2009年02月23日

「上海万博」

「投資は30億ドル(約2700億円)、来場者は延べ7000万人を目標とし、開催地の総面積は400ヘクタールと2005年愛知万博の3倍近くになる。参加する国・組織の数は、2009年1月現在で183ヶ国を含む229の国・組織となっており、150年の万博史上でも最大の規模になる。上海万博の経済効果は日本円で3〜4兆円程度といわれている。これは北京五輪の約15兆円(野村総研)よりは低いが、当然ながら上海周辺に限れば北京五輪を上回る。アメリカは出展のために2009年4月までに8400万ドル(約75億円)を調達しないといけないのだが、それが集まらないと最悪出展中止になる可能性がある。」(ALL ABOUT 2009年 01月 28日)

「万博が開催される 2010 年は、投資の効果に消費・観光収入の効果が加わり、GDPは+0.47%ポイント 押し上げられる見込みだ。総投資は300 億元の新規投資に対して、第一次間接効果として 1.5 倍の約 452.3 億元の生産誘発効果が現われる。雇用者所得の増加による消費支出増の効果も考慮した第二次間接効果まで含めた総合生産誘発額は、2.7 倍の806.2 億元まで膨れ上がる。」(第一生命経済研究所 経済調査部 2004年7月29日)

「世界的な景気後退による資金繰りの悪化が原因で、新天地で建設していた超高級ホテル「ジュメイラホテル」の建設を中断した。ホテルは27階建て、部屋数は338室で、1泊約400米ドル(約3万6,000円)とされていたが、今回の中断で開業の見通しは全く立っていない。ヒルトングループの最高級ブランド「コンラッドホテル」もこのほど、開業時期を2010年以降に延期することを明らかにした。」(NNA.ASIA 2009年2月12日)

「歴史的に見ても、不景気だった1929年に世界恐慌が起こり、世界中に大きな影響を与えたが、1932年に開かれたシカゴ万博は大成功している。景気後退は、日本では1965年、韓国は1983年、東南アジア諸国は1997年に経験しており、1年後には経済も回復している。1970年の大阪万博をきっかけに、カジュアルウェアが流行り、ファストフードの店も普及した。2010年の上海万博も、新たな消費の潮流を生む可能性が大きい。」(EXITE ニュース 2008年12月26日)

開催日は2010年の5月からだから、あと丁度1年だ.アメリカの出展とかホテルの進出が危ぶまれているようだが、中国の面子があるから、こうした事は何とかするだろう.今の時期は確かに経済が沈滞しているからすべての投資に世界の国々が消極的だが、この上海万博は中国の国威に関わるイベントだから、そうした側面での失敗は考えられない.

一方で、北京オリンピック同様に上海万博の影響が中国全体に広がる事も考えられない.逆に上海が更なる飛躍をするいいタイミングでもあり、上海の不動産が再びバブル事が想定される.いつも貧富の差で比較される貴州省とのギャップがますます広がるに違いない.三農問題があらためて、問題になりそうだ.

ただ、上海の場合には上海市と言うよりかは上海を中心に江蘇省、浙江省地帯を総称した長江デルタ地帯である華東が今回の経済の影響範囲と見た方が良い.西は南京、南は杭州までの範囲で、大きく、経済が雇用関係も含めてこの万博を契機に変化して行くと考えていいのではないだろうか.

以前の調査で、昨年時点で、購買力平価で計算すると中国では5000万人が日本と同等かそれ以上の生活レベルの人がいると言ったが、この上海万博を契機に上海の高所得層が飛躍的に増加しそうだ.日本の人口以上の高所得者が増えると言うよりかは、所得の格差がより開くと言うのが現実的だ.

中央政府の意図している産業の高度化がこの上海万博によって、加速する.今回の恐慌による企業の倒産は中途半端な数ではない.低付加価値労働の産業は今回を契機に都市部では衰退して行く.今後、都市部ではこうした産業は再生しない.上海ならびにその近郊ではそうした産業構造が大きく変化して行くだろう.今までは農村部の中卒の農民を工場に採用していたが、今回の恐慌が終わり、上海万博が終了する頃にはそうした労働環境に変化が起こるに違いない.新たなハイテク産業の勃興だ。

今年の大学の卒業生は600万人で、以前から200万人が就職出来ないと言われていたが、この景気がさらにその就職率を下げるに違いない.今まではこうした大卒が吸収出来る労働マーケットが追いつかなかったのが現状だが、今後はこうした高いレベルの労働人口の需要が飛躍的にこの上海万博を契機に上海を中心に増加して行く.

それとは逆に、この景気刺激策である11兆元が消費されるのは農民工の雇用が目的だ.そうなると2010年末にはこうした2億3千万人の低付加価値労働者が再び失業することになる.毎年、新規の労働者が1000万人増加する国だ.そのためには8%の経済成長率を確保しなければならない.

2010年を契機にしてこうした未熟練労働者は行き場がなくなって行く.かって、1990年代に国有企業の一時帰休者(解雇者)が5000万人を超えた時があった.かつての社会主義体制を「大鍋飯(ダァグォファン)」(大鍋で作った食事)と呼んで、一律平等であった時代が終了し、資本主義社会が始まった.

そのため、終身雇用社会が崩壊し、都市の文化が大きく変化した.このときに愛国教育を行って、国民の不満を反日に煽った時代があった.こうした反日デモは2005年に終了した.2010年の終わりからは都市労働者の問題ではなく、三農問題における農民工の問題だ.昨年、不況により解雇された農民工は向こう2年間の公共工事で仕事が補償されるが、そのあとの景気のが戻った時には以前の職場には復帰出来ない.そうした低付加価値産業が都市部では復活しないからだ.

大学卒業生の就職率は向上するが、農民工の就業率は低下する.そのためには景気刺激策の対象である鉄道、高速道路の建設から別の労働需要を起こさなければならない.昨年は不動産バブルが完全に崩壊してしまった年だが、昨年暮れからの不動産購買を促進させようと言う政府の動きが向こう2年間で、不動産市況を変化させて行く可能性は十分にある.それによる建設ブームは期待出来る.

ただ、株価と不動産はここ数年ジェットコースターのような動きをしているので、その投機的な経済活動を中央政府は抑制するであろう.上海万博は中国にとって、このイベント自体の景気に与える影響より、このイベントを契機に中国政府があらたな経済政策へと転換して行くためのチャンスと見た方が良い。三農問題を先送りした、華東の先進国入りがこの上海万博の成果かも知れない.

明日は「官僚の絶大な権力による法令の朝令暮改」だ。このテーマは幾度か扱って来たので、明日は整理しよう.

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海野 恵一
1948年1月14日生

学歴:東京大学経済学部卒業

スウィングバイ株式会社
代表取締役社長

アクセンチュア株式会社代表取締役(2001-2002)
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海野塾のイベントはFacebookのTeamSwingbyを参照ください。 またスウィングバイは以下のところに引っ越しました。 スウィングバイ株式会社 〒108-0023 東京都港区芝浦4丁目2−22東京ベイビュウ803号 Tel: 080-9558-4352 Fax: 03-3452-6690 E-mail: clyde.unno@swingby.jp Facebook: https://www.facebook.com/clyde.unno 海野塾: https://www.facebook.com TeamSwingby
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