2010年08月

2010年08月31日

チャイナモデル5

ケンブリッジ大学政治学並びに国際研究シニアフェローのHalper氏の続きだ。彼の昨日の数字はちょっと古い様だったので,訂正したが,彼の言っていることは至極真っ当だ。彼の言うことを良く吟味してほしい。中国の政治制度を第三世界に輸出していることは目から鱗だ。

そうしたことを通じて,彼等は世界の資源を手に入れている。かっての帝国主義による侵略は今は出来ない。その代替手段として,こうした一党独裁制度を輸出している。彼はチャイナモデルと言う言葉を使うことを避けているようだが,それがチャイナモデルだ。一党独裁と情報統制の「金の盾」は第三世界にとっては統治の道具としていは民主主義よりも手っ取り早い。なるほど。

では始めよう。


共産党が国家公認の権力の唯一の根源であり、「抑制と均衡(政治の健全な運営をはかるための原理)」「司法の独立」「陛下に忠実な野党」「透明性」のような 考え方が大きく欠落している。多くの外国企業にとって貿易は悪夢だ。;中国と西側のビジネスの実務は非常に異なっていて、個人的は権利の侵害、知的財産の盗用、ー 年間で2,000億ドルのビジネスー そして企業機密の国家で許可されている盗用などはすべて良くあることだ。

The Communist Party remains the sole source of state-sanctioned power, and notions such as “checks and balances”, “an independent judiciary”, “a loyal opposition” and “transparency” are largely absent. Commerce for many foreign companies is a nightmare; Chinese and western business practices are very different, with privacy violations, intellectual property theft—a $200 billion per year business—and the state-sanctioned theft of corporate secrets all too common.

その上、これらのことが中国の社会の問題と断層線を強調しているとしても,中国の市場独裁システムは14億人の膨大な大多数に認められている。さらに、貿易の雇用、住宅、安定性、堅実に,開かれたみんなの広場のために生活の水準を改善することは世界の50億人の大多数に等しく認められている。彼等は他のこと (中国の独裁的な体制)を殆ど知らない。

Yet, if these accent the problems and faultlines in Chinese society, China’s market-authoritarian system is accepted by the vast majority of its 1.4 billion people. Moreover, trading employment, housing, stability and a steadily improving quality of life for an open public square is equally acceptable to a majority of the world’s 5 billion people, who have known little else.

この政府はその商業関係を拡張し、政治的な関係がついて来ていて,中国は今や,アフリカや,中央アジア、ラテンアメリカの多くの国々での最大の投資家である。中国の現地での指導して来た支配による一つの効果はその市場独裁主義的な事例が200年以上にわたって,西側の発展を特徴づけて来た統治の原則を横にどけて来ているということだ。

As the government has expanded its commercial relations, political relations have followed, with China now the largest investor in Africa and many parts of Central Asia and Latin America. One local effect of China’s mentoring embrace is that its market-authoritarian example marginalises the principles of governance that have informed western progress for over 200 years.

人々の関係で言えば,中国の市場独裁主義的な事例を複製することを賞賛し,小さな方法でさえも、それを求めてきた政府によって統治された人々は,経験して来た民主主義の市民社会の期待を遠ざけ,ー たぶん、なかったことにしてしまうことを意味する。

In people terms, it means that for those ruled by governments that admire and, even in small ways, seek to replicate China’s market-authoritarian example, the prospects of experiencing democratic civil society are remote—perhaps non-existent.

こうして、ポイントは「中国が西側諸国より良い開発モデルを提供している」ことではない。モデルの話はポイントからはずれている。むしろ、中国は国際開発, 経済,コミュニティの景観を静かにつくり直している。ー そして、政治の延長によってー 次第に、NATOブロックを飛び越えて,西側の影響と価値観の投影を制限するやり方で。

事実上、それ(そのやり方)は深く、憂慮すべきプロセスのための最高の触媒である。:中国は西側諸国の考え方を退けようとしている。

Thus the point is not that “China offers a better development model than the West”. Talk of models misses the point. Rather, China is quietly remaking the landscape of international development, economics and community—and by extension politics—in ways that progressively limit the projection of western influence and values beyond the NATO bloc. It is, in effect, catalyst-in-chief for a profound and disturbing process: China is shrinking the idea of the West.

以上で,Halper氏の提議者のオープニング・リマークは終わった。なるほど。彼が意図しているのはチャイナモデルと言う開発モデルではなく,政治思想そ のものだと言うことだ。彼等の政治思想がアフリカ,ラテンアメリカ,アジアを支配しようとしていることを警告している。なかなか説得力がある文章だった。 明日はカリフォルニア大学 グローバル紛争と協調機関 理事のShirk女史だ。






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China model Backup2

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2010年08月30日

チャイナモデル4

今週からいよいよ9月だ。暑い夏もだんだん終わり朝晩は涼しくなってくる。この時こそスポーツも勉学も力を伸ばす時だ。このブログも頑張ろう。この秋こそ,このブログに挑戦してほしい。私も文字通り万難を排して,最優先で頑張っている。是非ついて来てほしい。苦しいのを過ぎれば,なぜか楽しくなる。一ヶ月で,成長したことが実感できる。その代わり、決して楽ではない。

先週、研究会で,このテーマの中身について質問があったが,英語の解釈そのものについての質問がなかった。ついうっかりしたが,わからないところが絶対あるはずで,このブログでも質問して来ない。きっと遠慮しているのだと思う。確かにここでやっていることは格調が高い。しかし、わからないことは遠慮することはない。今回のチャイナモデルの英語も決して易しくはない。気楽に聞いてかまわない。

さて、ケンブリッジ大学政治学並びに国際研究 シニアフェローのHalper氏の続きだ。


数字をちょっと見てみよう:

A quick look at the numbers:

中国は過去30年に渡って,平均11%成長して来た。その基軸通貨準備高は世界最大で,今や、約2兆ドルだ。西側諸国が2007-2009年の景気後退の間 に成長しようともがいている一方で,中国は8%以上成長した。1980年以来、数億人が貧困から抜け出して来た。:中国政府の統計によれば,貧困率(年間所得が7,000ドルの世帯として定義している)は1981年から2005年までの間に50.5%下落した。

China has grown by an average rate of 11% over the past 30 years. Its hard currency reserves are the largest in the world, now approximately $2 trillion. While the West struggled for growth during the 2007-09 recession, China grew by more than 8%. Since 1980 hundreds of millions have been lifted out of poverty: according to Chinese government statistics, the poverty rate (defined as households earning $7,000 per year) dropped by 50.5% between 1981 and 2005.

中国の貧困人口は以下の記事を参照。

2009 年4月9日、世界銀行が8日発表したレポートによると、中国政府による最新の貧困基準と投資計画はいずれも国際基準に達していないと伝えられた。05年のデータを基に計算すると、中国の貧困人口は2億5400万人。中国政府は08年末に、貧困人口の判定基準を「1人当たりの年収が785元(約1万1500 円)未満」と定めた。為替レートに基づくと一日0.31ドル。

http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=30333

世界銀行が2007年4月に発表した「2007年版世界開発指標」によれば、2004年の調査を通じて、発展途上国において1日1ドル以下で生活している貧困層の人口が、前回調査の2002年から8100万人減って約9億8600万人になったことが確認された。このうち中国は約5000万人減の1億2800万人であった。http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080423/154016/?P=1

このディベートで言う7,000ドルの根拠がよくわからない。多分一桁間違えたのだろう。ただ、700ドルだとあまりにも貧しいが、世界の貧困規準からすると,まだ高い。上記の記事では2007年で,絶対貧困が785元で9,812円で、1,500万人。定収入が 1067元で,13,337円で,2,841万人。

この数字だと,中国の定義による貧困層は4,320万人しかいないことになるが,これは中国国家統計局の2007年のデータで, 世界銀行の統計では上記に書いてあるように,2億5400万人。実体はよくわからないようだ。仮に貧困基準線を1.300元にすると8,000万人と言うことだが,それでも1,300元は一日あたり45円にしかならない。仮に貧困基準一ドルにすると,上記に書いてあるように,1億2,800万人だが,2億5,400万人と言うデータもある。注

乳児死亡率は1990年から2005年までの間にほぼ40%下落した。;この期間の電話の保有率は94倍以上増加し,57.1%となった。可処分所得と貯蓄の比率を示した貯蓄性向はアメリカのちょうど2%と比較すると,年に約18%まで、増大して来た。

ここでの英文では消費性向と言っているが%からすると貯蓄性向の間違いだと思う。ただ、下記のグラフが示すように,現在の中国の貯蓄性向は30%に近いので,どこからこの数字を持って来ているのかよくわからない。18%だと2000年頃の数字だ。日本はかってとは異なり,貯蓄性向は下図のように3%程度だ。

さらに消費性向の中国の動向も示しておいた。農村部と都市部とでは大分異なるが所得額によって,消費性向が変動していることがよくわかる。注

Infant mortality fell nearly 40% between 1990 and 2005; telephone access in this period increased more than 94-fold, to 57.1%. Disposable incomes and consumption rates have grown by about 18% a year, compared with just 2% in America.


http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090428/149784/?P=3

図2 所得水準と反比例する消費性向(2008年)

(注)都市部と農村部の各階級はいずれも家計所得順による5階級分類(上位、中上位、中位、中下位、下位、それぞれ都市部または農村部の家計数の20%を占める)。 (出所)『中国統計摘要』2009より作成

http://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/ssqs/090629ssqs.htm

その上,中国ではマイホームの波が押し寄せて来ている。2007年までに中国の都市の住宅の80%は個人で所有された。

Moreover, there has been a surge of home ownership in China. By 2007, 80% of urban homes in China were owned by individuals.

目立って達成したものがある。ー ましてや中国を統治することは公園の散歩とは訳が違う。幾つかの領域に改善が見られて来たとはいえ,中国固有の収賄、環境劣化、労働争議、沿岸と内陸部の省間のとんでもない不平等、毛沢東主義の衰退による自己認識の危機、増大する階級格差,ドンキホーテ的な愛国主義が日々の生活のすべてだ。

These are remarkable achievements—yet ruling China is no walk in the park. Although there has been improvement in some areas, endemic corruption, environmental degradation, labour disputes, dramatic inequities between the coastal and interior provinces, an identity crisis with the decline of Maoism, rising class differences and a quixotic nationalism are all part of everyday life.

今日はここまで。貧困規準の話が出て来たが,中国はいつも良く実体がわからない。都市部と農村部の所得格差も尋常ではない。貴州省と上海とでは12倍の格差があり,ピンとこないかもしれないが、貴州省の所得が3%上がっても、上海では0.3%でどうでも良いと言う数字になってしまうと言うことだ。この感覚は日本人には実感できない。国が違うと言った方が正しい。よく香港のことを一国2制度と言うが,この国はこうした様々な国家が混在していると考えるべきだ。ではまた明日。

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2010年08月29日

チャイナモデル3

昨日はグローバルリーダーシップ研究会があった。テーマは米中の気象変動で,会議は盛り上がった。何と,全部読んで来ている人もいた。15分しか早めに行けなかったので,早く来た参加者は暑い部屋で待ってもらうことになったのと,会社のインターネットが落ちていて,いつもSkypeで参加している布施さんを15分待たせることになってしまった。

議論の内容には事欠くことはなかったのと,今回の参加者は積極的に質問したので,研究会の内容としては良かったように思う。反省点は開催の15分前ではなく,遅くとも30分前には会社についている必要がある。部屋の冷房が効いて来ないのと,出す飲料が冷えない。それと今回のように設定がうまく出来ないこともある。結局,インターネットは繋がったが,プロジェクターから映すことが出来なかった。参加者に迷惑をかけてしまった。でもこの会は夢があって楽しい。来月が楽しみだ。参加者が夢を持って参加するからだ。


やっぱり、中国は不思議な国だ。一党独裁でありながら、資本主義だ。株式も国有企業が上場しているが,企業と上場を監督する立場はどこかで癒着しているはずだ。インサイダーと言うコンセプトのない国だ。談合もないだろう。だから、表と裏がある。それが奇妙にバランスしている。しかも、中央政府と地方政府は日本の関係とは全く違う。すんなりとした上下関係ではない。中央政府の指示が思うように地方政府を動かさないし,地方政府はさらに傘下の市とか企業との収賄 がらみのしがらみとその長い歴史がある。

そのように見ると脆いガラスの国家のようだが,こうしたことが昔から延々と続いている。中国の国家そのものの範囲が何千年も今のままだし,漢民族と言っているが南と北とでは異民族だ。その大部分が,歴史的に引きずってきている。今の共産主義体制とは言っても,皇帝の体制の一部は共通している。主義思想が違うだけかもしれない。そうであれば、この不安定に見える国家は意外と安定しているのかもしれない。そうした制度が合っていると言う意味で。

そうみてくると今の我々の資本主義とは違った制度が今後も続くと見ることが正しいのかもしれない。韓国が北朝鮮との統一を良く語るが,日本もそう見ている が,中国は北朝鮮は中国の一部と見ているかもしれない。意外と我々のもっている観念は我々だけのもので,中国には当てはまらないのかもしれない。そうした目線で,今回は見てほしい。

さて、今日のHalper氏はケンブリッジ大学政治学並びに国際研究シニアフェローだ。

Stefan Halper
提議者のオープニング・リマーク
The proposer's opening remarks
Aug 4th 2010 | Stefan Halper  

The Economistは挑戦的な提議を提出しているが、
これは不適当な内容だ。:中国の「モデル」が良いか悪いかではなく,それが違っている。その上,それはそれ自体「モデル」ではない。私の本の中で、「北京コンセンサス」は過去30年以上にわたる複雑な一連の開発と改革であり,彼等の成功は中国の文化,人口統計学,地理学、統治哲学の独自の属性によるものである。

The Economist poses a challenging motion, but it is miscast: the Chinese “model” is not better or worse, it is different. Moreover, it is not a “model” per se. In my book, “The Beijing Consensus”, I described it as a complex set of developments and reforms over the past 30 years that owe their success to the unique qualities of China’s culture, demography, geography and governing philosophies.

この意味で,ラテンアメリカやサブサハラン(サハラ砂漠の南)のアフリカのようなところに複製したり,輸出したりすることが出来ると言える「モデル」はない。

In this sense, there is no “model” to speak of that can be replicated or exported to places like Latin America or Sub-Saharan Africa.

このことは世界中の発展途上国ー そしてその他の諸国ー が中国の事例を綿密に従わないとか,特定のプログラムを複製しようとしないとかを提案しているのではない。イランから,ミャンマー、ベネズエラまでの国家が問題を解決するために中国の革新を盗んで来た。;たとえば、中国のインターネット監視のプロトコルは今ではイランで使われている。

This is not to suggest that developing countries—and others—around the world have not followed China’s example closely and attempted to replicate specific programmes. Nations from Iran to Myanmar to Venezuela have poached Chinese innovations to solve problems; parts of China’s internet-monitoring protocols, for example, are now found in Iran.

しかしながら、我々が見出している中国の本当の挑戦は膨大な30年の変革の基本を越えている。それはより単純なものを、より多くの人に訴えるものを、そして本当に,西欧の優越したものに対して痛烈に批判したものを輸出する。

It is beyond the nuts and bolts of its colossal 30-year transformation, however, that we find China’s true challenge. It exports something simpler, more appealing to many and indeed more corrosive to western pre-eminence.

これは市場独裁主義の基本的な考えだ。中国の事例の如何なる他の視点を越えて,そして、中国が世界に売っているもの以外のすべてを越えて,これは世界最大の屋外広告板として、「資本主義者になり、独裁的な体制には留まる」ために機能する。

This is the basic idea of market authoritarianism. Beyond any other aspect of China’s example, and beyond everything else that China sells to the world, it functions as the world’s largest billboard advertisement for “going capitalist and staying autocratic”.

重要なことは「開発モデル」をどうするかと言うことよりかは統治するものと統治されるものとの間の最適な関係について「思想の戦い」に勝つことである。「北京コンセンサス」の詳細については中国は価値と規準を促進していて,西側諸国の統治の基礎に挑戦し、「西側諸国を越えた世界」の中の統治するエリートに対して、大いに引きつけようとしている。

Its significance has less to do with “development models” and more to do with winning the “battle of ideas” about the optimum relationship between the rulers and the ruled. As detailed in “The Beijing Consensus”, China promotes values and norms that challenge the foundation of western governance and that hold great attraction for governing elites in the “world beyond the West”.

それは論争を巻き起こす議会とか挑戦するメディアの無い政治制度による指導者達の機関を約束し,そして、人々の雇用、住居、より良い将来を約束する。それが 証明するのは環境、労働条件、社会サービスの改善をー しばらくの間ー 脇に於いておいて,「猛烈な早さの成長」を提供するためである。極めて重要なことだが開かれたみんなの広場、自由討論の権利、信仰、団体は約束されない。 大衆は権力を尊敬するように求められ,政治活動と関わりを持たない。

It promises regime leaders authority without contentious legislatures or challenging media, and it promises the people employment, housing and a better future. It demonstrates that improving the environment, labour conditions and social services can be set aside—for a while—to accommodate “breakneck growth”. Crucially, it does not promise an open public square or the rights of free speech, belief, or association. The public is invited to respect the authorities and stay out of politics.

依然として,中国の達成したものはかなり大きい。中国は「第三世界」の国家であり,世界権力の頂点に上り詰めて来ていて、そして、驚くに値しないが,同じようなことをしようとして来ている諸国の羨望の的である。

第三世界 Third World:アジア、アフリカ、ラテンアメリカなどの発展途上国の総称。

Still, China’s achievements are significant. It is a “third world” nation that has risen to the pinnacle of world power and is, unsurprisingly, the envy of others seeking to do the same.

彼は「「北京コンセンサス」は過去30年以上にわたる複雑な一連の開発と改革であり」と言っているが,私は30年ではなく、3,000年ではないかと思っている。Helper氏はチャイナモデルは開発モデルではない。といっていて、これは「主義」だと言っている。それを第三世界に広めようとしていると言っている。中国が世界の覇権をとろうとそれを視野に入れて来た。あとはアメリカを抜くだけだ。そうした視点から,中国が次の狙いは西部大開発で,文化だと明言した。世界の覇権は文化だと言うことだ。それは「主義」であり、単に独裁政権とか共産主義の普及ではなく,人材の教育だと考えている節がある。

それはまぎれもなく,シルクロードの再来であり,長安の再来を意識している。万博の中国館の135mの北宋のまき絵がそれを意図しているのではないか。中国の意図は日本が開発して来た技術の普及でもなければ,アメリカの言う民主主義の普及でもない。中国の長い歴史から編み出された新たな思想を持った成功モデルの普及であり,実証されたモデルである。そこにいま、第三世界の国家が関心を示して来ている。11月に行われるメキシコのCOP16は環境問題を討議するだけでなく,中国が彼等をリードしているかどうかを示す試金石でもある。そう考えてみると、中国はすごい国だ。今日はこれまで。

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2010年08月28日

チャイナモデル2

昨日まで風水の先生が台湾から来ていたが,前回の先生とは違う人が来た。愚妻が呼んでいるので,私にはよくわからないが,建物の方位だけでなく,姓名判断と運勢みたいなこともするようだ。昔から,こういうのは当たるも八卦、当たらぬも八卦と言われているが,判断の仕方が,ダイナミックで良い。

ともすれば日常の世界に没頭してしまいがちであるが,彼等は天地の壮大な次元で,物事を判断しようとしているのは事実だ。なるほどと言うところもあるし,そ うではないところもある。要は自分自身の軸を整理する上では非常に良い。時間軸、地域的な損得の運勢も見るので,面白い。勿論それが正しいとかどうかでは なく,そうした見方が,あると言うことは新鮮だ。

一個人の人間の常識の範囲を遥かに越えている。人間の歴史の過去の経験値の集積かもしれない。中国人はこ ういうことを好むようだが,きっと、自分自身を第三者としてみるための道具かもしれない。宇宙から今の現状を見るので,日々の経営しているレベルからするととんでもない視点でものを見るので,新鮮だ。変化をしようとしている人間にとっては良いのかもしれない。多少朝晩おまじないを唱えたりしなければならないが、それぐらいは愛嬌だ。

チャイナモデルはこれとは違った視点での議論だが,こうした文化面での違いも欧米人とはあるようだ。欧米にもこうした占いはあるようだが,中国程、普及はしていないようだ。

ところで、今日は1時15分からグローバルリーダーシップ研究会がある。今日のテーマは米中の気象変動だ。このディベートでは中国が意外にも勝った。司会者はくどいくらいに,アメリカを擁護していたが,中国が勝った。その背景を議論したい。ちょうど昨日からチャイナモデルを始めているので,そのサワリも含めて議論したい。日々の喧噪を離れて,君も今日から世界のリーダーになったつもりで,頑張ろう。

さて、今日のMiles氏はThe Economistの中国特派員である。

James Miles
司会者のオープニング・リマーク
The moderator's opening remarks
Aug 4th 2010 | James Miles  

多くの観察者達は2008年の金融危機の発生以来,中国人の役人の得意な気持ちがーこれ見よがしの態度さえー増大して来ていること見て来ている。中国の経済は輸出部門に対する打撃にもかかわらず,力強く進み続けて来ている。数百万人の出稼ぎ労働者がこの早い時期に失業したが,現在、工場は十分な労働者を見つけることが出来ないし,賃金も上がり始めている。

Many observers have noted an uptick in the pride—swagger even—of Chinese officials since the eruption of the global financial crisis in 2008. China's economy, despite a blow to its export sector, has kept powering on. Millions of migrant workers lost their jobs in the early months, but now factories cannot find enough of them and wages are beginning to rise.

中国は民主的な議論に制約されることなく,単に,銀行に蛇口を開くように命令し,現金が即座に流れ込んだ。かっては西側諸国はだれも一つの政党しかない国を 賞賛し、夢見る人はいなかった。(おそらく、おまけに、共産主義で)民間企業に対して相反する感情を抱き,反対意見に対して,徹底的な軽蔑をもって。

いまや「チャイナモデル」とか「北京コンセンサス」の話は流行になってきている。

Unrestrained by the need for democratic debate, China simply ordered its banks to turn on the spigots and the cash instantly flowed. Once few in the West would dream of praising a one-party state (a purportedly communist one at that), with an ambivalent attitude towards private enterprise and an utter contempt for dissent. Now talk of a "China model", or a "Beijing consensus", has become all the rage.

面白いことに,2004年に北京コンセンサスと言う言葉を広めたのは中国人ではなく、アメリカ人のJoshua Cooper Ramoだった。Ramo氏はタイム紙のもと外国の編集委員だが,彼が書いているのは、中国は「世界がかってみてきた世界最大の均整のとれていない超大国」を建設する過程であり,歴史の中で如何なる国家よりも戦力の投入に於いて、従来の手段に殆ど頼っていない国家であり,そのかわり,その例として電力発電所とその規模に於ける虚勢のインパクトでリードしている。」

Interestingly, it was not a Chinese but an American, Joshua Cooper Ramo, who popularised the term Beijing consensus in 2004. China, wrote Mr Ramo, a former foreign editor of Time magazine, was in the process of building "the greatest asymmetric superpower the world has ever seen, a nation that relies less on traditional tools of power projection than any in history and leads instead by the electric power of its example and the bluff impact of size".

彼は続けて,中国は「世界中の他の諸国の道筋を作って来て、彼らの国々を単にどのように開発するか考えだそうとしているばかりでなく,国際秩序にどのように適応するのかを試みて来ている。彼らを真に自立させようとするやり方で。」彼が言うには、中国のアプローチは柔軟性があるので、主義として分類することができない。しかし、それはワシントン・コンセンサスと対照をなしていて,「(アメリカの)歴史の傲慢の終わり」である。

He went on to say that China was "marking a path for other nations around the world who are trying to figure out not simply how to develop their countries, but also how to fit into the international order in a way that allows them to be truly independent". China's approach, he said, was so flexible that it could barely classify as a doctrine. But it stood in contrast to the Washington consensus and its "end of history arrogance".

「歴史の傲慢の終わり」"end of history arrogance":多分、この下記の本のことを言っている。アメリカ覇権主義の終焉を言っている。日本語はまだない。The End of Arrogance: America in the Global Competition of Ideas

面白いことに,中国の知識人自身はアメリカの様なもののやり方に対して代替策を公表することに於いて控えめであった。中国の指導者たちはグローバルな重心 (アメリカ合衆国)の代替の中心として彼らの国家を長い間,描くのに,気乗りしてこなかった。そうすることは卓越した超大国(アメリカ合衆国)と衝突してかれらを引きずりこむことを恐れてきた。

What was interesting was that Chinese intellectuals themselves had been so reticent about proclaiming an alternative to the American way of doing things. Chinese leaders have long been reluctant to portray their country as an alternative centre of global gravity, fearing that to do so might drag them into conflict with the pre-eminent superpower.

しかし、今,変化の気配がある。中国の経済力は西側の不調の中で,より大きく自分の意見主張するよう積極的に認め始めてきた。

But there are hints of change now. China's economic power, amid the West's malaise, has begun to encourage a greater assertiveness.

中国は世界秩序の形成に於いて,金融領域から,グローバルな安全保障の領域までその声を聞かせ始めている。数多くの書物と論文が中国に現れて来ていて、「チャイナモデル」の考えを公表したり,議論したりしている。Remo氏の刺激的な随筆はなお一層適切になって来ている。

China is beginning to make its voice heard in the shaping of the world order, from the financial realm to that of global security. A slew of books and articles have appeared recently in China proclaiming, or arguing about, the notion of a "China model". Mr Ramo's provocative essay has become all the more apposite.

この言葉がどれほど明確でないかということであれば、ー 「チャイナモデル」とか「北京コンセンサス」の合意された定義がない。ー 私は次のように参加者にこのディベートを考えてもらいたい。:発展途上のやり方の中で,中国は民主的で、自由市場を擁護する先進国が間違っていると言うことを正当化しようとしているのか?

Given how ill-defined the terms are—there are no agreed definitions of "China model" or "Beijing consensus"—I would urge participants to think of the debate this way: is China, in the way it is developing, getting something right that democratic, free-market-espousing developed countries are getting wrong?

もしそうだとするならば、この意味は先進国が経済や政治について考えているやり方と発展途上の世界をどのように導こうとしているのかを変えるべきであると言うことを意味しているのか?例えば,中国の専制システムがグローバルな経済の大暴落に対して素早く,断固として,中国が応えられるように助けているとすれば,我々は民主主義を制約することにメリットがあると見るべきなのか?

If so, does this mean that developed countries should change the way they think about economics and politics, and how they attempt to guide the developing world? If, for example, China's autocratic system helped it respond quickly and decisively to the global economic meltdown, should we see merit in restraining democracy?

より大きな問題として幾人の人たちが見ている気象変動が温室効果ガス排出量を削減するために迅速で,広範囲な努力を必要とするのであれば,我々は中国の独裁体制に対する嗜好を許すべきなのか? もしくは「チャイナモデル」の話は中国のシステムの弱みを隠し,そのシステムは何年か先により明らかになり,グローバルの意見を別の方向に引き戻して行くことになるのだろうか?

中国に関連した問題はしばしばこのウェブサイトの読者の間で,過熱したディベートを引き起こしている。私は活発な議論を期待する。

If what some see as an even bigger problem, climate change, requires rapid and far-reaching efforts to reduce greenhouse gas emissions, should we forgive China's fondness for diktat? Or does talk of a "China model" mask weaknesses in China's system that will become more apparent in the years ahead and shift global opinion back in the other direction? China-related issues often provoke heated debate among readers of this website. I look forward to a lively discussion.

以上で今日のMiles氏の意見は終了した。前回の気象変動では中国の迅速な対応がアメリカののろのろとした法案に勝った。そうした意味で、この迅速に行動する中国の体制が良いのか悪いのかをここで議論しようとしている。中国は歴史的に民主主義にはいそしんで来ていない。孫文の三民主義があったが,それもつかの間の話でし かない。

中国はその歴史に於いて,地方政府間との誰がこの国を支配するかの戦争の歴史だ。確かに彼の言うように,今の中国は前回の気象変動に於けるようにそのアクションには目を見張るものがある。しかしそこには様々な課題と問題が潜在しているのも事実だ。それをこれから見て行こう。Miles氏の話も軽くはなかった。でもこうして,中国の問題を掘り下げることは我々にとって需要なことだ。

さて、明日はケンブリッジ大学政治学並びに国際研究 シニアフェローのHalper氏だ。





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2010年08月27日

チャイナモデル

一週間は早いもので,今朝は6時から経営会議だ。このブログはいつもより,1時間早く終了しなければならない。今日からのテーマも面白い。

今日からのディベートは昨日までの米中の気象変動でなぜ中国が勝ったのかを議論する上では重要だ。最近北京で,アフリカの代表を集めて会議を行ったが,そ の狙いは資源であるが,資源そのものを中国はストレートに要求しない。このチャイナモデルの優秀さを宣伝し,彼等をこのモデルに心酔させることにある。なぜアフリカが彼等に心酔するのかを今日から見て行こうと思う。

民主主義を否定した,一党独裁主義がなぜアフリカに諸国に受けて,我々に危機感をもたらし,前回の気象変動でもなぜ中国が勝ってしまったのかその背景とな るイデオロギーを今回は追求したい。結論から言えば,中国が優れているという欧米人の意見は30%であったが,30%もあったという見方もできる。我々もこうした意見とその背景を見てみよう。今日はまずそのディベートの背景説明から入ろう。では始めよう。

チャイナモデル
中国は西側諸国より開発モデルが優れている。

China model
This house believes China offers a better development model than the West.

このディベートについて

About this debate

グローバルな金融危機は西側経済の重大な弱点を露呈した。それと対照的に,中国はそのテンポの速い成長に於いて,ほんの短いスローダウンに苦しんだ後に、 怒濤のように2桁の発展に戻って行った。中国にいる多くの人たちは他の国々,特に開発途上の世界にいる国々が「チャイナモデル」から何かを学ぶべきかどうかを尋ね始めて来ている。

The global financial crisis exposed critical weaknesses in western economies. China, by contrast, suffered only a brief slowdown in its fast-paced growth before surging back into double-digit expansion. Many in China have begun to ask whether other countries, especially in the developing world, should learn something from the "China model".

このモデルの主要な要素が何であるのかについて意見の相違がある。しかし、管理された為替レート、銀行システムを含めた主要産業に対する国家統制、民主的な議論よりも独裁的な命令への嗜好、インフラに対する規模の大きな国家投資,輸出部門に対する強力な支援が様々な人によって,言われて来ている。

There is disagreement over what the key ingredients of this model might be, but a managed exchange rate, state control over key industries including the banking system, preference for diktat rather than democratic debate, heavy state investment in infrastructure and strong support for the export sector are variously mentioned.

時々、「北京コンセンサス」と呼ばれていて,自由市場と私的企業を強調したワシントン・コンセンサスの反対として,この中国モデルがもう一つの可能な要素を持っている。:他の諸国が従うべき考えか、それとも彼等が望むようなものでない考えか。このディベートでの考え方として,如何なる経済的なイデオロギーのいい加減な採用は誰にとっても良いことではないということだ。チャイナモデルは本質的には国家がそれ自身のためにベストであると思っているやり方で,開発してい るに過ぎないことを意味している。

Sometimes called the "Beijing consensus", as opposed to the Washington consensus with its emphasis on free markets and private enterprise, the China model has another possible component: a belief that other countries should follow it or not as they please. The uncritical adoption of any economic ideology, this notion holds, is no good for anyone. The China model could essentially mean no more than developing in a way that a country thinks best for itself.

ワシントン・コンセンサス (Washington Consensus) :ワシントンDC所在のシンクタンク国際経済研究所 (IIE) の研究員で国際経済学者のジョン・ウィリアムソンが1989年に発表した論文の中で定式化した経済用語である。

この用語は元来、1980年代を通じて先進諸国の金融機関と国際通貨基金 (IMF)、世界銀行を動揺させた途上国累積債務問題との取り組みにおいて、「最大公約数」(ウィリアムソン)と呼べる以下の10項目の政策を抽出し、 列記したものであった。

  1. 財政赤字の是正
  2. 補助金カットなど財政支出の変更
  3. 税制改革
  4. 金利の自由化
  5. 競争力ある為替レート
  6. 貿易の自由化
  7. 直接投資の受け入れ促進
  8. 国営企業の民営化
  9. 規制緩和
  10. 所有権法の確立
ja.wikipedia.org/wiki/ワシントン・コンセンサス

北京コンセンサス:
国家が経済に強く関与し、成長を促す開発独裁的な体制のこと
http://toyoshow138.blog93.fc2.com/blog-entry-261.html

このようにして,中国は西側諸国によって下層民と考えられていたアフリカの政府を助け,彼等の統治のやり方の変更を要求しない。しかし、チャイナモデルはあるのか?他の諸国がそこから学ぶようなものがあるのか?西側諸国はそれ自身から学ぶ価値があると言うインチキを放棄するべきか?

Thus China helps African governments considered pariahs by the West, with no requirement that they change the way they govern. But is there a China model, and is there anything others should learn from it? Should the West abandon any pretence to have one worth learning from itself?

Background reading


中国のアフリカとの付き合いは2006年11月の中国とアフリカとの48カ国首脳会議 元首・首相41人出席の記事を見てほしい。

中国・アフリカ協力フォーラム首脳会議が
2006年11月4日午前、北京の人民大会堂で開幕した。中国とアフリカ48カ国の首脳らが一堂に会し、「友好、平和、協力、発展」をテーマに、中国とアフリカの「新型の戦略パートナーシップ」の強化、発展を討議する。

とあり、仔細はhttp://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-11-05/2006110507_01_0.html

2009年11月にも同様の会議を行っていて,この時も50ヶ国が参加している。http://sankei.jp.msn.com/world/mideast/091108/mds0911081832003-n1.htm

日本はどうかと言うとやっている。アフリカ開発会議(TICADIV=日本主催)で、今まで4回行って来ている。詳細はhttp://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-05-28/2008052802_04_0.html

アメリカもインドもこのアフリカの着目しているようだが,この中国が群を抜いて支持を受けているのが実体のようだ。その背景にはこの強力なチャイナモデルがある。では明日からこのチャイナモデルが如何に強力かをそのサワリだけ今日は紹介しよう。

オープニング・ステートメント
Opening statements

Stefan Halper
提議の擁護
Defending the motion
Stefan Halper  
ケンブリッジ大学政治学並びに国際研究 シニアフェロー
Senior Fellow, Politics and International Studies, University of Cambridge
The Economistは挑戦すべき提議を提出しているが,これは不適当な内容だ。:中国の「モデル」が良いか悪いかではなく,それが違っている。その上,それはそれ自体「モデル」ではない。

The Economist poses a challenging motion, but it is miscast: the Chinese “model” is not better or worse, it is different. Moreover, it is not a “model” per se.

Susan Shirk
提議に反対
Against the motion
Susan Shirk  
カリフォルニア大学 グローバル紛争と協調機関 理事
Director, Institute on Global Conflict and Cooperation, University of California
アメリカ人やヨーロッパ人は彼等の将来について悲観的であり,彼等は彼等自身の金融システムが引き起こしたグローバルの危機から回復している。

Americans and Europeans are pessimistic about their future as they recover from the global crash their own financial systems set off.


さあ、明日からはオープニング・リマークで、The Economistの中国特派員のMiles氏だ。今日はこれで終わり。ではまたあした。


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プロフィール

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プロフィール

海野 恵一
1948年1月14日生

学歴:東京大学経済学部卒業

スウィングバイ株式会社
代表取締役社長

アクセンチュア株式会社代表取締役(2001-2002)
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海野塾のイベントはFacebookのTeamSwingbyを参照ください。 またスウィングバイは以下のところに引っ越しました。 スウィングバイ株式会社 〒108-0023 東京都港区芝浦4丁目2−22東京ベイビュウ803号 Tel: 080-9558-4352 Fax: 03-3452-6690 E-mail: clyde.unno@swingby.jp Facebook: https://www.facebook.com/clyde.unno 海野塾: https://www.facebook.com TeamSwingby
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