの資源を転用しなければならない。米と肉の間の取引のための特定の比率はこの分析では重要ではないので、無視することにする。

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ここに仮想の国家Bの生産可能性曲線があるとする。ここでも、その国家は2つの商品、米と肉だけ生産していると仮定する。同様に、この国は資源が制限されているので、米の追加一単位の生産には肉の生産から幾ばくかの資源を転用しなければならない。米と肉の間の取引のための特定の比率はこの分析では重要ではないので、無視することにする。この2つの国家の取引の相対的は比率が異なっていると言う事実がここでは重要である。この際が比較優位(comparative advantage)を発生させるが、これは経済学において重要なコンセプトである。ある国がすべての商品の生産において、絶対優位であるとすれば、双方の国家は比較優位のために、貿易によって利益を得ることができる。

http://ja.wikipedia.org/wiki/比較優位 を参照のこと。
Free_trade_world

最初の2つのイメージ図は輸入に依存しない自給自足経済の状態を仮定している。2国間には貿易が発生していないことを意味する。もし自由貿易が可能であるならば、緑のラインが世界全体の生産可能性曲線となる。この世界の生産可能性曲線は2国の生産可能性曲線をあわせたものである。生産可能性曲線の2本の線は結合すると、必ず、図に示すような変曲点をともなう形になる。

世界の生産可能性曲線とここの国のそれと比較してみよう。明らかに、自由貿易が許されているのであれば、世界の方がより多く生産し、消費することができる。この生産可能性曲線に到達するためにはベクトル加法(vector addition)を使わなければならない。国家Aと国家Bの肉と米の生産高はそれぞれ可能な生産点に対して、合算されたものでなければならない。
Free_trade_world_composition
世界の生産可能性曲線に到達するための直感的な方法は各国が一つの商品だけを生産することによって、まずは分業を仮定する。上図によれば、肉の最初に一単位はB国でだけ生産される。(赤線)B国では肉を生産するためにすべての資源を利用してしまうと、A国(青線)は米の生産から肉の生産に資源をシフトし始める。別の軸で考えるとその反対になる。

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A国に戻ろう。ここに同じ生産可能性曲線の図があり、そこに、無差別曲線を追加した。無差別曲線は「選好」と「効用」を測定する。この国の「選好」と生産の相互関係は生産され、消費された商品の実際の組み合わせの結果である。A国の状態は輸入に依存しない自給自足経済である。

選好(せんこう、preference)とは、社会科学、特に経済学において使用される概念である。ミクロ経済学の一部をなす消費者行動理論において、個々の消費者の嗜好(好み)は複数の選択肢間の順序付けとして定式化され(選好関係)、選択肢bが選択肢aよりも好ましいという選好関係はa ≤ bと表現される。

無差別曲線(むさべつきょくせん、Indifference curve)は、ミクロ経済学で、消費者の選好の幾何学的表現で、同等に好ましい、または、同じ効用が得られる財の組み合わせを結んだ曲線。等効用線ともいう。消費者行動の分析に用いられる。
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これはB国の経済を示した図である。ここでも、生産され、消費された商品の実際の組み合わせはこの国の生産能力と国民の選好に依存する。それゆえ、B国で消費された商品の組み合わせがA国のそれと異なるのは驚くにあたらない。
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2つの国の情報をあわせると上図になる。
Free_trade_world_eqm_comp
2つの国の輸入に依存しない自給自足経済の消費をあわせると、各生産され、消費された商品の合計は自由貿易のもとでは世界の生産可能性曲線より少ない。このことは貿易によって、消費できる商品の絶対量は輸入に依存しない自給自足経済のもとで利用できる量よりも多いと言うことである。


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Free Trade debate

Free Tradeが終わって、今日からFree trade debateだ。今週一週間はまた、追加の自由貿易だ。先週は新しいことがたくさんん出てきたので、十分にこなすことができなかった。今週からはこのFree TradeにDebateが加わるので、議論の題材が一杯出てくる。皆さんも経済の勉強を終えてから久しい方が多いと思う。ぜひこの機会におさらいしてほしい。丁寧に対応していきたい。経済の基本は経営の要素の一つだ。なぜ景気がいいのか、なぜ日本だけが今回の金融恐慌で落ち込んでいるのかは目先の報道ではわからない。もっと、落ち着いて、勉強する必要がある。そうすれば、今の日本の大きな課題が見えてくる。そうした視点が今の経営者にとって必要だ。

これもひとえに、日本のグローバリゼーションを進めるための方策を検討するためだと理解してほしい。昨日も第一法規の田中社長と菊池さんとこうした話ができた。BPOとかアウトソーシングはあくまで手段だが、日本企業がこれからアジアで生き残っていくためには仕事のグローバル化が必須だ。30%は生産性があがる。

BPジャパンの脇若社長ともあった。彼とは久しぶりで、6月末に社長を辞任して、日本は来月いっぱいで、それ以降はEUで環境のNGOで働くそうだ。てっきり、BPの人とばっかり思っていたが、出身は三井物産だった。昨年末に本を出版されていたが、精力的な方だ。グローバル人材が少ない日本になって、その少ない卓越した一人だ。以下のところのアマゾンで売っている。ぜひ買って読んでほしい。

http://www.amazon.co.jp/世界で戦うキャリアづくり―グローバルを知る外資系トップが語るリーダーの条件-脇若-英治/dp/4478006776/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1243629147&sr=8-1

昨晩は社内の懇親会があった。この6月が決算で、弊社もやっともうじき、6年目に入ることができる。日本はベンチャーが育ちにくい。1000社に3社しか生き残れないといわれる創業の壁をやっと乗り越えることができた。これもひとえに皆様のお陰だ。では本題に入ろう。

Free trade debate

自由貿易は20世紀、21世紀の経済学において、最も議論の多いトピックの一つである。自由貿易に関する議論は経済学、倫理学、社会政治学に分類することができる。経済学者間の学問上の議論は現在、自由貿易に賛成で、少なくとも1960年代以来、合意がとれており、これは18世紀の理論に基づいている。こうした議論は公衆の間でも、政治家の間でも続いている。

自由貿易の議論

自由貿易の歴史において、2つのタイプの議論が海外からの購買を支持することによって、進歩してきた。これは広い意味での自由貿易である。
1 第一番目は本質的に経済学であり、自由貿易が社会をより繁栄させるだろうと言うことについてである。これらの多くは技術的な議論で、経済学の規律から来ており、最初は特に、アダムスミスの「国富論」で、これは重商主義への信奉を覆した。
2 自由貿易のもう一つの議論は後段で示すように「倫理」の議論として分類することができる。

自由貿易に対する経済学の議論

古典派経済学での分析では自由貿易はグローバルレベルで、アウトプットを増加させ、自由貿易が国家間の分業化( specialization)を可能としたからである。分業化によって、国家は乏しい資源を特定の商品やサービスの生産に充てることによって、その国家は比較優位に立つことができる。分業化のメリットは規模の経済性と結び合わせて、グローバルな生産可能性曲線(production possibility frontier)を増大シフトさせる。

生産可能性曲線とは現存の労働、土地、資本などの諸資源を、現在知られている技術的知識のもとで、最も効率的に利用した場合、最大限どれだけの量の諸生産物の組み合わせがつくり出されるかを示した概念。(ゼミナール経済学入門)
http://ameblo.jp/jmdn/entry-10231830576.html

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生産可能性曲線(production possibility frontier)において、ここで言う、増大しシフトとはこの曲線の上方へのシフトのことである。

生産可能性曲線の増大シフトによって、生産される商品とサービスの絶対量は自由貿易のもとで最大化する。そればかりではなく、この商品とサービスの特定の組み合わせによって、グロ−バルの消費者に最も高い効用をもたらすことができる。

効用(こうよう)とは、ミクロ経済学で用いられる用語で、人が財(商品)を消費することから得られる満足の水準を表わす。近代経済学においては、物の価値 を効用ではかる効用価値説を採用し、消費者行動は予算制約による条件付き効用最大化問題として定式化される。一方、マルクス経済学においては、物の価値を 労働ではかる労働価値説を採用している。

質的な議論

自由貿易政策は一般的に自由放任主義経済を支持する政治および政党としばしば、結びつけられている。彼らはより早い成長を容認している。自発的な交換は自発的な性格のおかげで、関与する人々に(事前に)利益をもたらすと仮定している。そうでないとすれば、彼らはなぜ交換をするのかと言うことだ。かようにして、自発的な交換を制限することは交易を制限することでり、究極的には富の蓄積を制限することになる。

生産可能性曲線と無差別曲線


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2009年05月29日

Free Trade9

昨日は岐阜に行ってきた。イビデンの栗田さんと河合石灰の河合さんにあってきた。栗田さん 昨日はお時間いただきありがとう。河合さんはいつも海野会に来てくれていたので、一度岐阜まで行ってみたかった。「膳」というレストランで昼をごちそうになったが、最高だった。私は浜松に8年住んでいたが、地方都市で生活ができれば最高だ。彼の会社は創業125年だそうだ。いろいろな意味で、すごいことだ。行き帰りの時間にブログを書くことができたので、昨晩アップしておいた。最近の新幹線は車両にもよるが行きのものは座席の下に電源がついていて、無線LANまで有料だが、可能だった。変なところに感激した。だから、旅は快適だった。JRも進歩が激しい。パソコンはMACのAIRを使っているが、2時間しかもたないので、この車両であれば、大阪も苦にならない。

昨日はサミュエルソンの論文のところで、彼の論旨がわからなかったので、つまずいたままだった。昨晩読んでみたが、簡単に理解できるものではなかったが、今朝はそこからだ。Free Tradeは意外と底が深かった。アダム・スミス、リカードさらにはサミュエルソンまで出てくるとは思っていなかった。日本のグローバリゼーションにそこまで理解する必要があるかどうかは疑問だが、大学を卒業してから、40年近く経っているので、今一度、議論をする上ではきちんとおさらいをする必要がありそうだ。BPOとかアウトソーシングになんで、サミュエルソンとかアダム・スミスなんだと言うところは確かにある。難しい計算式が出てくるので、そこまでは理解できなかった。ではそのサミュエルソンのところから続けよう。

このサミュエルソンの論文では「技術革新が比較優位産業Aに起きたのか、それとも比較劣位産業Bに起きたのか、もしくは労働市場を飽和するほどの実賃金率を上げて、完全雇用に近づけようとするのか?」中国とかアメリカで。「経済学者たちはグローバリゼーションに対して、あまりにも考えを単純化しすぎた自己満足をしている。」と言う。労働者はいつも勝つことはないとも言う。何人かの経済学者が強調していることだが、関税障壁は貧しい国が自国の産業を保護するためであり、豊かな国においては労働者に別の仕事を確保するために時間を与えるために存在しなければならないとも言っている。

これは以下のサミュエルソンの論文のきわめて一部分の引用なので、論文そのものを読まなければ全貌は理解できない。この論文は翻訳されていないので、仔細はまた別途機会があれば解説することにする。内容は平易ではない。
Journal of Economic Perspectives—Volume 18, Number 3—Summer 2004 —Pages 135–146
Where Ricardo and Mill Rebut and
Con?rm Arguments of Mainstream
Economists Supporting Globalization
Paul A. Samuelson
www.econ.jhu.edu/people/Barnow/samuelson.pdf

また2008年度の通商白書
第1節 諸外国のグローバル戦略に一部引用があるので、そこを参照してほしい。基本的な考え方は理解できる。www.meti.go.jp/report/tsuhaku2008/2008honbun_p/2008_17.pdf

エクアドルの大統領Rafael Correaは「自由貿易は詭弁だ。」と非難している。彼は彼の著書The Hidden Face of Free Trade Accords(自由貿易協定の隠れた顔)の冒頭でこう語っている。この本の著者の一人は今日、Correaのエネルギー大臣であるAlberto Acostaである。彼の書籍の原典はケンブリッジ大学の韓国人の経済学者Ha-Joon Changが書いたKicking Away the Ladder(はしごを蹴飛ばせ。)で、その中で、自由貿易において、「英国システム」と対立している「アメリカのシステム」との違いを解説している。英国システムはアメリカ人によってはっきりと、「英国帝国主義のシステムの一部」と見なされていると書いている。

Kicking Away the Ladderは要約が以下のところにあるので、見てほしい。佐藤健彦氏が翻訳している。http://www.diplo.jp/articles03/0306-5.html

Changはこのアメリカ人とは財務長官(1789-1795) Alexander Hamiltonのことで、 Friedrich Listではないと言っている。このListは産業の貿易保護主義を擁護した最初に体系的に意見を述べた人である。

自由貿易には次のような項目がある。balanced trade(均衡貿易)、fair trade(フェア・トレード)、protectionism(保護貿易主義)、Tobin tax(トービン税)

トービン税(英:Tobin Tax)とはノーベル経済学賞受賞者ジェームズ・トービン(イェール大学経済学部教授)が1972年に提唱した税制度である。投機目的の短期的な取引を抑制するため、国際通貨取引に低率の課税をするというアイデアで1994年のメキシコ通貨危機以降、注目を集めた。市民団体「ATTAC」などの組織がトービン税の税収を発展途上国の債務解消・融資やエイズ、環境問題などに使う可能性を提案している。だがトービン税は、世界各国が同時に導入しなければ効果が出ないという難点もある。非導入国がある場合、投機家の資金が非導入国に大量に流入する恐れがあるからである。

その他

自由貿易に関連するコスト、利益、受益者は学者、政府、利害集団によって、議論されてきている。多くの議論が free trade debateにある。(次はこれを取り上げたい。)

特定の文脈によって、自由貿易と言う用語を利用すると、この自由貿易の議論(Free trade debate)のどれかかそれ以上の項目に該当することになる。しかしながら、基本的には政府だけが貿易を規制できる。政府は法的な独占権を持っており、物理的な力を使って、地理的な地域の貿易に影響を与えている。

この自由貿易と言う言葉はきわめて政治的になってきており、いわゆる「自由貿易協定」が追加的な貿易制限を課していることはまれなことではない。そのような貿易に対する制限はしばしば、国内の政治的な圧力によるもので、力のある企業、環境もしくは労働の利害集団がその利益を保護するためである。

自由貿易協定は関税連合(customs unions)と自由貿易地域(free trade areas)の主要な要素である。この自由協定の仔細と違いについてはここでは述べない。自由貿易の機会はますますの地球温暖化の傾向によって、新たな貿易のルートができ、北極海を通る北西航路とか他の似たような地域で、氷が溶けてきたために可能となってきている。また、環境学者は地域でできた商品が世界の貿易に効果をもたらすと信じているようだ。

以上で、Free Tradeは終わった。引き続きFree Trade Debateに移る。もう少しこの自由貿易を勉強したい。難しい数式にはできるだけ入らないが、日本と中国を意識して、このテーマを扱っていきたい。

 

 

 



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2009年05月28日

Free Trade8

これらの報告書の良いところは単純なモデルを利用していることだが、悪いところは貿易に対して、開放度の指標ばかりで、経済のパーフォーマンスについては退化しているが、この両者の混合したアプローチが一般的である。ある場合にはDeraniyagalaとFineはこれらの開放度を示す指標は実際には政策を指向するというよりかは貿易の量を反映していると述べている。また、反対の因果関係とか数多くの外因性の変数の影響を解きほぐすのが困難だと言っている。

Kicking Away the Ladderの著書の中で、Ha-Joon Changは自由貿易の政策と経済成長の歴史を見直して、現在の工業国の多くは彼らの歴史において、一貫して、貿易に対して、重大な障壁を持っていると言っている。未成熟産業の議論での保護貿易主義はFree Trade3で輸入代替工業化の所で説明したように、1790年代にAlexander Hamiltonによって最初に追求されたが、Adam Smithはこれに警告し、反対した。かれはアメリカ合衆国は農業に焦点を当て、そこに比較優位(comparative advantage)を持つべきだと忠告した。1840年代にFriedrich Listは未成熟産業保護の父と呼ばれているが、ドイツのためにその保護を支持した。Changの研究において、アメリカ合衆国とイギリスが時々、自由貿易政策の本家と考えられているが、元々は積極的な保護貿易主義であった。イギリスがその保護貿易主義を終えたのは技術の優位性を達成した1850年後半になってからで、トウモロコシ法案(Corn Laws)の廃止であった。また、1950年までは製造品の関税は23%もあった。アメリカ合衆国は1950年代までは製造品に対して約40-50%以上の加重平均関税を維持していた。1800年代には高い輸送コスト保護のための当然の保護貿易主義を行っていた。最も継続して自由貿易を実施してきたのはスイスとオランダと程度は多少劣るが、ベルギーであった。Changは輸出志向工業化政策について述べており、四つのアジアの虎(韓国、台湾、シンガポール、香港)は「彼らの過去の歴史を比較すると遥かに複雑で、細かく調整されていると語っている。

反対

自由貿易はしばしば、国内産業に反対されてきた。輸入品の価格が安いため、彼らの利益とマーケット・シェアが減ってしまうからであった。例えば、アメリカ合衆国が輸入する砂糖の関税を下げてしまったら、アメリカの砂糖生産者は低い価格と利益しか享受できない。一方、アメリカの砂糖を消費する消費者は安い価格で砂糖を購入することができる。経済学者が言うには消費者は必然的に生産者が失う以上の利益を得ることができる。何社かの国内の砂糖生産者は多くの利益を失うので、関税の解除に対して反対すれば、非常に多くの数の消費者は僅かばかりの利益しか享受できない。より一般的には生産業者はしばしば、国内の助成金と自国における輸入関税に賛成する。一方で、輸出市場に対しては助成金と関税には反対する。

社会主義者はしばしば、自由貿易に反対するが、資本家による労働者に対する最大の搾取を認めることになるからである。たとえば、カールマルクスが書いた共産党宣言には「資本家階級は。。。たった一つの良心のない自由。。。。自由貿易を提案してきた。一言で言えば、搾取のために。それは宗教的な、そして、政治的な幻想で覆われているが、それは赤裸々な、羞恥心のない、直接的な、野蛮な搾取に取って代わられる。」

「自由貿易」は多くの反グローバリゼーションのグループによって反対されてきた。いわゆる自由貿易協定は一般的に貧しい人たちに対して、経済の自由(economic freedom)を与えない。そして、しばしば、彼らをより貧しくしてしまうという主張に基づいている。「自由貿易」協定は実際上自由貿易であれ、政府主導の貿易であれ、多分、議論の余地がある。これらの反対者たちは取引が物質的に一般の人々に有害だと考えている。この取引が本質的に政府主導の貿易であるならば、自由貿易それ自体に対する直接の議論にはならない。例えば、アメリカから補助金を受けたトウモロコシがメキシコに自由にNAFTAによって輸出されれば、その価格は製造コストより遥かに安いので、ダンピングとなり、メキシコの農家に対して打撃を与えてしまう。勿論、そのような補助金は自由貿易に違反しているので、この議論が自由貿易に実際、逆らっている訳ではない。

自由貿易を支持する幾人かの経済学者が自由貿易のコンセプトと実践に疑念を表明しだした。例えば、プリンストン大学の経済学部の教授であるAlan S. Blinderはかっての連邦準備制度理事会の副議長であり、民主党の大統領候補のアドバイザーでもあるが、多くの経済学者と一緒に以前議論したことがあったが、自由貿易はアメリカとその貿易相手国を豊かにし、短期的には自国内で失業が増えるかもしれないが、全体のアメリカの国民純生産は比較優位の経済法則によって、長期的には上昇する。勝者の利益は敗者の損失を上回る。これは「創造的な資本家の破壊」と呼ばれてきた。

しかしながら、Jagdish Bhagwatiは新しいコミュニケーション技術によって、この10-20年の間に300-400万人のアメリカ人の仕事が脅かされるという。加えて、彼は自由貿易とか比較優位の考えを完全に拒絶している訳ではないが、職を失った労働者のためにより大きな保護貿易、改良された教育システムを主張し、それは貿易が仕事の数を変えたのではなくて、仕事のタイプを変えたのであるからだ。例えば、技術がコールセンターのインド人に安い賃金で、アメリカ人の仕事をさせてきた。こうしたことによって、さらに数千万人のアメリカの労働者は僅かばかりだが、仕事の不安定を経験し始めることになり、こうしたことは今までは製造業の労働者に対するものであった。この議論は「政府はグローバリゼーションの力を勇気づけるのかそれともそれを抑制しようとするのか。」である。ラテンアメリカは下手に実行してしまい、関税を1980年代と1990年代に削減してしまった。貿易保護主義の中国と南東アジアと比較してみるとわかる。Samuelsonによると、失うもの以上に得るものの必要な余剰を仮定することは間違えていると言っている。



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Free Trade7

昨日ブログを読まれている方から、私がいよいよ経済学者になるのかと聞かれたが、とんでもない。このシリーズはグローバリゼーションの一環で、日本をどうグローバルにするかの一構成要素だ。あくまでも、先日話をしたBPOを手段として、日本に中国人の「出島」を作る。そこから、日本人の仕事の仕方を変えていく。「あうん」から「Give and take」の仕事スタイルへ。そしてそれが30%の生産性を向上するきっかけになる。中国に持っていくだけで、仕事の生産性が3割あがる。信じられないかもしれないが、日本人はそれほど仕事の効率が悪いと言うことだ。勿論今はコスト差があるから、中国では日本のコストの半分だ。そういうことで、ここ一連のグローバリゼーションの話をしている。

昨日の続きの自由貿易により市場での財の取引が経済にもたらす利益、すなわち、専門用語で言えば、「厚生水準」の話の続きをしよう。この部分ではきわめて単純化したモデルの話しかしないので、これぐらいまではぜひ理解してほしい。昨日私が図の解説をしているので、以下の文章は理解しやすいと思う。一部、英語の本文の間違いもあったので、指摘しておく。

この図はある架空の商品に輸入関税をかけた場合の影響を分析している。関税をかける前の世界市場の商品の価格は国内市場の価格と同じであるが、PにWorldをつけたものである。国内価格に関税をかけたものをPにTariffをつけてある。価格がより高く設定されたので、国内生産量QはS1からS2へ増加する。国内消費量QはC1からC2へ減少する。

このことは社会の繁栄(専門用語で言えば、社会的余剰)にたいして、3つの影響を与える。消費者は暮らしが悪くなる。と言うのは消費者余剰(緑の部分)が減るからである。生産者は暮らしがよくなる。と言うのは生産者余剰(黄色の部分)が増えるからである。政府もまた税収入(青い部分)を得ることができる。しかしながら、消費者の損失は生産者と政府が得たものより大きい。この社会損失の大きさは2つのピンクの三角形で示している。この部分を専門用語で、「死重損失」もしくは「死加重」と呼んでいる。この関税を取り除いて、自由貿易にすれば、社会が純益を得ることができる。

此の関税分析と殆ど同様であるが、純生産国の見通しでも同様の結果を得る。その国家の見通しでは輸出関税によって、生産業者の暮らしが悪くなり、消費者の暮らしがよくなる。しかしながら、生産者の純損は消費者の利益よりも大きい。此の場合には税収入がない。此の国家は関税を取っていない。

ここの説明は間違っている。関税を取っていないのであれば、輸出税を取って、輸出価格を上げていることになるが、そうすれば、輸入税と同じように、税収入が入ってくる。税収入がないと言うのであれば、輸出関税ではなくて、輸出自主規制だ。そうした方法で、輸出価格を上げるのであれば、政府に税収入は入らない。その価格が上がった部分は税収入ではなくて、生産者が安く仕入れて高く売るので、輸出プレミアムとなる。ちょっとわかりにくいかもしれないが、図の青い部分に相当する。此の図を上下逆転したものがここで言うところの輸出自主規制であり、輸出関税をかけたものが、ここでいうケースの輸出版である。上記の輸入税の部分だけでもきちんと理解していればここのところは良いと思う。

同様の分析で、輸出税、輸入自主規制、輸出自主規制すべては似たような結果を得ることができる。ある時には消費者の暮らしがよくなり、生産者の暮らしが悪くなる。また、逆もある。しかしながら、貿易の制限による賦課は社会の純損を招く。貿易制限における損失の方が貿易制限による利益より大きいからである。自由貿易は勝者と敗者を作るが、理論と経験則から、自由貿易によって勝ち得た量の方が負けた量より多いと言うことが言える。

貿易の迂回( trade diversion

主流派経済学(mainstream economic)の理論のよれば、グローバルな自由貿易は社会に純利益をもたらす。しかしながら、ある国に対しては自由貿易協定を選択的に適用し、他の国には関税をかけることは時として、貿易の不効率を生じ、それを貿易の迂回と呼んでいる。経済的には原価が最も安い生産業者の国によって商品が生産されるのが効率的である。しかし、いつもそうとは限らない。高いコストの生産者と自由貿易協定を結んでしまうと、低いコストの生産者は高い関税を払うことになる。低いコストの生産者を除外した、高いコストの生産者との自由貿易によって、貿易の迂回が起こり、経済的な純損を招くことになる。このことがなぜ多くの経済学者がこれほどにまで、グローバルな関税の削減にたいする交渉に重要性をおいているのかの理由である。例としてはドーハ・ラウンド( Doha Round)がある。

「ラウンド」とは、「多角的貿易交渉」と訳されることが多く、自由貿易主義を基本として、貿易についての世界ルールを各国が一堂に会していろんなことについて話し合い決定していくことをいう。

20 世紀まではGATT(貿易と関税に関する一般協定)を舞台に行われてきた。60年代の「ケネディ・ラウンド」では関税一括引き下げに成功、70年代の 「東京・ラウンド」では非関税障壁撤廃のルールができ、80年代後半から90年代前半の「ウルグアイ・ラウンド」では農業の例外なき関税化、つまり農産物 の輸入受け入れ原則をルール化した。

1995年にWTO(世界貿易機関)ができ、ラウンドの舞台はここにうつった。農業分野のさらなる自由化や、ウルグアイ・ラウンドで扱われたサービス貿易・知的所有権などの分野のルール整備を求めて、2001年ドーハ(カタール)で開催さ れた第4回WTO閣僚会議でドーハ・ラウンドの開始が決定された。

ちなみに正式名称は「ドーハ開発アジェンダ」。貿易を通じて途上国の経済開発をめざそうとすることがこのラウンドの大きな目的の1つになっている。
詳細についてはここがよく解説している。
http://allabout.co.jp/career/politicsabc/closeup/CU20071124A/
上記でいう貿易の迂回とはWTOからFTAへの動きのことであるとも言える。FTAが主体の地域的貿易が盛んになる可能性があるが、こうした危険をはらんでいる。

批判的な見方

自由貿易の利益に関して、理論とか経験調査の文献の中で、Sonali DeraniyagalaとBen Fineはこうした多くの研究には欠陥があると指摘している。自由貿易が経済の発展に与える利益の範囲がわからないと結論している。理論的な議論は大いに、特定の経験による仮説に依存しているが、それが真実であるかどうかわからない。経験値に関する文献では多くの研究がこうした関係が不明瞭だと指摘しているし、一連の経験値の報告書にあるデータとか計量経済学では肯定的な結果を示しているが、それを批判している。

ここで中断する。これから、岐阜に行かなければならない。






swingby_blog at 04:15コメント(0)トラックバック(0) 
プロフィール

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海野 恵一
1948年1月14日生

学歴:東京大学経済学部卒業

スウィングバイ株式会社
代表取締役社長

アクセンチュア株式会社代表取締役(2001-2002)
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海野塾のイベントはFacebookのTeamSwingbyを参照ください。 またスウィングバイは以下のところに引っ越しました。 スウィングバイ株式会社 〒108-0023 東京都港区芝浦4丁目2−22東京ベイビュウ803号 Tel: 080-9558-4352 Fax: 03-3452-6690 E-mail: clyde.unno@swingby.jp Facebook: https://www.facebook.com/clyde.unno 海野塾: https://www.facebook.com TeamSwingby
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