2009年07月30日

不正資金浄化7

元新日鉄ソリューションズの徳田さんが会社に来てくれた。中野に住んでいた頃からの付き合いだ。昼は森ビルの渡邊五郎さんと会食。いつもながら、心臓を手術したとは思えない。どこからこの元気が出てくるのだろう。お書きになった資料をいただいたが、大したものだ。最近暑いので、私は少し夏バテだ。さて、今日はだいぶ時間が払暁前からというか、夜中と言うか、時間が取れたので、たくさん書ける。内容は殆どの日本人の知らないことだ。

不正資金浄化との戦い
KYC

KYC:(Know Your Customer) はこれまでの犯罪収益移転防止法に基づく本人確認から発展した新しい本人確認業務である。取引先については、マネーロンダリングの実態把握に必要なカスタマー・デューデリジェンス(CDD)、エンハンスド・デューデリジェンス(EDD)などの 情報管理を実施しなければならない。またマネーロンダリングの評価に必要な要因情勢の変化にも柔軟に対応し、正確かつ網羅的な顧客情報を管理した業務フ ローが必要である。日本でもNTTデータ ジェトロニクスが以下のような専門サービスを行っている。
  • CDD/EDD調査支援
  • 各種調査機関、情報データとの連携
  • 金融機関の定めるKYC手続に応じた内部統制機能の搭載
  • フィルタリング、トランザクションモニタリングシステムとの連携
不正資金浄化の最初の防衛は上記KYCに対する金融仲介機関への要件である。この「顧客を知る」ために、金融仲介機関はしばしば、通常取引でない、もしくは嫌疑ある行為を識別できるし、それには嘘の身元、通常でない取引、変わった行動もしくはその他の資金浄化の兆候がある。しかしながら、こうした機関には数百万人の顧客と顧客に接する数千人の従業員がいるので、顧客を知ると言う伝統的な方法に対して情報技術の支援が必要である。Lexis NexisWorldComplianceのような企業がソフトウェアやデータベースを提供し、これらの処理を支援している。銀行や企業の安全対策の取締役もまた、不正資金浄化と戦うために重要な役割を演じている。

情報技術の利用

情報技術はよく訓練された調査員を代替することは決してできないが、資金浄化の技術がだんだん複雑化してきているので、同様に技術もそれに見合ってきている。反資金浄化(AML)プログラムが一般的になる前はアメリカ合衆国では銀行安全対策法は金融機関に1万ドル以上の現金取引に対して、通貨取引報告書(CTRs)を要求していた。これらのCTRsは調査員にとってはかけがえのないものであったが、資金浄化をする人たちはこの報告要件を避けるために彼らの取引を作ることを始めた。結果として、アメリカ合衆国はこうした報告要件を回避するために取引を作ることに対抗する法律を作り、多くの作られた取引は金融機関によって嫌疑ある活動報告書に掲載されることになる。

様々なソフトウェアパッケージが名前の分析、ルールに基づくシステム、統計的かつプロファイリング(犯人の心理を分析しながら事件を解明すること)するエンジン(問題解決のための専用ツール)、ニューラルネットワーク(neural networks 神経回路網:脳神経系をモデルにした情報処理システム)、リンク解析( link analysis 略称:LA「分析・解析」)、ピア・グループ・アナリシス(peer group analysis:同輩集団分析)、時間系列照合(time sequence matching)を行うことができる。また、特定のKPC解決方法があり、事例に基づいた勘定の書類の承認、修正を行うのだが、顧客の自動的なリスク得点分析をして、国家、ビジネス、事業体、製品、取引のリスクを考慮して、知能を利用して分析することができる。反資金浄化(AML)技術の他の領域に知識データベースとe-ラーニングにより、研修と意識付けをおこなうポータルもある。

ポータル:インターネットのユーザーが最初にアクセスするページ。

このソフトウェアは資金浄化を追跡するためだけではなく、クレジットカードとか小切手の一般的な盗難の方がより一般的である。勘定の通常でない取引活動があるとカード発行者からその誤用の可否を確かめる電話が来る。

金融犯罪捜査網 (FinCEN:Financial Crimes Enforcement Network) はアメリカ合衆国財務省が作った組織である。このFinCENは金融機関から嫌疑ある活動報告書を受け取り、それらを分析し、アメリカの警察組織、金融情報機関(FIU 資金洗浄捜査の端緒となる金融情報の受理、分析を行い捜査当局へ提供する組織)、ならびに海外のFIUとデータを共有している。戦略目標の一つにeガバメントを通じた情報共有の改善がある。

eガバメント:コンピュータシステムやインターネットを利用し、処理を電子化した行政機構。

公共工事などの業務発注や、住民票登録などの各種手続き、行政文書の管理などにコンピュータシステムやインターネットを活用することで、効率化とコスト削減、サービスの質の向上をはかる。また、情報システムとネットワークの利用により、情報公開や手続きの簡略化も期待されている。

1999年に策定された「ミレニアム・プロジェクト」の一環として電子政府の実現がうたわれており、具体的目標として、2003年に行政手続きの大半をペーパーレス化することを目指している。実現すれば、役所への手続きが自宅のパソコンから行えるようになったり、行政の持つ様々な情報がインターネットを通じて閲覧できるようになる。

しかし、期待が集まる反面、セキュリティの問題や国民背番号化への懸念などから、課題は多く残っているとの指摘もある。

またこのeガバメントは諸外国の政府組織に研修と助言をこない、彼ら自身の反資金浄化(AML)プログラムの効能を改善できるよう支援している。

9.11並びに地下経済に対する国際的な反応

2001年9月11日以降は資金浄化はアメリカ合衆国のテロに対する戦争の主要な関心事となってきている。ホワイトハウスにとってはだんだん重要性が少なくなってきていると言う批判はあるにしても。

ルクセンブルグに本拠のあるClearstream Internationalは中央証券供託所であり、証券決済機関であり、ここは「銀行の銀行」として、数百の銀行の金融の決済と、貸し借り業務の集中処理を行っている。

Clearstream クリアストリーム:国際証券決済機関で、欧州市場における株式や債券の受渡し・決済を集中管理等をおこなっている。欧州最大の証券決済機関(クリアリング・ハウス)である。

欧州の通貨統合によって、欧州証券市場の統合が進み、内外の投資家は欧州を一つのマーケットとして捉えるようになり、そんな環境下、1999年にルクセンブルグのセデルとドイツ・ベルゼ・クリアリングが合併して設立された。

ここでは未公開の口座システム経由で、地下経済の主要なオペレータを摘発してきた。バーレーン国際銀行はOsama bin Ladenの所有だが、こうした送金施設を利用して、利益を上げてきている。スキャンダルがクリアストリームのCEOであったAndré Lussiを2001年12月31日に辞任に追いやった。いくつかの司法の調査が行われ、ヨーロッパ委員会に対して、ヨーロッパ議会(MEPs)のメンバーであるHarlem Désir, Glyn Ford, Francis Wurtzが質問し、彼らはこの委員会への告発を調査するように依頼し、1990年6月10日の指令(91/308 CE)は財界の管理のためであるが、ルクセンブルグを含めて、効率的に、すべてのメンバー各国に適用されるべきであることを確かめるよう求めた。

地下経済に対する国際的な反応は「FATF」、また、フランスでは「GAFI」になるが、この組織によって、調整されてきており、資金浄化に対する多くの国際的な反応に基づいて、最初に40の勧告をまとめた。更に8つの勧告がテロリスト組織への資金を妨害するために考えられ、9.11に対する対応として、2003年6月30日に追加され、更に、2004年10月22日にもう一つが追加され、いまや、資金洗浄・テロ資金対策(AML/CFT)として知られているところのものとなっている。

FATF(Financial Action Task Force on Money Laundering: 金融活動作業部会)は、マネー・ローンダリング対策における国際協調を推進するために、1989年のアルシュ・サミット経済宣言を受けて設立された政府間 会合であり、2001年9月の米国同時多発テロ事件発生以降は、テロ資金供与に関する国際的な対策と協力の推進にも指導的役割を果たしている。FATFへの参加国・地域及び国際機関は、現在、OECD加盟国を中心に、以下の32か国・地域及び2つの国際機関である。

これらの勧告の承諾もしくは少なくともこれらの勧告に対する措置は国際的に活動する銀行もしくは他の金融サービスを行う法人の要件として今は考えられている。

金額

多くの取締機関と政府当局は世界のもしくは自国経済における不正資金浄化の金額の推測を出している。よく言われている数字はIMFが言うように世界中のグローバル経済の2-5%である。しかし、一部の研究者たちはそうした数字は単なる「ベストの推測」だと言っている。1997年に、FATFは不正資金浄化と戦うためにOECDが創設した片腕だが、率直に、「FATFメンバーの広範な大多数がいかなる信頼できる見積もりをサポートする十分なデータがない」ことを認めている。こうした不正資金浄化の本質をもはや容認し続けないとはいえ、世界中で、実際に資金浄化された金額のデータは欠如したままだ。一部の学者たちは政府もしくは多国籍組織で利用されている数字そのものの信頼性と基礎に本当の関心を寄せている。いつも非合法活動に関する真の数字を見つけ出すことは困難だ。

 

 

 

 

 

 



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プロフィール

海野 恵一
1948年1月14日生

学歴:東京大学経済学部卒業

スウィングバイ株式会社
代表取締役社長

アクセンチュア株式会社代表取締役(2001-2002)
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海野塾のイベントはFacebookのTeamSwingbyを参照ください。 またスウィングバイは以下のところに引っ越しました。 スウィングバイ株式会社 〒108-0023 東京都港区芝浦4丁目2−22東京ベイビュウ803号 Tel: 080-9558-4352 Fax: 03-3452-6690 E-mail: clyde.unno@swingby.jp Facebook: https://www.facebook.com/clyde.unno 海野塾: https://www.facebook.com TeamSwingby
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