2009年03月08日

中国は8%の成長を今年は達成できるのだろうか。

このテーマを扱うにあたっては中国サイドの記事から検討してみよう。結構強気で言っているが果たしてそうであろうか。そうした視点から今週は検討してみたい。まずはChina Dailyから見てみよう。この記事は日本語にはないかもしれない。

2009年1月22日のChina Dailyによると中国のGDPの第4四半期は6.8%の成長率であった。2008年は9%の成長で、この数字は2003年以来であり、過去30年の平均値である9.8%を下回ることになった。世界が減速する中で中国は世界経済の主要な牽引車であり、2008年の世界経済成長の20%以上を貢献している。

http://www.chinadaily.com.cn/china/2009-01/22/content_7420728.htm

2009年は8%の成長は達成可能だと言っている。いくつかの先進国は中国の成長を羨望しているが、北京はこの不況から熱気を感じている。常識的ではあるが、中国が8%以上の成長率を維持することにより、国の労働力に十分な仕事を提供することができる。中国は巨大なチャレンジに直面している。国際的な金融危機は深刻化しかつ拡大しているが、中国の経済にマイナスの影響を与え続けていることを中国国家統計局の馬建堂局長は認めている。しかしながら、彼は2009年とそれ以降の中国の経済に自信を持っている。

中国が中央政府の政策を実行し、国内消費を押し上げ、仕事を創出し、投資を増加させている限り、中国は8%以上の成長率を維持することは確実だと馬局長は記者会見後に報道記者たちに語っている。

中央財経大学のGuo Tianyong教授は馬局長の楽観主義に同調している。「我々は8%の成長を達成するうえで、なんら問題はない。」彼は中国日報に対して、現在巨大な国の投資が進行中であると語った。

中国政府は4兆元の景気刺激策を公表しており、ほかの政策とあわせて、消費と投資を押し上げる。国務院は今、水曜日に8500億元を向こう3年間にわたって、ヘルスケアに投資することを決定した。

回復の兆しがある。馬局長は彼の自信の根拠が十分にあると言っている。「12月にいくつかの前向きな展開をしてきている。」彼は工業生産高、商業銀行の貸出高、通貨供給量を示して、説明した。

工業生産高は11月の5.4%に引き続いて、12月は5.7%伸びている。「小さいが、大きな変化だ。」と馬局長は指摘した。中央財経大学のGuo教授はそれはいい傾向だと同意した。

政府が経済を押し上げると期待している民間消費も回復した。インフレーションを除いた小売の売上高は12月の昨年同期比で、17.4%増加し、前月よりも、0.8%増加している。

銀行の貸出高ならびに通貨供給量は経済学者が12月の予想した以上に跳ね上がった。国の融資は先月とてつもない金額であるが、7400億元のローンを承認し、過去11ヶ月の中で、最大の増加であり、前月よりかは55%も跳ね上がった。

通貨供給量は昨年の12月同期よりも17.8%増加し、一年前より、3%アップし、過去6ヶ月に渡る減少を反転させた。馬局長によれば「適度な金融緩和政策が効果を表してきたといえる。」
こうした積極的な展開は長期の傾向がまだ見えないものではあるけれども、まさしく、夜明け前の朝日の光のようである。」とこのトップの統計学者は言っている。

Guo教授は馬局長のこの言葉を受けて、経済は今、底であるが、この停滞状態から出るためにはあと1,2四半期必要かもしれない。「下方への圧力はいまだ強い。」

インフレ対デフレ
また、経済にとって良いニュースはインフレが12月に和らいだことだ。この経済の停滞の時期に選択できる道具である、金利を下げる余裕が中央銀行にできたことである。インフレのバロメーターである消費者物価指数(CPI)は11月に2.4%あがった後、12月に昨年同期比で、1.2%あがった。 

2008年の2月に8.7%のピークから、着実に8ヶ月をかけて減少してきた長い道のりであった。おかげで、食料と日用品は値段が下がった。年間を通したCPIの増加は5.9%であった。しかしながら、悪いニュースになるが、このインフレはあまりにも早く収まったので、全域にわたる持続的な価格の落ち込みとデフレの懸念が出てきた。

Producer Price Index (PPIはインフレ率(物価上昇率)の判断に用いられ、日本の「卸売物価指数」に近い統計である。 日本の卸売物価は輸送費や流通マージンを含んだものになっているのに対して、PPIは生産者の出荷時点での価格を対象としたものになっている。)はインフレのもうひとつの指標であるが、一年前より、この12月で1.1%下落している。この6年間で伸び率がマイナスになった最初の月だ。これは工場を出荷する価格を測定した基準であるが、昨年の8月に10.1%をピークに落下した。2008年は6.9%であった。

食料と日用品の価格が継続的に落ち込み、今後、価格は広範囲にわたって、もっと下落することが予想され、また、市場における総需要も減退する。先週、中国?河?券股份有限公司の報告書によると、2008年から2009年において、CPIは1.1%下落し、PPIは3.5%下落すると予想している。

専門筋によると、デフレを避けるために、中央銀行は2008年の9月以来、5度の利下げに加えて、さらに利下げするかもしれない。「中央銀行は春節後に0.27%から0.54%の範囲で、利下げをする可能性がある。」とGuo教授は言っている。春節はもっとも大事な祝日で、今年は1月26日だ。

ベンチマークとして年間の預金金利は2.25%で、貸出金利は5.31%だ。

以上が今年の1月22日の中国日報の記事だが、2009年3月6日の日経ネットの記事でも以下のように上記と同じ発言がある。

中国人民銀総裁「金融緩和を継続」 一段の利下げ視野

 【北京=高橋哲史】中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は6日、北京で開催中の全国人民代表大会(全人代)に合わせて記者会見し、金融政策について「金融危機の先行きを正確に予測しにくい中、政策を出すのが遅れれば(経済の先行きへの)自信が失われ、制御できなくなる」と述べた。一段の利下げも視野に、緩和的な金融政策を続ける考えを強調した。

 中国経済の現状では「いくつかの経済指標は回復の兆しを示しており、政策が効果を発揮し始めたことを表している」と指摘。人民元相場に関しては「合理的で均衡のとれた水準での安定を保持する」と語り、現在の1ドル=6.83元前後を維持する考えを示した。

 1月の銀行融資の増加額が1兆6200億元(約23兆円)で前年同月比で倍増したことは「我々の予想を上回った」と分析。ただ、金融緩和が効きすぎてバブルの芽をはぐくみかねないとの懸念には「将来、政策を微調整する余地は残っている」と言明し、当面は金融危機対応を最優先する姿勢を明確にした。

また、IB Yimesの2009年3月5日に記事では温家宝の発言が載っている。

 中国温家宝首相は5日、世界的な経済危機にもかかわらず、今後輸出を増大し、雇用を創出していくことを誓約し「我々は予期しない困難・挑戦に直面している。しかし、8%の経済成長率は達成可能であろう」と述べた。

今後世界的景気後退に対処するため歳出を大幅に増大させると述べた。しかし中国政府が昨年11月に明らかにした4兆元(約57兆円)規模の景気刺激策については、具体的な政策を一切提示しなかった。

 民間エコノミストらは、今年度中国経済成長率は5.6%程度となると予測している。景気刺激策は、輸出依存型経済から脱却する事を目指した政策である。中国の輸出高は1月に17.5%の減少を示した。今後は輸出依存から脱却し、内需を拡大させようとしている。中国の景気回復は欧米諸国が景気回復を遂げるまではなされないだろうという懸念も広まっている。

 温家宝首相は、中国は今後国内産業の基盤を整え、納税システムの能率を改善させ、より効率的に経済活動が行える環境を整備していくと誓った。また輸出額も増大させていく予定であるという。また人民元の為替レートについては「基本的に固定相場制のままとする」とし、「輸出業者は人民元の切り下げを望むだろうが、切り下げの動きを取れば、米中・およびその他外交関係が悪化するおそれがある」と述べた。

 

ちょっと長い引用で恐縮だが、サーチナの2008年12月22日の記事を以下引用したい。

レッド・センセーション on サーチナ 第24回−田代尚機

 このところ、中国経済の成長率(実質GDP)について弱気な見通しを発表する機関が増えている。11月24日の発表によれば、国際通貨基金(IMF)による2009年の成長率予想は8.5%。この時点でそれまでの予想を0.8%ポイント引き下げているのだが、マスコミの報道によれば、今後その予想を5−6%程度に引き下げる可能性があるそうだ。

 また、イギリスのある銀行(ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド)では、2009年の成長率予想をそれまでの8%から5%へと引き下げたそうである。現在行われている総合的な経済対策の効果が出てくるのは2009年下期以降。世界同時不況により輸出は低迷、住宅投資は悪化を続け、消費は鈍化傾向を強める。こうした弱気な見通しを前提にするならば、これくらいの下方修正は必要だろう。

 9月以降、中国政府は金融緩和に転じている。しかし、11月の厳しい貿易、工業生産、物価、金融などの統計を見る限り、もはや金融政策の効果が発揮できるような局面ではないかもしれない。

 資金を一番必要とするのは、経営の悪化により資金繰りの厳しい中堅企業であるが、銀行は、いくら金融が緩和されようとも、こうした企業には貸出を増やしたくはない。いわゆる貸し渋りが起こってしまう。

 一方、健全な企業でも、足元の業績が不振で、将来の見通しに悲観的であるならば、短期でも、長期でも、資金など借りたりしない。むしろ、借入を返済したいぐらいである。

 不況対策としてもっとも期待されるのはやはり財政政策である。11月9日の内需拡大策発表以来、中央政府、地方政府は競うようにして積極財政を進めている。国際的な比較感から言えば、財政出動の規模においても、その迅速性においても、中国はもっとも優れていると言えるであろう。

 しかし、重要なことは、その財政政策がどの程度有効なのかという点である。中国政府は経済を十分コントロールするだけの力を持つかどうかを見極めることができれば、2009年の成長率が本当に5%程度になる可能性があるかどうか、ある程度はっきりするはずだ。

 中国は共産党一党独裁体制国家であり、国務院を中核とした強力な中央集権体制下にある。国務院での決定は、即、下部組織へと伝達され、実行される仕組みとなっている。政策決定やその実行に要するタイムラグは非常に短い。

 ここ数年の好景気によって財政は非常に健全である。2007年の国債発行額はGDPの3%程度に過ぎない。その上、中央政府は、依然として、上場商業銀行を含め、金融機関の中核を実質的に所有している。人事権を振りかざすことなく、ある程度貸出をコントロールすることができる。

 経済の仕組みとして、政府はある程度需要を作り出すことができる上に、資金面での制約も小さい。少なくとも他の先進国と比べれば、経済をコントロールする力は格段に強い。唯一心配なのは、重複投資、不要不急の投資など、無駄な投資がなされてしまう可能性があることぐらいである。

 中国は、そうした副作用を受け入れても、経済成長率を高く保とうとするはずである。他国と比べ、雇用問題が非常に深刻であるからだ。

 特に、不振を極める輸出産業の支援は喫緊の課題である。輸出産業は労働集約型産業であり、過剰労働力の吸収先として、非常に重要な役割を担っているからだ。中国にとって輸出産業は、“アメリカにおける自動車産業”である。輸出産業の不振は、経済の問題ではなく、社会の安定の問題である。

 労働集約的である建設業やサービス業、農業などで過剰労働力を吸収しなければならない。そのために、インフラ投資、都市化の進展、消費拡大、農業支援などを図らなければならない。

 5%成長では過剰労働力を吸収しきれない。社会の安定のためには是非とも8%近い成長が必要である。中国指導部の視線は絶えず国内問題に向いている。人民元安誘導、特定産業の保護など、国際的に許されるぎりぎりの線までアグレッシブな政策を採用してでも、政府は8%近い成長を目指すはずである。

 中国にとって、2009年は厳しい年となろうが、ターニングポイントとなると年でもあろう。少し内向きではあろうが、内需主導の経済へと転換が進む。2009年、新しい中国が始まる予感がする。

この記事はよく中国の今年の経済の動きをまとめていると思う。次に、メルボルン ビジネススクールのMark Crosby準教授の
記事を引用したい。
http://economics.com.au/?p=2282

最新のIMFの予測はすべての国と地域について下方修正している。アメリカとヨーロッパはGDPのに関しては戦後最悪だと予測しており、新興国においては5.1%から3.3%にその成長予測を変えてきている。その他の先進経済国となるオーストラリアの予測はない。以下省略するがオーストラリアは今年はマイナス成長は否めないと言っている。

昨年10月のIMFの中国に対するGDPの予測は8%だったが、昨日(2009年1月28日)の予測では6.7%に訂正された。昨年10月の中国における世界貿易の落ち込みによるインパクトはすでに痛感している。それゆえに、成長は潜在力以下に予測された。

しかしながら、株と不動産の価格の継続的な下降はこの国の経済をより悪化させてきている。特に重要な建設部門において顕著である。中国では毎年、大体オーストラリアの人口(約2000万人)ぐらいの人たちが田舎から都会へ移住してくる。これらの国内移住者は家を必要とし、また建設事業が中国の経済成長にとって、きわめて重要な駆動力である。

不動産価格の低下と都会の輸出部門の仕事が減ってきている影響で、多分、国内移住が停滞し、併せて、建設事業がとまってしまうことになる。

私は中国の中長期的な経済の可能性に対してはいまだに極めて楽観的だ。しかしながら、私はIMFが予測した以上に今年は悪いのではないかと危惧する。政府の景気刺激策はGDPの成長に向けて実行に移されるだろうが、輸出と建設部門が極めて弱いなかで、6.7%の成長率を達成することはチャレンジだ。だからオーストラリアも今年はだめだと言っている。

次に、米国のヘリテージ財団(Heritage Foundation/小さな政府、企業の自由、個人の自由を掲げる保守&ネオリベ系シンクタンク/http://www.heritage.org/)の記事を見てみよう。

January 22, 2009
The Truth About China's Growth
Derek Scissors, Ph.D.
http://www.heritage.org/Research/AsiaandthePacific/wm2238.cfm






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海野 恵一
1948年1月14日生

学歴:東京大学経済学部卒業

スウィングバイ株式会社
代表取締役社長

アクセンチュア株式会社代表取締役(2001-2002)
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海野塾のイベントはFacebookのTeamSwingbyを参照ください。 またスウィングバイは以下のところに引っ越しました。 スウィングバイ株式会社 〒108-0023 東京都港区芝浦4丁目2−22東京ベイビュウ803号 Tel: 080-9558-4352 Fax: 03-3452-6690 E-mail: clyde.unno@swingby.jp Facebook: https://www.facebook.com/clyde.unno 海野塾: https://www.facebook.com TeamSwingby
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